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スリランカで走っていたら、声をかけられて。

「ランニングとか疲れる、部屋でダラダラして漫画読んでいたい」

これは、週3で走っている私の紛れも無い本音。

私たちは、たった1日の中で3万回以上の選択をしているといわれている。
起きるか二度寝するか。チョコを1粒に留めるか1箱いっちゃおうか。
気になるあの子にラインをなんって返そうか、とかね。

そんな中で、必ずしも選択しなくても良いけど、するものも沢山ある。
例えば、趣味。娯楽、それは生きてく上で絶対的に必須というわけではない。推しのライブに行くこと、ヨガをすること、漫画を読むこと、絵を描くこと、などなど。それらを選択するのは、確実に私たちの人生に潤いや付加価値を与えてくれるからじゃないかな。日常に光をあててくれる、的な。

私にとって、それはランニング、走ること。
なぜ「まじ疲れる」走ることを、あえて選び続けるのか。
そして、疲れるとブーたれつつ、実はかなり楽しんでもいる。

学生時代は帰宅部で、運動音痴な私が走りだしたのはもう15年前のこと。
きっかけは当時の彼氏にフラれて別れたこと。デート相手がいなくなり、時間を弄んでいた暇人学生だった私は、走ることを始めた。

運動とは無縁だった私が、なんとなーく始めたランニングという趣味。
しいていうなら、道具もそんなにいらないし、ルールを覚える必要もなく、お金もあまりかからないという理由。

当時、走っていたら、できなかったことができるようになる過程が嬉しくなり、次第にフルマラソンにも何度か出るようにもなった。達成した時には自分が誇らしくてしょうがなかった。自己肯定感爆上げになる瞬間だった。ちなみに全く速くはない。

時は経て、2017年。仕事でスリランカという国に単身赴任することになった。友達ゼロの状態で生活をスタートしたので、寂しくてヘコむことも多かった。赴任当初は、新しい日々に戸惑い、泣きながら過ごす夜もあった。

スリランカは素敵な国だけれど、やっぱり東京に住んでいた私の「日常」からなくなったものも多かったから。それでも、趣味のランニングは続けようと思って走り続けていた。

有名な公園の中を走っていたら、ある日、男の子に声をかけられた。

「どこから来たの?よく走っているの?毎週木曜の夜7時から、ここでいつも20人くらいで5キロ走っているよ。よかったらおいでよ」と。

誘ってくれた彼の名前は、タリンドゥ。
この「木曜に走る会」を発足した張本人だった。

『日本から来た、ユウナだよ。私、そんなに速くないけど良い?』
下手くそなシンハラ語(※スリランカの公用語)で答えると、

彼は笑顔で、「僕たちは、走ることを皆で楽しみたいだけだから自分のペースで大丈夫。走ることで仲間が増えることが楽しいから。日本人は今までいなかったから、皆もユウナの話を聞くのを楽しみにしてくれると思うよ!」と快く受け入れてくれた。

私は木曜に、その会に参加するようになった。現地の公用語であるシンハラ語での会話に当初は限界があったものの、走ることで同じ時間を共有し、それはとても心地の良いものだった。

ラン前。南国でのラン後は滝汗すぎてまともな写真は撮れない


おそろいのTシャツを着て、夜のスリランカを走ることで絆は深まり、たくさんの友達ができた。ランニングを通して、一人ぼっちだった駐在先で、こんな素敵な出逢いがあるなんて。走っていなければ、巡り合うことのなかった人たち。みんなで、旅行も兼ねて、他の国のレースに一緒に出るようにもなった。

ランニングをしていたおかげで、少しずつスリランカでの日常が明るくなった。

南国で走る、それはサウナのような暑さだ。日本に比べたら街灯も少ないが、暗闇の中でも凛々しく目立つキレイなヤシの木、気をつけないと転びそうになるデコボコな道、夜でも姿勢正しく警備する軍の人たち、容赦なく真横を通るトゥクトゥク。周りには大切な仲間たちの走る姿。

ランニングは確かに疲れるし、できればクーラーのきいた部屋で漫画読んでたいとも思うけど、でもこんなにも幸せな情景を生きることができる時間でもある。

メンバーが勢揃いした日。お揃いのウェアは定期的に作っているので、何種類かある。
タリンドゥの趣味でオレンジとイエローが多い。

2020年、私は日本に帰国した。けれど、未だにスリランカを仕事で行き来している。そして木曜は必ず、このかけがえのない仲間たちと一緒に走る。そして日本でも、「木曜に走る会」に似たものを自分でも作ってみた。それを通して、日本でもまた新たな友達もできた。

運動が得意なわけではない。
実は、アクティブなわけでもない。
何年走ってても、速くなることもないし、基本的には遅い。
走ることは、まじで疲れる。

それでも、私はこの先も走ることを選ぶだろう。
大人になってから、こんなに大事な仲間に出逢えることってなかなかないから。走ることで、日常に煌めきを添えることができるから。走ってる時は、今にも吐きそうな険しい顔をしているものの、心はこんなにも笑顔になるのだから。大切な居場所が増えるから。

必ずしもやらなくてはいけないわけではない。
でも、そんな選択こそが、私達の生活を拓いていってくれることもあるんじゃないかな。

私たちの活動は、現地の新聞にも載った。それによって、さらに仲間が増えた。

by YUNA 🌿

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▶︎著書「そのカワイイは誰のため?ルッキズムをやっつけたくてスリランカで起業した話」 ( #そのカワ )
▶︎マガジン:「女戦士になりたかったわけじゃないのいね。」
▶︎卵子凍結シリーズ:「#1 卵子凍結を考え出した32歳独身女子(..."女子"?)」〜「#4 卵子凍結、完結編。費用、自己注射、メンタル、気になること全公開...!

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