【第4輪】 銭湯の絵って、どう描き換えるの? 編集部が絵の企画を体験してみた
みなさん、こんにちは。
稲荷湯3代目(仮)のまもるです。
本日11月26日は「11(いい)26(ふろ)の日」ということで、
各銭湯にて様々な取り組みが行われているようです
「足立区浴場組合【公式】」より引用
「あいち銭湯(愛知県公衆浴場組合 公式」ツイッターより引用
ちなみに稲荷湯では「いいふろの日」を迎えるにあたり、11月14日(日)に銭湯絵の描き換えを行いました!
そこで私たち「湯の輪らぼ」では2回にわたって、入浴するだけではわからない銭湯絵描き変えの裏側をご紹介します。
前半の今回は
①銭湯絵の始まり
②稲荷湯と銭湯絵の歩み
③銭湯絵のコンセプト企画会議
④そして描き換えへ
についてお話しようと思います。
銭湯といえば、富士山の絵。
ああいった「銭湯絵」のルーツは、どこにあるのでしょうか。
銭湯絵の始まりは諸説ありますが、よく聞かれる説としては千代田区猿楽町にあった「キカイ湯」という銭湯にて、店主がお風呂に入りに来る子どもたちに喜んでほしいという思いから1912年に始めた、という説です。
「キカイ湯」は現在廃業してしまいましたが、その跡地には以下の写真のような石碑があります
地元にいる子どもたちを楽しませたい、という店主の思い、とっても素敵ですよね。
神保町にお越しの際には、ぜひお訪ねください。
稲荷湯では2011年から銭湯絵師の田中みずきさんに、銭湯絵を依頼しています。
(ちなみに現在銭湯絵師は田中みずきさん含め日本に、いや世界に3人しかいません、、、!)
2011年の1月ごろに、独立前の田中みずきさんとご縁があり、こちらの絵を稲荷湯に飾ることになりました。
3月11日には東日本大震災が起きました。
その際に浴槽がある壁の面にあるタイルが剥がれ落ちてしまい、今後災害が発生した際にお客様の頭上に落下する危険性があることから全て撤去しました。
そして何もなくなった場所に、偶然知り合っていた田中みずきさんに銭湯絵を依頼した、ということが始まりです。
そこから稲荷湯では1年に1度、銭湯絵の描き換えを行ってきました。
なお2020年は、コロナ禍により行いませんでした。
携帯の機種変更もあり過去の写真を失ってしまいましたが、過去3年間の写真を載せておきます。
【2017年】
【2018年】
【2019年】
2021年10月某日
我々湯の輪らぼ編集部は、日本橋のカレー屋にいました。
描き換える銭湯絵のコンセプトを考えていたのです。
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ユウト:さて、新しい銭湯絵は、どんなコンセプトにしようか。
まもる:難しいね・・・
たなかい:あれって富士山じゃなくてもいいの?
まもる:全然OKだよ。実際、稲荷湯も富士山じゃない銭湯絵の時あったし。
たなかい:へぇ〜。じゃあ、エベレストみたいな外国の山とかでもいいのか。
ユウト:ワンチャン、山ですらなくてもいいんじゃない? Windows XPの丘を描いてみるとか。
たなかい:いや、仕事っぽくて、心が休まらないよ笑
まもる:銭湯って、想像力が働く場だから、XPの丘はヤバイかもね笑
ユウト:想像力?
まもる:うん。それは、銭湯が、半強制的にデジタルデトックスさせられる場所っていうことがかなり関係してると思う。
ユウト:あぁ〜。スマホとかに割いてる脳のメモリが、銭湯絵みたいな他のものに向くってことか。
まもる:そうだね。見る人それぞれが、好きに解釈して、意味付けできる。描く側も、現実世界ではありえない風景のコラボレーションができたりする。こういう柔軟性が絵の良さだよね。
たなかい:じゃあ、いっそのこと、色々な国の景色を取り入れた銭湯にしたらいいんじゃない? コロナ終息後の旅行できる世界を想う、みたいな感じで。
ユウト:マゼランぽくていいね。
まもる:色々な風景を入れると、ちょうど帰省できない今の時期には、心の安らぎって意味でぴったしかもね。
たなかい:結構カオスになりそう笑
まもる:うん笑 もうトゥクトゥクとか、新幹線とかが入り混じって、走ってても面白いかも。
ユウト:じゃあ、一旦、世界の色々な風景ベースで、みずきさんに連絡してみよう。
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【みずきさんからの返信】
お話を聞いたところ、世界旅行記のような雰囲気なのかなと感じました。
なので、フィルムをベースに以下のような案を考えてみました。
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編集部一同:すげえ〜!!!
ユウト:文殊の知恵を越された感あるね。
たなかい:それな。でも、フィルムって少し過去の感じがするかも。
ユウト:俺結構、フィルム好きだな。なんか、この絵のフィルムって波みたいだから、それを乗りこなすサーファーの絵描けないかな。コロナ禍の暗い時代も、心の持ちようで、楽しく波に乗っていく的な意味で。
たなかい:あ〜確かに。
まもる:サーファー良いね。みずきさんに連絡してみる。
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【みずきさんからの返信】
サーファーの案、とても面白いですね。
ただ懸念としてあるのは、ペンキ絵で性別の分かる人物を描くのは、ジェンダー等のご時世的に厳しいところがあります。
また、銭湯絵は、組合曰く、「浴場背景画」が正式名称らしく、あくまでお客様が主人公という認識ともとれます。
なので、人物を描くとなると、それなりの理由や工夫が必要かもしれません。
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たなかい:なるほどね〜。
まもる:慮りが重要な世の中だからね。
ユウト:じゃあ、宇宙人か、糸人間か、動物かの三択だな。
まもる:動物いいね。それでいってみようか。
こうして、絵の企画は幕を閉じ、稲荷湯は、描き換えの日を迎えます。
11月14日。
いよいよ描き換え当日です。
(※撮影のため、一時的にヘルメットを外しております。以下に掲載する写真も同様です。ご了承ください。)
銭湯絵師・田中みずきさんが着々と筆を進めていきます。
今記事を執筆しているユウト・ザ・フロント自身は、絵に関してはド素人ですが、みずきさんのタッチには、職人の心を感じました。
そして、富士山の隣には、オランダ的風景。
このポップなカオスが、不思議な親しみを生む銭湯のイメージそのものにも思えます。
ファンタジー田園を、新幹線が駆け抜けます。
牧歌的風景の中にある、近代的な人工物。
多様な年齢層の方が、ふらっとに交差する銭湯を思わせる描写です。
休憩の際には、子供たちからの質問にもお答えになっていました。
三原色があれば、どんな色でも作れるから、色鉛筆みたいに多くの色を持ち歩いたりはしない。
三原色・・・。習ったはずですが、その記憶は、私の脳みその彼方に飛んでいったみたいです。
義務教育の敗北です。
そして、ついに完成!
ペンギンやパンダが、楽しそうにサーフィンしています。
懐かしさを感じることもできつつ、銭湯絵としてはフレッシュさもある。
不思議な魅力を放つ銭湯絵、ここに爆誕です。
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皆さんもぜひ、新たな銭湯絵を迎えた稲荷湯を訪れてみてはいかがでしょう。
そして・・・
12/11投稿の記事では、銭湯絵師の田中みずきさんに直接インタビュー!
乞うご期待!!!