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お礼を言いたい人がいるので、キナリ杯に便乗して書いてみることにする。

ずっと前からどこかでお礼をしたいと思っていたことがあった。しかし、もう10年近く使っていて実家みたいになってるツイッターで改まって書くのは気恥ずかしいし、かといって、何もしないのはきっとモヤモヤしっぱなしだよなぁ、と思っていた。

そんな折、前から拝見していた岸田奈美さんが、キナリ杯という企画を立ち上げるのを見て、良い機会だしとこうしてnoteに登録し、書いている。書き終えられたら、せっかくだから応募してみようと思う。締め切りまでに間に合うかな。

自分の事を書くのは苦手だもんで、読みにくいところはご容赦頂きたい。



私が心からお礼を言いたい人。


おそらく日本全国知らぬ人はいないであろう、ウッチャンナンチャンの内村光良さん。

そして同じく知らない人の方が少ない、さまぁ〜ずの三村マサカズさん、大竹一樹さんである。


そして、このお三方を挙げた時点で察しの良い方なら気付くだろうなあと思うけれど、まぁそれはいっか。



今から二年半前に、第一子である息子を出産した(サムネになってる謎の布製の生き物が現在の息子)。台風の夜に病院に駆け込み、NHKの大相撲秋場所の再放送とニコニコ動画でゲーム実況を見ながら八時間陣痛に耐えた。確か、メゾン・ド・魔王の実況見ていた覚えがある。

結果、一粒万倍日と天赦日が重なるハチャメチャ開運日に生まれた息子は、その日病院で生まれた赤ちゃんの中で一番大きかった。

十ヶ月お腹の中で育てた息子と対面してまず思ったのは、かわいいとか、愛おしいとかいう感情ではなく、

「ようやく陣痛から解放されたな……」

だった。

そして、「これから私はこれを生かさなければいけない」という、新たな重いタスクを負った感覚。母親としてというより、業務的な、そんな不思議な感覚だった。

次の日から5日間の間に、助産師さんにより信じられないペースで新入社員研修ならぬ新人母親研修が行われた。ちょ、待って、そんなスピード感でやんの?F-1なの?って言いそうになる程の勢い。おそらく周りの同期達も同じ顔をしていたが、誰も異を唱えることはなかった。どこまでも日本人だった。

産後5日目に全く回復しないまま、へこへこと実家へ里帰りし、そのまま初めての育児が始まった。

私を含めて三人の子供を育てた母は育児の大先輩だ。とても気を使ってくれたし、仕事を休んでずっと一緒に息子を見ていてくれた。

母親は息子が何をしても可愛い可愛いと愛でていたが、私にはまだ可愛いという感覚が湧いてこなかった。頻繁に様子を見にきてくれる旦那も、息子の一挙手一投足キャアキャアしているのが、少し可笑しかったくらい、私は冷静だった。

自分のお腹から出てきたものなのは理解できている。だがそんなことより『こいつを生かさねば私は終わる』という謎の焦燥感に駆られていたように思う。

そんなことを考えていたせいか、母親がいたにも関わらず私はなるべく自分一人で息子の面倒を見ようとしていた。

ミルクと母乳併用しようとしてたのにいつの間にか母乳で育てるんだ!なんて意気込んでしまっていたのもまた悪かった。(俗にいう母乳信者状態)

オムツ替えを失敗してオムツを無駄にしては落ち込み、乳首が切れて授乳できないほど出血すればすればもっと落ち込み、飲みたいのに供給が不安定な乳に不満の息子が泣けば更に落ち込んだ。なんでこんなこともできないんだろう、かわいいと思えないんだろう、他のみんなはできているのに。と思考の悪循環に陥っていた。

今思えば単なる出産ハイと、子供が産まれたら母親ってのは弱音を吐かずなんでもできるようになるんだ、そういうもんだろうという思い込みだったと思う。

自分の中で勝手に作った、『理想の母親』の偶像に背後から緩やかに首を絞められているようだった。



産後一ヶ月ほどした頃の深夜。二時間おきに耳につく泣き声で起こされる。一時間かけて授乳して、ようやく寝付いた息子を見ながら、「あぁ、また二時間しないで起こされるんだ」と思ったら急に、ぽろぽろと涙が出てきた。

なんでこんなダメな親なんだろう、泣かれるのが怖い、可愛く思えない、こんな母親のところに生まれてきて可哀想だ、他の親みたいになんでできないんだろう、自分の赤ちゃんなのにかわいいと思えないのは何でだろう、とひたすらに落ち込んだ。

落ち込んで落ち込んで、このまま溶けて無くなりたいと思った。

泣きながらも、そういえば次のオムツ無いから買わないと、なんてAmazonを開いて、定期便の手配なんかしていたので、今思うとなくなりたいのか何なのか。ちょっと可笑しい。だけど私はその時本当に真剣に、いっそ死にたーーーい!と思いながらオムツ買おうとしてました。


