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怒った話


昨日は久しぶりに、人から言われた言葉に激怒した。
頭の中がカーッとして、すぐに他の人に話した。私はあまりに怒っていたから後先考えずに喋っていて、偶然近くにいた人がびっくりした顔で私を見たから、自分の状態に気付いて少し冷静になった。

そんなふうになるのは、半年ぶりのことだった。
(今数えてみた。)
(前も職場だった。)
それが多いのか少ないのかはわからないけど、生きていたら、大体半年に1回ぐらいはそういう目に遭うのかもしれない。
でも、それより前にカーッとなるようなことを言われたのはその3ヶ月前だったから、頻度は別に決まってないのかもね。ええ、もちろん全部覚えていますとも! これは、「ショック」っていうより、「怒る」寄りのカーッです。


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学校で、休み時間が終わる間際、普段から使用言語が違うなーと思っていた人に、通りすがりに呼び止められた。テスト範囲の確認をされ、「授業でまだ全然終わってないです」と言ったら、
相手「えっ?! そこ、ガッツリ出てるで~?」
私「何に出てるんですか?」
相手「えっ、範囲に」
私「テストに出てるんですか?」
相手「うん、まだ作ってへんけど。二週間前には作って見せるようにはするけど」
私「早めに見せていただけると助かります。まだ範囲の所が全然終わってないんで」
相手「え? 前から言ってたやん。てか、じゃあ今まで授業で何してたん?」

もう何も分析したくないので、説明を割愛しますが、終始気分の悪くなるこの会話の中で、私がもっとも激怒したのは、相手のいちばん最後の言葉です!


じゃあ今まで授業で何してたん?じゃあ今まで授業で何してたん?じゃあ今まで授業で何してたん?……


……こわいよ。そんな言葉、人に対して吐くことなんてある? これまで生きていて、これからもだけど、私はこんな言葉を使うことは一生無いつもりよ。
とっさに言い返すことができないことは、だからと言ってスッパリ忘れるという意味でもないので、私はすぐに、非常勤で、同じ教科・学年を一緒に担当しているおじさんに言いに行った。
「『今まで何してたん?』って言われたんですけど! ひどくないですか?」と話しながら感情が高まってきて、私は一瞬泣きそうになったけど泣かず、でもそういう自分の状態から、これってやっぱ相当ひどいこと言われたよなーと確認し、怒りとショックが増幅する。おじさんは即座に共感して一緒に呆れてくれたからとりあえず私は救われて、その日最後の授業に無事向かうことができた。
教室で高校生たちの前に立ちながら、さっき言われた「じゃあ今まで何してたん?」という言葉が頭の中をくるくると回る。
傷付いてまたとらわれそうになったのと同時に、さっき自分がすぐさまおじさんを聴き手に我慢せず怒り、怒りながらさらにその怒りの正当性を実感してもっと怒り、職員室のまん中であるにもかかわらず声の音量も落とさずにぶちまけているから人にじろじろ見られているなと冷静に観察して、最後はパフォーマンスも含みつつ、わざと怒っていた様子が思い出されて、笑いがこみあげてきた。

笑えた! よかったー!

私、怒ってるなーとか、まだまだ怒れるし、怒るんだなーと知って、安心のような嬉しいような、変な気持ちだった。最近は穏やかに過ごしていて、怒ることもなくなったなーという安堵と、自分が自分でなくなったような不安もほんの少しおぼえていたのだった。

私は立派に怒っていた! 怒る時は怒る! その時怒る! とっさに本人に対して効果的な言葉を言い返せなくても、聴いてくれる人にすぐ言う! 大事!!
と思ったら、自分ってえらかったなー、しかもすぐに授業している。もしかして聖人なんじゃないかな? 

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(↑一足さきに梅仕事をした人たち…)

私の立派だった部分の解説:
われを忘れるレベルで怒りを表しながらも私が気を付けたのは、「その人(私を怒らせた人)を否定しない」ということだった。「考えが足りない」とか、「自分だって大した授業してないくせに」とか、「生徒にも教科にも同僚にも愛情がない」とか、「国語の先生のくせに言葉が足りない」とか……、笑。
思っていたことはあったけど、たとえ本人に向かってでなくとも、職員室のまん中でこのようなことを言ったら私の負けになる。
だから、かわりに、「『今まで何してたん?』って、あの言葉はダメ」とか、「言葉が悪い!」というふうに「言葉」を主語に置き換えて、怒りとショックを表明した。私が批判してるのは「言葉」で「人」ではない、っていうことに一応あの場ではしておいたほうが、たぶん面倒が少ない。
さらに、「『今まで何してたん?』って、あの言葉は失礼」、「『今まで何してたん?』はない。傷付く!」と言って、「失礼」とか、「傷付いた」ということを強調した。この内容なら、職員室のまん中であっても声をおさえずに話してもいいはずだ、と判断したからそうした。だって言いたかったから! むしろ私が意地悪かもしれない。
周りの人々は、きっとよくわかっていなかっただろうし、途中から当人がすぐ近くの自分の席に戻ってきたことも見えていたけど、私はそれも平気で半分痛快で、半分かわいそうに見えた。
私は、怒っていることをすぐに表出したことにも、しかも計算と配慮をかねながら吐き出すという高度さを発揮したことにも、そして何より怒った自分にも、よくやったな~と思っていて、今書きながら残っているのはあっぱれという気持ちの軽さだ。


テスト範囲が授業で終わってないという問題については、その日の放課後に、おじさん(もまだ終わってない)と相談して対策を講じたからたぶん大丈夫。

それにしても、不意にくらった言葉があまりにも汚れていたから、このままでは私を呪いみたい蝕む……と思って、本当は神社に預けに行きたかったけど時間がなくて、昨日はかわりに温泉に行った。
最近は、自分で持ちきれない他人の闇のようなものに直面してしまった時は、神社に行って預けて、私の代わりにもってもらうという方法をとることにしていた。
神社に行った直後はまだくよくよするけど、一週間もたたないうちに忘れてしまうのできっと効果があるのだと思う。
「温泉」は神社の代わりになるかどうかはわからないけど、行動したということに満足しているし、今日も私は元気なので案外いいのかもしれない。


今朝起きたら、<じゃあ、今まで何してたん?>は、意味のない単なる言葉だったような気もして、そういえばそもそも相手はそういう人だったのだからそうなんだろうと思った。
言葉に意味はないのだろう。
でも、私は絶対に忘れないからここに書いたよ。

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