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母の固有スキル「寝かしつけ」

幼い頃、私の母は子守り歌をよく歌ってくれた。
時代が昭和、とはいえ、気に入っていたのか「江戸の子守り歌」を繰り返し毎晩。

6歳ぐらいまでは、『母の声だ、そばに母がいる』と思って無邪気に眠っていたけれど、小学校を入学するあたりになって、言語力が伸びはじめると歌詞を聞き取り意味を理解し始めて、その内容に疑問を抱くようになった。

ねんねんころりよ 
おころりよ(コロリ…?)
ぼうやはよい子だ ねんねしな
ねんねのおもりは どこへ行った(逃げた?)
あの山こえて 里へ行った(遠すぎる)
里のお土産 なにもろた(帰ってきたんだ)
でんでん太鼓に笙の笛(しょうって誰…?)←笙を人名だと勘違いしていた

五木の子守り歌のときもあった。

おどまぼんぎりぼんぎり(ギリギリなんかこわい)
ぼんからさきゃ おらんと(いなくなる?)
ぼんがはよくりゃ
はよもどる(もどるの?)

またこんな歌のときもあった。

ねんねこしゃっしゃりませ
寝た子のかわいさ
おきてなく子の ツラにくさ(憎い?!)
ねんころろ(眠らなきゃダメだ)
ねんころろ(眠らなきゃダメだ)

母には黙っていたが、こんなふうに突っ込みを入れ始め(お盆の概念も曖昧だった)てからは子守り歌が終わるまで全く眠れなくなった。

上記の歌が大好きな方にはごめんなさい。
母が心を込めて歌っていなかったのかも?知れない。

私の本音は、
暗い!ネガティブ!なんか怨念を感じる!
逆に落ち着かない!
だった。

…………

時は流れ、私も母になった。
退院してきて最初の夜、授乳も済ませてオムツも変えたのに泣く赤ちゃんと一対一になったとき、そうだ泣き止ませて寝かしつけなければ。(※注 文末)と思い母の歌ってくれた子守り歌を思い出して、いやもうこれを継承するのはやめよう、と考えた。

自分が歌ってリラックスできて、
やさしい歌詞の、新しい素敵な子守り歌を探そう。

さてそこから毎日実験で、なかなか曲目選びは難航した。
どんな曲でも童謡をゆっくり歌えば寝かしつけに使えそうなんだけど、ところが童謡で上手く寝てくれたのは赤とんぼと朧月夜だけである。

手当り次第知っている曲をゆったり歌い続けていたら、よく寝てくれる曲の似ているところに気づいた。

①子どもが理解しづらい、歌詞の解釈の難しい歌のほうがいい(オノマトペは耳に残り歌いだしてしまうので駄目)
②音階はできれば少し物悲しいほうがよい(明るいと楽しくなっちゃうみたい)
③J-POPなどのAメロBメロサビみたいな曲は、サビで盛り上がる作りになっているので寝かしつけには向かない

悩みに悩み、決定した、私の中の『ベスト・オブ子守り歌』!

新居昭乃さんの曲「VOICES」

繰り返しの多い優しい憂いを含んだメロディ。
優しいけど意味が難しくて覚えにくい歌詞。
何回続けて歌っても聞いていられる。
歌詞はちょっとだけ怖いところもあるけれど、眠りって脳が生命維持以外の機能を落とすことだから、ちょっぴりそんな要素が入るのは仕方ない。

何年も何百回も歌いました。
それでもぜんぜん手垢のついた感じのしない、素敵な曲。

たまに流行りの曲を最初に歌ったりすることがあるんだけど、二曲目にはこどもたちから「ひとつめの歌うたって」(曲名がわからないから歌い出しの歌詞を言ってくる)とリクエストされる。

私は単純なので、歌って、って言われると嬉しくなってしまって、心を込めてできるだけ綺麗で優しい声で歌う。
天井に向けて発声して声が反射して降ってくるように、護りのイメージで。

この歌が入っている新居昭乃さんのベストアルバム
「空の森」は他にも素敵な曲がたくさん収録されているので、おすすめです。


(※注 0月齢でのこの対処法は非常に非効率的です。もし今お悩みの方いらっしゃれば、(ご病気などなければ)頑張れるなら頻回授乳を私はオススメします。とくに完母の方は時間とか間隔とか難しいこと考えないで永遠に授乳です。おふとんの上で座禅を組んで授乳して、赤ちゃん寝たらそーっと下ろす。おっぱい飲むだけで疲れてくれるのでいつかは寝ます。顔は横向きに置いてあげて、頭の下にタオル仕込んで置くとあとで溢乳しても安心。歯が生えてくるまではこれで私は育てました)