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直接言うこと。映画『HAPPYEND』2024/12/21

映画『HAPPY END』を観た。
友達に誘われて、何も知らずに観に行ったのだが、すごくよかった。
日ごろ、自分が考えている(と思っている)ことが映画のなかで示されていてびっくりした。疑問に思う→だから作品にする、という行動の流れに圧倒される。ぐずぐず考えていないで作品にすればいいんだよ! って感じだった。


ユウタとコウは幼馴染で大親友。いつもの仲間たちと音楽や悪ふざけに興じる日々を過ごしている。高校卒業間近のある晩、こっそり忍び込んだ学校で2人はとんでもないいたずらを仕掛ける。翌日いたずらを発見した。校長は激昂し、学校に四六時中生徒を監視する AI システムを導入する騒ぎにまで発展。この出来事をきっかけに、コウは、それまで蓄積していた、自身のアイデンティティと社会に対する違和感について深く考えるようになる。その一方で、今までと変わらず仲間と楽しいことだけをしていたいユウタ。2人の関係は次第にぎくしゃくしはじめ...。

(「とんでもないいたずら」がめちゃめちゃすごかった🚖)

上映後に監督を迎えて行われたQ&Aで、最後の質問者が「変わらないものってあるんですかね?」と尋ねていたのが印象的だった。

変わらないものってあるのかな?
変わってもいいのかな? 自分も。

私はユウタが、「変わる」のがいいと思った。
最後に、自分ができる限りのすべてをしたと思ったから。
でもそれは、ユウタが「変わった」わけではないのかもしれない。もともとそういう人なのかもしれないから。
「おまえは何も考えてない」とコウに言われる一面と、みんなにとっての最大の危機の場面で名乗り出る一面。その両方をもともと持っていたのかもしれない。

コウは、その他の人間に対して「なんでみんな何も考えてないんだ」と怒る。(たとえば「国民保護」の名目で監視を強めようとする政権に対して、行動して示そうとしない人たちへの怒り)。その怒りは友達にさえも及ぶ。生徒を厳しく管理しようとする学校への怒りを自分ほど持たないように見えるユウタに苛立ち、直接ぶつけ、問い詰めるシーンがある。

苛立つコウの姿は自分と同じすぎて、私は映画を観ながらずっと恥ずかしかった。自分が時々友達に対して持つ苛立ちが傲慢なことはわかっていたけど、こんなにも無力に、子どもっぽく見えるんだな。知ってたけどな。

韓国にルーツを持つコウにとって、(2024年の日本より)さらにずっと排他的になっている近未来の日本では、すべて、とくに外国人に関する政治的決定やそれにともなう社会の雰囲気が切実なものなのだが、日本人であるユウタにとってはそうではない。でも、コウに問い詰められ、「デモなんかしても何も変わらない。もう諦めている」と答えたユウタの言葉には、何も考えてないわけではないことがうかがえる。

ルーツや出自、背景の違いが、こうして「考える人」と「考えない人(諦めている人)」を生むということなのだろうか。

監督のサイン会があり、並びながら、何を聞いてみたいか考えた。
やっぱり、「もっと考えろよ!」と友達に対して傲慢に思ってしまう時、どうしたらいいのか? ということが聞きたかった。
私は、「なんで考えないんだよ! もっと考えろよ!」というコウのユウタへの言葉は、「もっと怒れよ!」に聞こえて、直接相手にぶつけているのがほんの少し羨ましく感じた。直接言えば、直接聞ける。それしかないように思えた。

監督にサインをしてもらいながら聞くと、「あんまり怒ったり、怖くすると、相手も引いていってしまうし、それよりも相手を引き込むことを考える…ですかね…」と言っていて、映画のなかのコウとユウタの在り方と正反対じゃん! とは今書きながら気付いたことで、その時は緊張して拝聴するばかりだった。

映画のように相手に直接ぶつけるのも、相手を引き込む方法を考えるのも、たぶんどっちも正解で、でも私は今はわかりやすくバーッ! と相手に言ってしまうほうに心引かれるなと思った。映画でみたように。
それは、映画のなかで結果的にユウタが「変わった」からではなく、バーッ!と言って、ガーッ! と返ってくる二人のやりとりがわかりやすくシンプルで、その場で一緒に次の段階に行けるのがいいなと思ったから。揉めたらやだなとか傷付いたり傷付けたら怖いと思っていたけど、別にきっと大丈夫なんじゃないかな! と、何だかわからないけどそう思えた。
あんまりぐるぐる考えるのはもう疲れてしまった。ぐるぐるはもうこれまでにさんざんしたのだった。

もしかしたら、映画の形にすることも、案外「直接言うこと」にあたるのかもしれない。ぐずぐず言ってないで作品の中で直接言ってる。

🎦

それにしても、組織や国が決めたことに従えないと思った場合、どういうふうに行動したらいいか、私は全く知らないなと思わされた。生徒たちが要望書を手に校長室に乗り込んで座り込みをする姿や、デモに参加したことを咎められた際に自分の考えを主張する様子、校長の車を縦に立てるという(!!!)いたずらの犯人に疑われた際に反論する場面(実際犯人なんだけど)は、とてもまぶしかった。やり方や勇気。交渉すること。文句だけじゃなくて行動すること。

学校のなかのヤバイことがいっぱい描かれていたのにもしびれた。教師が生徒に対して言う「ハイ減点」とか、「起立、礼」の号令とか。号令って……軍隊。映画では、自衛隊が高校に職業紹介(リクルート)に来ていた。。2025年の高校にも自衛隊は来るんじゃないか……。

とはいえ、映画のなかの高校生たちが、たくましく、いたずら好きで、反骨精神があり、ユーモアの才能にあふれていて、こういう人たち見たことあるぞと何度も思った。明るい。かわいい。希望だ。

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