【深夜のショート・ショート】よるのスポーツ
このショート・ショートは、
トヨタ理のXにて【毎週月~金、深夜0時】に投稿している
深夜のショート・ショート群像劇「今日、きみがいい夢を見られますように。」の一編をまとめた記事です。
##1
付き合って十ヶ月。
「……はぁっ……んっ……」
高校卒業以来、一年ぶり。
「んぅ……っ……」
人生四人目のカノジョ。
「ついたぁー! ごぉーるっ!!」
駅に着くなりはしゃぐ楓に、嗚咽のせいで愚痴の一つも言えない。
なんで俺、深夜三時にランニングしてんの?
##2
翌日、二十三時のバッティングセンター。
「なぁー帰んねぇ?」
眠気MAXの俺に楓は「やだぁ!」と見事に豪速球を空振り。
楓は歴代イチの変わり者だ。
二週間前の夜、「走ろ」って言われてそっから運動三昧。
お陰で俺達の夜はご無沙汰気味だ。
何考えてんだかマジでわかんねぇ。
##3
雨ならやんねーだろ。
と思ったが楓は今日も俺の家でクソ真面目にストレッチ。
「なんでそこまでやんの?」
「ひみつ」
「今日しねぇ?」
さらっと言うと急に背中をぐいっと押された。
「いででッ!」
「萩くん体かた~い」
即刻却下。
結局寝るまでストレッチに付き合わされた。
##4
深夜、突然楓が家に来た。
筋トレ、バスケ。
一ヶ月鍛えられた俺だ。何でも来い。
「やせたの。」
「おう? んで何すんの」
もじもじしながら、楓がぽつりと言う。
「今日、いーよ」
そんで全部分かった。
あざとすぎか。
……その後はって?
まあ、歴代イチサイコーな夜だったよ。
##5
「お腹のぷよぷよ、ヤだったの」
後で聞いた楓の運動ブームのワケ。
けどどこがぷよぷよ?
俺には分からん。
んで、運動はあれからも続けてる。
良い事尽くしだしな。
イロイロ。
「まってぇ~」
汗だくで走る楓に、ニッとドヤ顔。
俺達の熱い夜は、これからだ。
(終)
ここまでお読み頂きありがとうございました。
これまでの作品は、こちらのマガジンにまとめています。
また、最新作は【毎週月~金、深夜0時】X(旧Twitter)にて連載中です。
ぜひ、あわせてお楽しみ下さい。
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