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【晩夏のゾーッとするクラシック・番外編】これって、いいの?【カラヤン関連ジャケット考】
ある意味、閲覧注意です
予告では【晩夏のゾーッとするクラシック・8】として、ムソルグスキーの「展覧会の絵」を取りあげることにしていましたが、急遽番外編を入れさせていただきます。
この項、残酷な表現や性的な表現は出てこないのですが、ある意味で閲覧注意です。
カラヤン&ベルリン・フィルの「ニューイヤーズ・イヴ・コンサート」
前項のカラヤン&ベルリン・フィルの「悲しきワルツ」で、「ベルリン・フィルは毎年12月31日の夜に、親しみやすいクラシック音楽を演奏するコンサートを行っている」ことを記しました。
このコンサートは日本では「ジルヴェスター・コンサート」と呼ばれ、NHKでも放送されます。番組の表記も「ベルリン・フィルのジルヴェスター・コンサート」です。音楽雑誌の表記も同様です。
ところが・・・・
晩年のカラヤンは自らが指揮する作品を映像として残すことに熱心で、42作品を残しています。ジルヴェスター・コンサートも1983年、1984年、1985年、1988年の4作品を映像化しています。それらは、ポリグラムやイギリスEMI、ベルテルスマンなどの世界各国のレコード会社との激しい争奪戦の末、日本のSonyが商品化権を取得したのですが・・・・
上記のジルヴェスター・コンサートのDVDジャケットを見てください。
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ロッシーニ:「ウィリアム・テル」序曲、スメタナ:交響詩「モルダウ」 ほか
カラヤン&ベルリン・フィル
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J・S・バッハ:ヴァイオリン協奏曲第2番、マニフィカト
カラヤン&ベルリン・フィルほか
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ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲、ラヴェル:ボレロ ほか
カラヤン&ベルリン・フィル
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プロコフィエフ:古典交響曲 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
カラヤン&ベルリン・フィル ほか
これらはいずれもカラヤン&ベルリン・フィルが、通俗曲や小品にも手を抜かず、真摯に演奏に取り組んだ名演が記録されています。
ですが、ディスクの表記はすべて「NEW YEAR'S EVE CONCERT(ニューイヤーズ・イヴ・コンサート)」と表記されています。この表記でいいの?
たしかにこれらの演奏が行われたのは12月31日=ニューイヤーズ・イヴで、「ジルヴェスター・コンサート」では日本にはなじみの薄いコンサート名なので、この表記にしたのかもしれませんが・・・・これって当該国の文化を軽視していることにならないでしょうか。
実は、カラヤン&ベルリン・フィルのジルヴェスター・コンサートを記録したディスクはもう1種あります。ドイツの映像会社ユニテルが1978年のジルヴェスター・コンサートをもとに制作し、ポリグラムから発売されていた「カラヤン/管弦楽名曲集」です。
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ヴェルディ:「運命の力」序曲、ビゼー:「アルルの女」第2組曲 ほか
こちらは「NEW YEAR'S EVE CONCERT」と表記されていますが、その下に「SILVESTERKONZERT」と本来のコンサート名が併記されています。
これが正しい表記の仕方ではないかと思います。
「ジャケット写真なんか中身の演奏には関係ない」という意見もあるかと思いますが、おいしい料理を出すけど外観も中も汚れてる店、継布の当たったスーツや薄汚れたドレスでデートに現れる紳士淑女がいるでしょうか。
残念ながら、Sonyが大枚はたいて権利を入手し、世界に向けて発売したカラヤンの晩年の入魂の映像作品は、こんなジャケットばかりです。
私は、呆れると言うよりも、日本が西洋文化に対して敬意を払っていない姿があらわになっているようで、悲しくなるのです。
「そんな大げさな!」と思われるかもしれませんが、まだあります。
これって、はっきり言って「犯罪行為」ですよ!
おなじくSonyから発売されているカラヤン晩年の映像作品から。カラヤンが1984年6月にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほかとともに制作した、ヴェルディの「レクイエム(死者のための大ミサ曲)」のDVDです。
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カラヤン&ウィーン・フィル ほか
1984年制作 2003年発売
「指揮棒を手に冥想するカラヤン。カッコいいじゃん!」と思うでしょう?
ところが、次の画像を見てください。
カラヤン&ベルリン・フィルが1975年から1977年にかけて制作し、ベートーヴェン没後150年&エジソンの蓄音機発明100年のメモリアル・イヤーだった1977年に発売され、世界中で爆発的に売れたカラヤン&ベルリン・フィルのベートーヴェン交響曲全集のLPセットの函です。
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ベートーヴェン交響曲全集
1975~77年制作 1977年発売
お分かりいただけますか?
Sony発売の「ヴェルディのレクイエム」のジャケット写真は、ポリドール発売の「ベートーヴェン交響曲全集」のカラヤンの写真の 裏 焼 き ですよ!
こんなことって許されるんでしょうか?
いや、1977年にベートーヴェン交響曲全集を発売したポリドールには罪はありません。
そのポリドールのベートーヴェン交響曲全集の写真を使い(許可とったのかね~)、しかも裏焼きという失礼かつ姑息な手段で自社の商品に使うというSonyの行為は、はっきり言って「 犯 罪 行 為 」と思います。
ついでにもう一つ。
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ニューイヤーズ・イヴ・コンサート1985
写真が小さくてはっきり確認できないかと思いますが、スコアを眺めるカラヤンの右手に腕時計がはまっており、スコアの右側にト音記号が印刷されているので、これも明らかに「 裏 焼 き 」です。
なんというか・・・・一度ならず二度までも・・・・
上記2点のDVDが発売された当初、「裏焼き」の件を指摘した音楽評論家が一人だけいましたが、無視されてしまったようです。
なんというか・・・・クラシック音楽業界は・・・・
さらについでにですが、Sonyから発売されている「カラヤンの遺産」DVDシリーズは、ジャケット内の解説文もめちゃくちゃです。
私がクラシック音楽を聴き始めた頃のLP廉価版の解説をまるっきり転載していたり、しかもその解説が素人の私でも分かる内容の誤りが散見されるほどお粗末な内容だったり、剽窃行為でクラシック音楽界から締め出された音楽評論家に解説文を書かせていたり。
たかがクラシック音楽という狭い世界の、ジャケットの表記やジャケット写真、ジャケット解説文というさらに狭い世界の出来事ですが、弱り、すさみ、へたる一方の今の日本の病根の一つのようにも思えるのです。
自分の仕事に誇り・矜恃を持っておらず、相手のこと(この場合は、カラヤンやベルリン・フィル&ウィーンフィルや、西洋クラシック音楽や同業他社)にもまったく敬意を払っていない(と思われる)Sonyの姿が。
さんざん、Sonyから出ている「カラヤンの遺産」シリーズのジャケットおよび解説の悪口を書きましたが、演奏は名演ぞろいです。それだけにSonyのいいかげんな制作態度が残念極まりない。
ただ、2007年の年末に発売されたこのDVDだけは、ジャケットも解説もまとも。それが救いです。
カラヤン&ベルリン・フィルの1984年日本公演の白熱の大阪ライヴ。これは絶対おすすめ!
いずれこのブログでも取りあげます。
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レスピーギ:交響詩「ローマの松」ほか
読者のみなさん、すみませんでした。次回からまじめに書きます。
<次回予告>
【晩夏のゾーッとするクラシック・8】ムソルグスキー(ラヴェル編曲):展覧会の絵/エフゲニー・スヴェトラーノフ&ソヴィエト国立交響楽団【ロシアの妖怪、地下墓地での死者との語らい】