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【晩夏のゾーッとするクラシック・5】レスピーギ:ローマの松~カタコンブ付近の松/ロリン・マゼール&クリーヴランド管弦楽団【ローマの地下墓地 死者たちの詠嘆の歌】

レスピーギの「ローマ三部作」

イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギ(1876-1939)のローマの栄光を讃えた交響詩、「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの」。一連のこの交響詩を「ローマ三部作」と呼んでいます。
今回はその中の「ローマの松」の名演を。

オットリーノ・レスピーギ:ローマの祭&ローマの松
ロリン・マゼール&クリーヴランド管弦楽団
日本初出LPと紙ジャケCDのジャケット表

曲目と演奏者

オットリーノ・レスピーギ
交響詩「ローマの祭」
交響詩「ローマの松」
ニコライ・リムスキー=コルサコフ
「金鶏」組曲

指揮:ロリン・マゼール クリーヴランド管弦楽団

「ローマの松」はローマ市内4ヶ所の松に託して、ローマの栄光を讃えます。

交響詩「ローマの松」

ボルゲーゼ荘の松
ボルゲーゼ荘の松の木立の間で子どもたちが遊んでいる。踊り、兵隊ごっこ。子どもたちの歓声で子どもたち自身が興奮する。

ボルゲーゼ荘

カタコンブ付近の松
カタコンブ(地下墓地)の入り口に立つ松。その地の底奥深くから死者たちの悲しい詠嘆の歌が響いてくる。歌は荘厳に響き、やがて消えていく。

カタコンブ

ジャニコロの松
そよ風が大気を揺らす。満月の光に照らされて、ジャニコロの丘の松の木がくっきりと立つ。夜鶯が鳴き交わす。
☆第3部の終結部で最弱音の弦楽器に乗って夜鶯(ナイチンゲール)の鳴き声が響きます。この部分では夜鶯の鳴き声を録音したCDが使われます(作曲当時は蓄音機)。これは具体物の録音を音楽作品に用いたほぼ最初の例です。水笛やシンセサイザーで代用する場合もあります。

ジャニコロの丘

アッピア街道の松
アッピア街道の霧深い夜明け。遠くから聞こえる行進の響き。トランペットが響く。いま昇りゆく朝日の中、古代ローマ軍の勝利の行進が、カピトールの丘をめざして登っていく。

アッピア街道

マゼール&クリーヴランド管の「ローマの松」~カタコンブ付近の松

前記のプログラムのように、「カタコンブ付近の松」の前は遊びに興じる子どもたちの生命力あふれる音楽です。その絶頂でいきなり「カタコンブ付近の松」に入ります。最強音から最弱音へ。地下墓地を著す地の底から響くような響きに続いて、死者たちの詠歌が響いてきます。マゼール&クリーヴランド管弦楽団の演奏は、場面転換がすさまじい。
「カタコンブ付近の松」で死者たちの歌が静まると、清涼そのものの「ジャニコロの松」へと入っていきます。

実はこの演奏の聞きものは、「ジャニコロの松」から「アッピア街道の松」にかけてです。一糸乱れず鉄壁の演奏で迫り来る「アッピア街道の松」は凄い迫力です。
「アッピア街道の松」にはパイプオルガンも加わります。またローマ軍の進軍ラッパを演奏するトランペット隊は、ステージ上のオーケストラとは別の場所で演奏するよう指示されています。客席後方か2階席の一番後ろで演奏されることが多いです。
一度だけ「ローマの松」をライヴで聴きましたが、パイプオルガンの圧倒的な響きと客席最後列で演奏する進軍ラッパで、ホール全体が振動するような、音圧で体が吹き飛ばされるような迫力でした。

<次回予告>
【晩夏のゾーッとするクラシック・6】シベリウス:トゥオネラの白鳥/サー・マルコム・サージェント&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団【黄泉の国の嘆きの白鳥】

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