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大山口駅列車空襲慰霊碑

子どもの頃、「太平洋戦争中に鳥取県では空襲はなかった」と教わりました。たしかに数百数千の人が犠牲になる空襲はなかったのですが、多くの方が犠牲になった空襲は鳥取県でもあったのです。

JR大山口駅

JR大山口駅は、西伯郡大山町国信にあります。1926年(大正15)9月17日に開設されました。現在の駅舎が完成したのは2020年(令和2)3月8日です。一日の平均乗降者数は400人前後です。
鳥取県内の山陰本線の駅は、その多くが海側(北側)に駅舎がありますが、大山口駅は大山側(南東側)に駅舎があります。

2020年完成のJR大山口駅駅舎
木造駅舎です

ジャンボリー作戦

太平洋戦争末期の1945年(昭和20)2月、アメリカ海軍の空母艦載機による関東地方周辺の日本軍航空基地および航空機工場を標的とした「ジャンボリー作戦」が開始されました。
この空襲は南関東や静岡から始まり、次第に地方へと攻撃が行われるようになりました。
山陰地方へは7月23日から空襲が始まり、鳥取県西部でも7月24日から空襲が始まっています。

1945年7月28日 午前7時15分

1945年7月28日、午前7時15分。鳥取発・出雲今市行きの下り第809号列車は5分遅れで大山口駅に到着しました。
第809号列車は蒸気機関車C5131が牽引し、廻送機関車、客車11両の編成でした。前2両は大きく赤十字章が描かれた病客車で、呉海軍病院三朝分院を転退院する軍・工廠関係者と付添いの衛生兵、日赤救護看護婦が乗り、客車には演習に動員された国民義勇隊、勤労学徒、軍需工場徴用者が乗り、約1200人の超満員でした。
第809号列車が大山口駅に到着したとき、アメリカ海軍艦載機が上空を旋回しているのを駅長が確認し、列車は600m東方の切り割りに待避します。
その後、一度大山口駅に戻って乗客の約400人を降ろしたのですが、再び敵機約40機が上空に現れたため、再度切り割りに戻りました。この直後、一斉に機銃掃射とロケット弾による攻撃を受けたのです。
機銃とロケット弾による攻撃は病客車2両(繰り返しますが、車体には赤十字章が大きく描かれていました)を含む前3両に集中し、死者44名、負傷者31名以上という被害が出ました。
攻撃は30分続きました。
☆あまりに残酷な描写なのでここに転載するのは差し控えましたが、車内は地獄絵図そのものだったという証言があります。詳しく知りたい方はこちらをお読みください。↓
山陰中央新報デジタル 
山陰が「戦場」になった夏 ~大山口・玉湯列車空襲、そして大社基地~  山陰中央新報・Yahoo!ニュース共同取材 | 山陰中央新報デジタル (sanin-chuo.co.jp)

その後、列車は車内の死傷者を除く乗客すべてを付近の森陰に降車待避させ、後ろの5両を現場に留置し、前6両で大山口駅を発車しました。後ろの5両を現場に残したのは、牽引する機関車が空襲の被害で全11台を牽引できなくなったためです。

この惨事のあった同じ7月28日、午前6時から午後4時過ぎまで各所が空襲を受け、山陰海軍航空隊美保飛行場(いまの航空自衛隊美保基地)、米子駅、日本曹達米子工場、大篠津駅、弓ヶ浜駅などが被災しています。
7月25日には、米軍機グラマンが大山町沖で日本の貨物船「永安丸」と「第二伊勢丸」を攻撃し、2隻は沈没しています。

☆米子市内の被害の状況はこちらをご覧ください。 ↓ 
総務省|一般戦災死没者の追悼|米子市における戦災の状況(鳥取県) (soumu.go.jp)
☆Yahoo!Japanも「未来に残す戦争の記憶」として、証言映像を制作しています。 ↓ 
あの日僕らは米軍機を見た~鳥取県西部空襲~ - 空襲の記録 - 未来に残す 戦争の記憶 - Yahoo! JAPAN

大山口列車空襲 慰霊の碑
慰霊碑には犠牲者の名前が刻まれています
慰霊の日 裏側
慰霊の日 由来記
地元の小学校の子どもたちが折った千羽鶴

大山口列車空襲 慰霊の碑

1991年(平成3)の47周年合同慰霊祭を機に「大山口列車空襲被災者の会」が結成され、翌92年には慰霊碑が建立されました。
現在でも、事件当日には慰霊祭が挙行されています。

大山口駅に向かう途中の淀江町中間で見た大山

JR大山口駅の場所

<参考資料>
・大山口列車空襲慰霊の日 由来記
・Wikipedia 大山口駅 - Wikipedia
・Wikipedia 大山口列車空襲 - Wikipedia
・Wikipedia ジャンボリー作戦 - Wikipedia

次回予告 花見潟墓地

琴浦町の海岸にある約2万基の墓石が建ち並ぶ、日本最大級の自然発生の墓地です。今日10月4日(金)の午後10時からNHK総合「ドキュメント72時間」でも、「お盆の鳥取 海辺の墓地で」として放送されます(再放送あり)。

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