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kadobun_note
老若男女すべての「文学少女」へ捧ぐ
「本はこの世に存在しなければならない」
これは本書の登場人物の一人が発した言葉だ。そしてきっと、いや確実に、この本を手に取った愛書家は、皆自分の言葉であると確信するに違いない。
この物語の舞台は、読長町。名称からして血が騒ぐこの町は、本の町だ。あらゆる書店、大型書店、古書店、専門店が軒を連ねるのみならず、この町には、長い年月、時代を経て蒐集された本が所蔵されている御倉館と呼ばれる家がある。この館には御倉家の一族が代々本を守って……と、ここまで書いてしまったが、事前の説明は不要だ。圧倒的な本の世界を楽しんで興奮したらいい。
しかしながら本好きな登場人物が本と触れ合う温かな物語かと思いきや、主人公は御倉一族唯一の本嫌いである少女、深冬。なんと心憎い設定だろうか。
この物語は、本を愛するすべての文学少女にお勧めしたい。ここで言う「文学少女」は文字通り、文学が好きな女の子、という意味ではない。老若男女すべてが対象となる。男性だっていいじゃないか。いい大人だっていいじゃないか。ドキドキして夢中になって周りが見えなくなるくらい本の世界に没頭する、その時人は皆、「少女」になると私は思う。
現実は思っていた以上にややこしい。困難な出来事も数多く訪れるのだと、大人になって知った。でも本があれば、立ち向かえる時がある。現実という名の物語の中で、懸命に動き、生きるのだ。
本書の中では物語と現実が錯綜し、ページをめくるたびに世界の輪郭を感じた。その圧倒的な世界観に陶酔した。私は今、読み手であり、書き手であり、現実を生きる冒険者以外の何者でもないのだと知る。
さあ、全国の文学少女よ、書を持て。ページをめくるのだ。
本と文学少女は、この世に存在しなければならない。
ルネ=グザヴィエ・プリネ『書棚』
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