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経営者が掛けるべきお金とは?ーブランディングとアウトソーシングの話。
企業を経営する上で、どこまでを自社で内製化し、どこから先は外部委託するのか?ーその線引きを決めるのはなかなか難しいことです。時間さえかければ、ほとんどの業務は社内で内製化できてしまう、それでも、経営判断として外注すべきいくつかの業務があります。このnoteでは、どこまでを内製化し、どこを外部委託すべきか、についてまとめてみました。
企業の形は取引のコストで決まる:取引費用理論
取引費用理論(Transaction cost theory : TCE)とは、一言で言うと「企業の在り方は取引にかかるコストで決まる」と言うものです*1。取引で発生するコストを最小化する形態=企業の形(業務範囲)であり、外部委託するよりも内製化した方がコストが低ければ企業内部でその業務を担い、外部委託した方がコストが低ければ外部にその業務を委託する、そうして企業の形が決まる、という理論です。
ただし、取引費用理論の研究でも議論されているように、「人間は将来を見通す認知力に限界があり、限られた将来予測力の範囲で合理的に意思決定を行う」という限定された合理性(bounded rationality)という概念を取り込む必要があります。
今の時点で企業の形(業務範囲)が最適だとしても、将来どうなるかまでは予想できない。むしろ、将来こうして行きたいという経営判断に基づき、積極的に企業の形(業務範囲)を変えていく必要があるのではないでしょうか。そんな、将来のありたい姿に近づくために、積極的に企業の形(業務範囲)を変えていくことこそが、経営者がかけるべきお金であると考えます。
*1…取引費用理論について詳しくお知りになりたい方は、「世界標準の経営理論」、入山章栄、2019年12月11日、ダイヤモンド社をお勧めします。
マイナスをゼロにするための「アウトソーシング」
特に創業期、スタートアップの企業は本業以外にやる事が膨大にあります。社員5000人の大企業でも社員3人のスタートアップでも、経理・労務管理・決算・行政への届出などの会社の業務は等しく存在します。大企業であればそれぞれ担当者がいて業務分担ができますが、スタートアップでは本業以外の機能は必然的に全て経営者が担うことになります。本業によって、自分や世の中を変えたい!良くしたい!と思って創業したのに、気づけばずっと雑務に追われ、「こんなもののために生まれたんじゃない」(鬼束ちひろ, 2000)と呆然とする…そんな話を多くの経営者の方から聞いてきました。
そこで、特に創業期は経営者の時間を確保し、少しでも本業に向き合う時間を作るため、アウトソーシングにはお金を掛けるべきです。これは言わば、「マイナスをゼロにするためのお金」です。以前から専門的知識が必要な財務経理業務、法務業務は税理士さんや弁護士さんに依頼するのが一般的でしたが、それ以外の細かい業務についても、昔と比べて驚くほどアウトソーシングしやすい環境が整っています。便利な会計管理・労務管理・契約書管理のためのオンラインツールは沢山存在しますし、フリーランスや副業が一般化したこともあって、業務委託・業務代行とのマッチングサービスも複数存在します。もちろん外部委託すると費用は掛かりますが、その分本業に向き合う時間を確保できます。本業に向き合わなければ売上も伸びません。マイナスをゼロにするために、アウトソーシングは掛けるべきお金だと言えます。
1を100にするための「ブランディング」
アウトソーシングで本業に集中する時間が確保できたとしても、売上を伸ばしていくのは大変なことです。せっかくキラリと光る製品やサービスを持っていても、自社の魅力を整理し、磨き上げ、(潜在)顧客に伝えていくための工夫をしなければ、なかなか売上は伸びていきません。そこで、「1を100にするためのお金」としてのブランディングが重要になります。
以前は広告といえば代理店を通じて発信するものでした。しかし現在では、SNSの広告は個人で簡単に発信できますし、オウンドメディアとしてのSNS、noteなど、多様な顧客接点を自社で管理することが簡単にできるようになりました。「自社でできるのにいまさら、マーケティングやブランディングにお金を掛けるなんてもったいない、創業期で売上も少ないから自社で賄おう」そう思う経営者の方も多いのではないでしょうか。
でも、少し考えてみてください。あなた自身のことを人に伝える時、自分は「XXXXな人間です」と一言で伝える時、どんな言葉が思い浮かびますか?ご自身のことは、良いところも悪いところも知りすぎていて、ともすれば悪い面ばかりが目について、客観的に、相手に伝わりやすいメッセージを整理することは難しいと思います。これは経営者にとっての自社製品・サービスも同じことが言えます。知りすぎているからこそ「自社の魅力を整理し、磨き上げ、(潜在)顧客に伝えていく」ことは難しいのです。
かく言う私自身も、マーケティングやブランディングの専門家として起業するにあたり、ブランドコンセプトの言語化とロゴマークの作成は信頼できる専門家に依頼しました。「自分の事は自分が一番知らない」ことを知っているからです。
ブランディングやマーケティングは自社でやればコストをかけずにできるかもしれない。でも、専門家の専門家の力を借りて、自社の製品・サービスの魅力を引き出し、磨き上げ、(潜在)顧客に伝えていくことで、現状の売上を何倍にも拡大できる可能性があります。創業期だからこそ、現状の売上を早期に拡大するためにも、ブランディングやマーケティングにはお金をかけていくべきだと思います。
株式会社monamieでは、創業期や成長期の経営者のマーケティング・ブランディングの伴走支援を行なっています。マーケティングなんてまた全然手をつけられていない・・・という経営者の方も、お気軽にご相談ください。