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【王道の名盤】 ピエール・ブーレーズ&クリーヴランド管弦楽団 / ストラヴィンスキー:春の祭典

ここのところ、ちょっと変わったことで評判になったCDが続いたので、王道の名盤を。「わけの分からない現代音楽」という評価だった「春の祭典」を、「20世紀音楽の傑作」という評価に爆上げさせた名盤です。

ピエール・ブーレーズについて

ピエール・ブーレーズ(1925.3.26~2016.1.5 ピエール・ブーレーズ - Wikipedia)はフランスの作曲家、指揮者。フランス国立音響音楽研究所IRCAMの初代所長やニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督として活躍した。20世紀音楽の紹介、演奏に努めた。
その理知的な解釈は「分析的」「冷たい」などと評されることが多いが、演奏を聴けばよく分かるが、複雑な現代音楽でもすっきりと分かりやすく演奏する構成力と秘めたパトス(情熱)がみなぎっている(と、私は思っています)。
ブーレーズ指揮の演奏については、以前にこのマガジンで取りあげています。→【三流オケへの客演指揮】ストラヴィンスキー:バレエ音楽「ペトルーシュカ」ほか/ピエール・ブーレーズ&モスクワ音楽院管弦楽団【悪いオーケストラなどない。悪い指揮者がいるだけだ】|Yuniko note

ブーレーズについてのある逸話

1970年にクリーヴランド管弦楽団とともに来日した際、レセプションの会場で薬害で体の不自由な日本のとある音楽評論家に出会った。ブーレーズは旧知の彼に声をかけ、彼が「薬害のせいで体が不自由になった」と答えたところ、「日本の厚生省は何をやってるんですか!」と怒りをあらわにしたという。

演奏について

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
ピエール・ブーレーズ&クリーヴランド管弦楽団
ジャケット表

「春の祭典」は1913年の初演時に音楽史に残る大スキャンダルを巻き起こしました。やがて名声を勝ち得たものの、一般のクラシック音楽ファンにとっては「わけの分からない現代音楽」という評価が長く続きました。
レコード録音もなされていたのですが、演奏至難&録音至難な曲でもあるため演奏者や録音陣にとっても敬遠されがちでした。
ブーレーズ自身は1963年にフランス国立放送管弦楽団と「春の祭典」を録音しており、その明晰な演奏は高い評価を受けたのですが、大きな評判になることはありませんでした。
このクリーヴランド管弦楽団との録音は、その6年後にあたる1969年の録音です。オーケストラは、名指揮者ジョージ・セルが鍛え上げた一糸乱れぬアンサンブルの素晴らしさで知られるクリーヴランド管弦楽団。こちらは、発売がアメリカCBSというメジャーレーベルであることもあったためか、発売されるや大評判となりました。
聴き比べてみると・・・・フランス国立放送管も決して悪いオーケストラではないのですが、やはりアンサンブルという点ではクリーヴランド管の方が格段に優れています。ブーレーズの指揮の持ち味である明晰さと相まって、解像度の高い写真を見るように音楽の隅々までクリアです。そして、音楽全体に熱い情熱もみなぎっています。

私がブーレーズ&クリーヴランド管の「春の祭典」を聴いたのは、カラヤンやマゼールの「春の祭典」を含め、世に「名盤」と謳われている演奏を一わたり聴いた後だったのですが、やはりこの演奏は、発売以来「春の祭典」の最も優れた録音の一つとして君臨しているのも納得の名演です。

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
ピエール・ブーレーズ&クリーヴランド管弦楽団
ジャケット裏

次回予告 佐渡裕&シエナ・ウインド・オーケストラ 長岡公演2023

ちょうど1年前に聴いたコンサート。曲目はレスピーギの「ローマ三部作」。長岡市立劇場が震動しているようなコンサートでした。

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