猫とこどもと2023/11/13
何も考えず近鉄の改札で普通にTOICA(JR東海の交通ICカード)を通してしまい、通常料金を支払う羽目になったのが悔しくて悔しくてたまらない。
名古屋→難波は1800円の切符を格安チケット店で買っていたのに。
気付いたのは、改札を通り、特急ひのとりに乗る5分前のホームで、ここから改札まで戻り、訳を説明して取り消してもらって再入場する……のは間に合いそうにない距離で諦めた。
財布には使わなかった格安切符が残っており、見ると12月末までの有効期限だったからいずれ年末には使うにしても、今回は今回で使いたかった。
いつも近鉄特急に乗る時は格安チケットを使うから、改札では必ず意識をたしかに持っていたのに、今回は耳にイヤホンをさしてスピッツを聴いていて、まったくの無意識状態だった。多少の緊張感は持たないかんな。
難波に着いてTOICAを自動改札に通したら『料金不足』で通れず、は? 2440円もはいっている(チャージのこと)のに? と苛立ちながら精算機に行くと、『400円不足』と出て、つまり名古屋→難波間は『2840円』もしたのだった!
格安チケットで1000円オフってこと!
いやなにそれ! 高っか!
正規の値段が2840円というだけで、それを支払うのは真っ当なことなのだろうが、1000円損した気分を自分では克服することができず、猛烈に機嫌が悪くなった。
改札前で話しかけてきた若い男がいて何を言ってるかわからなかったし、猛烈機嫌悪かったので無視した。
📖
行きの難波でひのとりに乗る前に寄ったブックファーストで買った岸政彦の『にがにが日記』を、帰りの難波からの地下鉄で読む。
筆者は、職場が京大に移ったことにより、給料が下がった年収が下がった、と何度も書いていて親近感をおぼえる。
こんなに売れっ子でも、大学教員の給料のことを、ぼやくと言うよりもっと強い調子で嘆いていて(絶望に近いニュアンス)、研究や教育にお金をかけないこの国の煽りを受けている人があちこちにいることがわかる。この人がこうしてはっきりとちゃんと嘆いていることが救いのような気がした。
京大は給料が下がったこと以外はすごくいいのだそうだ。
『緩い』と書いているのを読んで、瞬間、それ大事! と心の中で叫んだ。緩いの大事。今自分がいる職場も、緩さが好きだったことを思い出した。
『緩さ』についてはこれからも、働く環境として自分のなかの大切なこととして覚えておきたい。
林芙美子『放浪記』方式で、日記なんだから全部読まなくていい! を適用し、この3日間飛び飛びで読んでいた。
最後の『おはぎ日記』だけ、飼い猫が死に向かってゆく日々の記録だとわかりながら全部読んだ。
電車で読みながら泣き始め、涙が止まらなくなったのだった。
さっき近鉄が高すぎることに猛烈に機嫌を悪くしたのと同一人物だとはわれながら思えない切り替えの早さだった。
人も含め、生き物が死ぬ時の描写から目を離すことができない。
筆者は22年飼っていた猫を亡くしたのだ。
🐈️
とてつもなく変な話かもしれないが、この猫が私には妹の四歳の子どもの姿に重なり、泣けて泣けて仕方なかったのだと思う。
子どもはあまり饒舌にはしゃべらず、ところどころ何を言っているかわからない。発達診断には問題がなく、口腔内か滑舌なのか、ともかく専門家に診てもらう必要がありそうだということのようだった。
前日に母(子どもの祖母)と子どもと私の3人で一緒に遊園地に行ったところで、子どもは自分の親がいなかったせいもあるのか、それとも遊園地に緊張していたのか、口数がとても少なく、でも急に反応を示して声をあげたり意思を示したりしてかわいかった。
その辺りが私の想像する猫と似ていた。
しゃべらなくても、何を言っているかはわからなくてもかわいいんだよな。一緒にいるだけで愛しいんだよな。と思ったから、きっとたぶん猫もそうなのだろう。
本のなかで、猫が死んでゆく場面やそれにともない悲しみ続ける人々の描写には電車のなかだというのに泣けて泣けて、マスクは涙しか吸い取ってくれず鼻水にはノー対応なのでかなり困った。乗り換えてもまだ泣き続けた。
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