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フランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラ

20世紀の終わりから21世紀の初めにかけてクラシック音楽界を席巻した「古楽器オーケストラ」。その草分けの一つと言えるフランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラについて、シリーズで取りあげていきます。
まずは、導入として指揮者フランス・ブリュッヘンと彼が創設した18世紀オーケストラについてお話しします。

フランス・ブリュッヘン

フランス・ブリュッヘン(1934.10.30~2014.8.13 フランス・ブリュッヘン - Wikipedia)はオランダ、アムステルダム生まれのリコーダー奏者、フラウト・トラヴェルソ奏者および指揮者。

18世紀オーケストラを指揮するフランス・ブリュッヘン

リコーダー奏者として1950年代から活動しており、超絶的な技巧と劇的で多彩な表現から「リコーダーのパガニーニ」と評された。

リコーダーは小中学校の音楽の授業で取り組んだ人も多いと思いますが、強弱のダイナミクスをつけにくいのが難点とされています。私もブリュッヘンのリコーダー演奏をCDで聴いたことがありますが、「え?!これがリコーダー?!」と驚嘆するほどの技巧&表現です。

1981年に古楽器によるオーケストラの18世紀オーケストラを結成し、指揮者として活躍した。
彼の風貌&たたずまい(長身痩躯、長髪、射るような眼光)そのままの、デモーニッシュでエクセントリックな演奏をする。アル中・シャブ中・ヤク中ではないかという真偽不明の噂も流れたほど。
ある外国盤ライヴCDの解説書に、そのコンサートが収録されたときの楽屋でスコアを勉強するブリュッヘンのスナップ写真が掲載されていたけど、彼の前には赤ワインと思われるドリンクが入ったワイングラスが置かれており、ドリンカーだったことはたしかなようです。
ついでにいうと、ブリュッヘンはヘビー・スモーカーです。

18世紀オーケストラ

18世紀オーケストラ(18世紀オーケストラ - Wikipedia)はフランス・ブリュッヘンが私財を投じて創設した古楽器オーケストラ。ブリュッヘンを慕う世界中の古楽器奏者が結集し、1981年にオランダで旗揚げした。「歴史が遺した傑作しか演奏しない」をモットーにしている。
楽器は、弦楽器、管楽器、打楽器すべてが18世紀に使用した楽器のコピーまたは復元。基本的に2管編成(各管楽器奏者が2名ずつ)。ティンパニの革は牛革。編成は最大でも50人前後。

フランス・ブリュッヘンと18世紀オーケストラ
ヨハン・ゼバスティアン・バッハの「ロ短調ミサ」
オーケストラに混声四部の合唱団も加わってこの小編成

当初は「ベートーヴェンの交響曲第3番『英雄』を演奏する」ことをめざしていた。その目標を達成した後は、ベートーヴェン交響曲全集、シューベルト交響曲全集を完成させ、ロマン派のメンデルスゾーンやショパンのピアノ協奏曲までレパートリーを広げた。
ただ、同じロマン派であってもベルリオーズの幻想交響曲やシューマン、ブラームスの作品などはレパートリーにしていない。「幻想交響曲やシューマン、ブラームスの作品は傑作ではないから」ではなく、前記の作品は大編成のオーケストラを要求しているからと思われる。
また、モーツァルトの交響曲も作曲法が熟達してくる第25番以降に集中している。

ブリュッヘンが元気だった頃は、1年に2回の世界ツアーを行い、最後に本拠地のアムステルダムで帰国コンサートを行った。そのコンサートの様子がライヴCDとしてオランダのPhilipsレーベルから発売された。

最初にお断り・・・・古楽器オーケストラについて思うこと

21世紀に入ったばかりの頃は、クラシック音楽界を「古楽器旋風」が吹き荒れ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの演奏に関しては「古楽器による演奏でなければまがい物」という風潮がありました。作曲者が活躍していた当時の楽器、当時の編成でなければ、本物とは言えないというわけです。
私は1991年(平成3)の春に、当時住んでいた町にやってきた、40人ほどの編成のドイツの古楽器オーケストラのコンサートを聴いたことがあります。ホールは300人しか入らない小ホールでしたが・・・・そんな小さなホールで聴いてもか細い音でした。弦のユニゾン(全奏)で弾くところをソロで弾いたりと、それなりにおもしろい試みはありましたが・・・・。この音量で、2000人ほど入るサントリーホールやBunkamuraオーチャードホール、東京芸術劇場などで音が聴き取れるのだろうか、と思いました。
古楽器オーケストラは「作曲者が望んだ響き」「清新、清涼」「現代オーケストラでは味わえない異質の迫力」などと激賞されていましたが、「ホントかなぁ」「録音によるマジックもあるんじゃないの?」という首を傾げたくなる気持ちも、多分にあります。
これから紹介していくブリュッヘン&18世紀O(Oはオーケストラの略号)のCDも、録音によるマジック(音量調整や楽器のバランス調整)がかかっている面もあるかもしれませんが、それでも抗しがたい魅力があることもたしかです。
明日から、次のCDを紹介していきます。基本的に録音年月順です。

・モーツァルト:交響曲第40番&ベートーヴェン:交響曲第1番
・モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」&歌劇「皇帝ティトゥスの慈悲」
・ベートーヴェン:交響曲第3番「英雄」
・モーツァルト:交響曲第39番&ベートーヴェン:交響曲第2番
・モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲&交響曲第38番「プラハ」
・モーツァルト:交響曲第31番&第36番「リンツ」
・シューベルト:交響曲全集
・メンデルスゾーン:交響曲第4番「イタリア」
・ベートーヴェン:交響曲全集

次回予告 フランス・ブリュッヘン&18世紀オーケストラ / モーツァルト:交響曲第40番&ベートーヴェン:交響曲第1番

ブリュッヘン&18世紀Oの記念すべき世界デビュー盤。日本では1985年に発売され、レコード芸術誌で音楽評論家の吉田秀和が激賞しました。

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