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【真摯】ヘルベルト・フォン・カラヤン&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ほか/モーツァルト:レクイエム【哀切】

モーツァルトの「レクイエム」は、私の好きな作品の一つです。死に関する曲だけに、そんなに気楽に聴けないのですが。
そのモーツァルトの「レクイエム」の愛聴盤その1:カラヤン&ウィーン・フィルのモーツァルト「レクイエム」。

ジャケット(解説書)表

曲目と演奏者

モーツァルト:レクイエム ニ短調 K626(ジュスマイヤー版)全曲

指揮:ヘルベルト・フォン・カラヤン
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会合唱団
ソプラノ:アンナ・トモワ=シントウ アルト:ヘルガ・ミュラー=モリナーリ
テノール:ヴィンスン・コウル バス:パータ・ブルシュラーゼ
1986年5月から6月 ウィーン・ムジークフェラインザールにて

モーツァルト「レクイエム」についての詳しい解説は、【好企画】クリストフ・シュペリング&ダス・ノイエ・オルケスターほか/モーツァルト:レクイエム【モーツァルトの遺稿も収録】|Yuniko note をご覧ください。

指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンについて

1908年4月5日 ザルツブルク生まれ 1989年7月16日 ザルツブルクにて死去。
「帝王カラヤン」と呼ばれた20世紀後半最大の指揮者。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第3代音楽監督。レパートリーは途方もなく広く、バロック音楽・古典派・ロマン派・国民楽派・20世紀の無調音楽、ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア・ロシア等の各国の音楽、歌劇・交響曲からウィンナ・ワルツ、行進曲まで、幅広く指揮した。魅惑的なオーケストラの音色を作りだし、劇的かつ繊細な表現を駆使して、クラシック音楽に縁遠かった人にまで、クラシック音楽の楽しさ・美しさを伝えた。
日本にも、1954年(昭和29)以来、都合11回来日している。
レコード、CDの録音、ビデオ制作にも熱心で、彼の残したCD、DVD等は死去して40年近くが経った現在も、売れ続けている。

解説書 裏表紙 ヘルベルト・フォン・カラヤン

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

本体はウィーン国立歌劇場管弦楽団で、同団の選抜メンバーがコンサート・ホールに上がって交響曲等を演奏したり、レコーディングをしたりする。それがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、略してウィーン・フィル。
1842年創立。リヒャルト・ワーグナー、ヨハネス・ブラームス、ヨハン・シュトラウス、グスタフ・マーラー、リヒャルト・シュトラウスらの大作曲家が指揮台に立って自作を演奏している。
定期演奏会は年間10回程度とたいへんに少ない。これは、ウィーン・フィルの本務が歌劇場のオーケストラで、ほぼ毎日行われる歌劇場公演の合間を縫っての定期演奏会となるため。その定期演奏会のチケットは代々の定期会員に受け継がれており、ウィーンに行っても、現地でウィーン・フィルの定期演奏会を聴くことはまず不可能。来日公演のチケットも、かなり入手困難。
音楽監督、常任指揮者というポストをおかず、定期演奏会に招かれる指揮者は世界トップクラスの巨匠のみ。高いレベルに達した指揮者でないと言うことを聞かない、非常に扱いにくいオーケストラとしても知られる。
定期演奏会の会場ムジーク・フェラインザールは世界有数の響きの美しいホールとして知られる。ウィーン・フィルの響きは典雅で優美。しかしその一方で、不気味な響き、悪魔的な響きも作り出せる。その魅惑的な響きで奏でられるウィーンで活躍した作曲家たち-ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブルックナー、ブラームス、ヨハン・シュトラウス、マーラー、リヒャルト・シュトラウスの作品は絶品。

解説書 表紙裏 独唱者4人
左から アンナ・トモワ=シントウ
ヘルガ・ミュラー=モリナーリ
ヴィンスン・コウル
パータ・ブルシュラーゼ

演奏について

このCDが録音されたのは1986年の6月。カラヤンが死去する3年前の録音です。
カラヤンの音楽は「ケバケバしい」「美しいだけ」「空虚」と批判する声もかなり大きいですが、この「レクイエム」は・・・・いやこの演奏だけではないと私は思うのですが、正面から作品と向き合うひたむきさにあふれています。うねるような弦楽器と合唱が死者への哀れみを祈る「キリエ」。嵐のような「ディエス・イレ(怒りの日)」。亡き人の面影を静かに歌うような「レコルダーレ(覚え給え)」。歌詞のとおりに弦楽器が地獄の業火を表す「コンフターティス(呪われし者は業火で焼かれ)」。そしてすすり泣くような「ラクリモーサ(涙の日)」。
前回のクリストフ・シュペリングのモーツァルト「レクイエム」の感想で、「モダン楽器オケのレクイエムは荘厳な大聖堂での死者ミサ、ピリオド楽器オケのレクイエムは農村の小さな教会での死者ミサ」と書きました。
カラヤン&ウィーン・フィルのモーツァルト「レクイエム」は、モダン楽器オケのレクイエムでありながら、農村の小さな教会での葬儀を思わせるような不思議なやすらぎ、救いへの一途な祈りを感じます。
カラヤンが晩年に残した珠玉の名演です。

<次回予告・・・・ベーム&ウィーン・フィルのモーツァルト「レクイエム」>

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