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『僕と私の殺人日記』 その23
※ホラー系です。
※欝・死などの表現が含まれます。
以上が大丈夫な方だけ閲読ください。
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わたしの身体がユウくんものになる。ユウくんから泣きたくなるような気持ちが伝わっ てくる。虫は平気で殺せるくせに、何を今更悲しんでいるのだろう。さあ、赤ちゃんはユウくんの獲物だよ。
「無理だよお・・・殺せないよお」
「大丈夫! この辺が心臓よ! 落ち着いて刺してみて」
戸惑うユウくんにユイカちゃんが的確なアドバイスをする。ユウくんの手は震えていて、 おぼつかない。そこにユイカちゃんの温かい手が重なり、ナイフをしっかり握らせた。 子供に狩りのやり方を教える母猫のように、ユイカちゃんはやさしく教える。
ユウくんはなぜか抵抗できず、教えられるまま赤ちゃんの胸を刺した。直前で躊躇してしまい、傷が浅い。それが原因で、激しい泣き声と共に赤ちゃんが目を覚ました。やはり、母親を先 に殺しておいて正解だった。
「ダメじゃない! 殺すときは思い切りやらないと!」
中途半端に刺したユウくんにユイカちゃんが怒る。
「だってぇ・・・」とひるむユウくんの 手を、もう一度、固く握らせる。ユイカちゃんはユウくんの手ごと、無理やりナイフを振り下ろした。 途端に、泣き声が止んだ。
「男のくせに根性なしね。ユイカちゃんの方が、よっぽど勇敢だわ」
「まあ、いいじゃないの。ちゃんとユウくんは殺せたんだし」
入れ替わったわたしは、ユウくんにダメ出しする。だけど、ユイカちゃんはユウくんの味方をした。
「ユイカちゃんはユウくんに甘いよ! もっと厳しくしないと!」
そう頬を膨らませるわたしを見て、ユイカちゃんは楽しそうに微笑んだ。 仲良く死んだ親子の家でお風呂を借り、身体をきれいにした。着替えの服はユイカちゃんがすでに用意してくれていた。
家を出て、血で汚れた服を川へ捨てる。だれにも邪魔されず、 人を殺せて気分がいい。わたしたちは張り切って、次の標的を探した。
「ねえ、そのナイフなんだけど・・・」
「これ?」
ユイカちゃんが気になったのか、折り畳んだサバイバルナイフを見つめる。
「もしかして、 うちから持ってきたナイフじゃない?」
わたしは驚いた。あの天井裏のナイフの存在を知っていたのだ。
「えっと・・・」
「いいよ、あげる。おとうさんの形見だけど、そのナイフはリナちゃんに持っていてほしいみたいだから」
「ホント! ありがとう、ユイカちゃん! 大事にするね!」
「うん、お願いね」
わたしの足取りは心とともにが軽やかになった。
続く…