そしてメガネを外してべそかきながらAmazonのページを開いていたせいで、誤タップでプライムビデオのページを開いてしまった。

あ、間違えたとすぐに思ったが、その時にあなたへのオススメ、という欄のいちばん上にのっていたのが、『内村さまぁ〜ず』という番組のサムネイルだった。


知らない人のために説明すると、『内村さまぁ〜ず』こと内さまは、ウッチャンナンチャンの内村光良さん、さまぁ〜ずの三村マサカズさん、大竹一樹さんがメインで、ゲストを司会者として招いて進行するバラエティ番組だ。ネット配信だったせいか、私は番組自体を知ったのがその時だった。

エピソードリストの一話目に映るお三方が、私がテレビで見て知っている姿よりだいぶ若々しくて、なんとなく好奇心が勝りメガネをかけて番組を再生した。


ネタバレになるので一部割愛するが、一話目はつぶやきシローさんがゲストで、麻布十番をぶらぶらしながら三人の仲良し度をアピールする、みたいな内容だった。

オジサン四人がゆるっゆるの空気の中、学生みたいにお互いの好きなところを言い合ったり、一杯のラーメンを回し食いしたり、一つのソフトクリームを分け合ったり。

時折つぶやきシローさんのふわふわした発言に容赦ないツッコミが入りつつ、三人はゲラゲラ笑って、ご飯食べて、タバコ吸って(その頃は三人とも喫煙者だった)、良く言えば非常に伸び伸び、悪く言えばゆるゆる、だらだらと過ごしていた。


それを見て、私は息子が生まれてからはじめて、心の底から力を抜いて笑っていた。

そのまま一時間、寝ている息子の横でぐふぐふ笑いを堪えながら、私はずっと笑っていた。同時に、何を肩肘張ってたんだろう、と馬鹿馬鹿しくもなった。

勿論、ゆるゆるぐだぐだでくだらない、そう見えただけで、お三方はプロのお笑い芸人だから、プロフェッショナルな技術を持ってそう見せていたのだろう。多分。きっと。


でも、身体と思考のありとあらゆる場所にガチガチに力が入って、身動き取れなくなっていた私にとって、『内さま』のゆるーいリズムと笑いのベースが良い感じにピタリとハマってくれた。

そのゆるゆるの笑いが、「まぁ良いじゃん、気楽にやれば」言ってくれているような気がしたのだ。


丁度一話を見終わる頃、またふにふにと泣き出した息子を見ても、怖いとは思わなかった。

そしてついでに、次の日細切れ睡眠を経て起きて息子を見てみたら、

「あれ!?なんか、かわいいぞこの生き物!!」

 と思えるようになっていた。嘘みたいで馬鹿みたいだが、ほんとに。

勿論寝不足で疲れてるのは変わらないし、むしろ内さま見ちゃったからいつもより寝てないんだけど、何だか心の力と、毒か抜けて、身軽になったような感じだった。


助産師さんからいくら「みんなやってるから大丈夫!」とか。

母親から「最初はうまくいくわけないんだから大丈夫!」とか。

旦那から「一緒に頑張るから大丈夫!」とか。


いくら言われても内心「うるせーーー!!!」としか思えず解れなかった緊張を、内さまが笑いで解してくれた。

旦那や母親に素直に頼ることもできるようになったし、母乳足りなきゃミルクでもええやん、生きてりゃええやん。私今日も息子を生かしてるじゃん!偉い!と素直に思えるようになった。


気持ちを切り替えるスイッチは人それぞれだと思うが、あの時の私にピッタリだったのは、オジサン達が心底くだらない事をやってゲラゲラ笑っているのを見て、私も心底くだらないと思いながら笑う事だったのだろう。

本当に、何がきっかけになるのかわからない。



現在、息子は二歳八ヶ月になった。

力を抜いたゆるゆる育児を施された息子は、「息子くんはかわいいじゃなくてかっこいいんだよォ!」と叫び、甘えん坊で、工事車両とアンパンマンを愛し、自分を愛する自己肯定感MAXな男児に成長した。

そして、私のお腹には今第二子が陣取って、我が物顔で私の膀胱や胃を蹴り飛ばしている。順調に頻尿が加速中だ。


きっと二人目育児は、一人目の時とは全然違う大変さがあるのだろうと思う。上の息子を見ないといけないし、新しく生まれるか弱くて油断したらすぐ死ぬ生き物の面倒も見なきゃいけない。

しかしまあ、何とかなるだろ、と楽観的に考えられてはいる。

肩の力を抜いて、ゆるゆるでも、ぐだぐだでも、子供はちゃぁんと育つのだ。私はそれを知っている。

一番しんどくて、投げ出したくて逃げ出したいと思った時に、お笑い芸人のオジサン三人が、私の身体の力を抜いてくれたお陰だ。

多分私は二人目が産まれて、同じように落ち込んでも、またあのゆるゆるなオジサンたちの笑いを求めて、一人こっそりテレビやスマホを弄るのだろうと思う。


内村さん、三村さん、大竹さん、あとそういえば一話目に出てたつぶやきシローさん。

いい歳したおっさん達が本気で馬鹿な事をしてくれていることに、救われている人間がここに居ますよ。

本当にありがとう。

そしてなんだかんだ書き切れた私、とても偉いです。〆切はギリだけど、書くことに意義があると信じるのでこのまま上げます。

これからも少しずつ、note書けるといいなあ。

書こうと思い立った私にも、ありがとう。


おわり。




 








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