藤田孝典の岡村隆史発言批判は適切だったのか?ーオールナイトニッポンの岡村発言と藤田による岡村批判を考察ー
まず、事の顛末を簡単に振り返っておこう。
4月23日、ラジオ番組オールナイトニッポンで岡村隆史が性風俗に関するある発言をした。
4月26日、反貧困のNPO法人などで活動する藤田孝典は、BLOGOSで岡村の発言を厳しく非難し、発言の撤回とそれ以上の対応を求めた。
この記事が岡村発言の是非を巡る大きな論争を引き起こすこととなり、岡村の番組降板を求める署名運動も始められた。
4月30日、オールナイトニッポンで岡村は自らの発言を不適切であったとして謝罪した。
藤田はその後も岡村の発言の不適切さや反省不足などをBLOGOSやTwitterで発信し、岡村を批判し続けた。
藤田の岡村批判の論点は4月26日のBLOGOS記事に集約される。
岡村隆史「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」異常な発言で撤回すべきではないか
藤田は4月26日のBLOGOSにおいて、FLASHの記事を引用し、岡村の発言を以下のように理解した。
「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」
「女性の貧困化を待ち望み性的搾取を待ちわびる下劣さ」
岡村は新型コロナウイルスの影響で仕事もなくなり、女性が貧困に陥り、性を商品化して売らなければならないことを「コロナが収束したら絶対面白いことある」と表現する。
また岡村は「短期間でお金を稼がないと苦しいですから」と女性の困窮状態を想像し、性の商品化を歓迎する。
そして「集中的にかわいい子がそういうところでパッと働いてパッとやめます」と性を仕方なく売らなければならない女性が短期間で稼いで辞めていくことも嬉しそうに予想する。
つまり、藤田は岡村の期待する女性を以下のように理解した。
新型コロナウイルスの影響で仕事がなくなり貧困に陥った女性
性を商品化して仕方なく売らなければならなくなった女性
短期間で稼いで辞めていく女性
通常の読解力のある読者であれば、FLASHの記事において岡村が本当に期待した女性とはどのような女性であったかは簡単に理解できる。そして藤田は岡村が本当に期待した女性というものを、意図的に見落とした。
では岡村が本当に期待した女性とは、いかなる女性であったのか?それは
普段は店にいないレベルの可愛い女性
である。
岡村にとって、その女性が困窮していようがいまいが、仕方なく風俗で働いていようがいまいが、他に仕事があろうとなかろうと、どうでもいいことなのである。ただただ、「普段は店にいないレベルの可愛い女性」が店に在籍してくれればそれでよいのだ。
このポイントについては藤田自身が太字にして強調しているところでもある。藤田自身が強調しているにもかかわらず、意図的に見落とし、都合のいいように岡村の発言を拡張曲解して岡村を非難した藤田の罪は大きい。
以上の反論でも納得がいかない方が多いかもしれない。
では、岡村が期待した女性について、岡村の発言に沿ってもう少し掘り下げて考えてみよう。
岡村は「普段は店にいないレベルの可愛い女性」の特性について以下の発言をした。
お金を必要としている
3ヶ月ほどの短期間でいなくなる
では、普段は店にいないレベルの可愛い女性が、お金を必要として風俗で働き短期間で稼いでいなくなるという、そのような女性は果たして本当に貧困に陥っていると言えるのだろうか。
ここで、普段は店にいないレベルのハイレベルな可愛い女性が、短期間風俗で働いた場合、どれくらい稼げるのかを概算値で計算してみよう。
風俗において外見的魅力があるということは、その業界で稼ぐための重要な条件である。岡村が期待しているということから、外見的魅力に関しては芸能人レベルといっても過言ではない。そこそこの人気を得られると考えてよいだろう。
風俗業界では5日や7日程度の短期間在籍する出稼ぎ嬢に対しては、1日の報酬額を保証する保証制度を設けている店がほとんどである。ルックスが良ければ少なく見積もっても1日6万円の保証額であろう。当然1日あたり保証金額以上を稼ぐ子はたくさんいるし、繁忙期はそれが当たり前となる。それが5日を2サイクルで月10日働いたとすると、月60万。3ヶ月で180万円である。3ヶ月で180万とは、年収で考えれば720万円レベルである。少なく見積もってこの金額である。
そして彼女たちは納税をしていない。
手取りで年収720万レベルを稼ぐ人は貧困者であろうか。普段は一般的な収入の仕事をしている人が、3ヶ月仕事がなくなったとして、その埋め合わせとして180万円を必要とするのは、どのような人であろうか。
さらに現在の風俗業界では、ただ可愛いというだけで人気を維持することはできない。それに加えて、指名を得るために外見的魅力を維持し、客を上手に色恋管理し、指名したくなる写メ日記を頻繁に掲載し、客と連絡を取り無駄なくスケジュールを埋めていかなければならない。これには大変な自発的努力が必要となり、やむにやまれず従事することでできるものではない。
これらができなければ、最初は客を取れても遅かれ早かれ稼ぎは頭打ちとなる。
岡村の言及する風俗嬢とは、そのような女性を意味しているのである。風俗業界でいえば強者に属する。その稼ぎ力は一般社会と比較しても強者といって過言ではない。
藤田は、そのような風俗嬢を「お金を稼がないと苦しい女性」「性的搾取される女性」とみなした。
これがいかに間違った認識によるものか理解できるだろう。
そして岡村はリスナーに向けて「だから、今、我慢しましょう。我慢して、風俗に行くお金を貯めておき、仕事ない人も切り詰めて切り詰めて、その3カ月のために頑張って、今、歯を食いしばって踏ん張りましょう」と呼びかけた。
一般に風俗を利用するには高額なお金が必要となる。デリヘル でいえば1時間あたりおよそ16000円とホテル代で2万円はかかる。金持ちにとっては2万はどうという金額ではないが、岡村が呼びかけた相手は、札束で顔を引っぱたいて女を買うような男に対してではない。強者としての風俗嬢に会うために「切り詰めて我慢して歯を食いしばって踏ん張って風俗に行く金を貯め」なければ性行為ができない性的弱者としての男である。
性生活に困らない男は、別に金を払って性行為をする必要もないし、性行為をするために爪に火を灯すような生活を強いられることもない。性行為ができる女なんて周りにたくさんいるし、女だってその男との性行為を求めて会いに来る。
岡村の呼び掛けた男とは、それとは真逆の、性的な欲求不満を抱えて頭が性欲に支配されているにもかかわらず、それを真っ当に解消できない、哀れな性的弱者としての男なのである。
オールナイトニッポンは深夜のラジオ番組であり、そこではしばしば猥談が行われることは常識であった。そのような猥談を楽しみにするリスナーも多かった。そしてそのリスナーの中には、上記のような性的弱者が多分にいることは想像に難くない。岡村もそれを念頭に置いての発言であったと思われる。
つまり岡村隆史の発言は、性的弱者としての男たちが強者としての女に会うために頑張ってお金を貯めておきましょう、という性的弱者に対するエールであったのである。
岡村の発言場所と内容とその意図とを正しく理解すれば、それ以外に解釈できる余地は存在しない。
では次に問題にすべきは、風俗業に従事する女性は皆そのような強者ばかりなのであろうか?ということである。
まったくもってそのようなことはない。
本当に生活に困窮してやむにやまれず風俗で働き、性的搾取をされて抜け出せない風俗嬢は存在する。そしてそれは、岡村も藤田も今回一切言及していないところにいる。
そのような風俗嬢とは、コロナ期間中も風俗を休むことができず、コロナが明けても客を取ることのできない風俗嬢、そして面接に落ち風俗嬢にすらなれなかった女性である。
そのような女性たちは法律で認められた風俗店で働けないために、個人売春を行うか、違法な管理売春を行う闇風俗へと堕ちていく。闇風俗はもはや風俗ではない。貧困と搾取、人身売買が横行する完全なる悪だ。
岡村も藤田も、そのような女性には一切言及していない。
藤田は貧困撲滅を標榜して活動をしているならば、そのような組織をこそ撲滅すべきで、そこで働く女性をこそ救済せねばならない。
藤田は、性搾取を望んだわけではない性的弱者である岡村の発言を、「弱者」に寄り添って擁護すべきであった。そして、本当に目を向けなければならない対象はどこかということを、きちんと指摘すべきであった。
それをせずに岡村を叩いたことは、偽善であり欺瞞であるとしか言いようがない。
何の根拠もなしに岡村を誹謗中傷し、しかも本来支援の手を差し伸べるべき対象すら隠蔽してしまったという二重の意味において、藤田の犯した罪は非常に重いと言わざるを得ない。
藤田孝典は即刻発言を撤回して岡村隆史に謝罪をし、社会が本当に目を向けなければならない対象はどこかということを、明らかにすべきである。