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「私は君の何なのか。」

これを考え始めたのは、初めに振られた3年前、1回目の秋だ。
サイレント振り。当時の私は19歳になる年の18歳だった。
今でも昔のLINEを見返すと彼は私のことが好きだったことがよーく分かる。当時の私は「年下だからこんな優しくしてくれていた、だから別に私のことが好きだから優しくしてくれていた訳ではない。」としか思ってなかったが。
でも優しくされればされるほど期待は膨らんでしまった。私は単純だったから。振られた後、理由は年齢だけだと思い、すぐ飲み込めた。

でも今考えると違う。
確かに私はしつこかった。サークル引退も仕事も多忙な時期に、何も知らなかった私はかなり攻め込んでしまったのだ。その真実に気づいた時には遅かったし、確かにと思い、かなり後悔した。当時の私には彼氏がいたことがなかったし、好きな人はしばらくおらず、好きになった人と密接な関係になったのすら初めてだった。だから舞い上がっていた。大後悔だ。

そんなこんなで彼は元カノと復縁した。知ったのはその年のクリスマス。
微かに抱いていた希望は打ち砕かれた。完全に諦めた。新しく彼氏を作ろう、そう思えた。

この時点で私が諦めきれていたら、彼は今結婚していただろうし、私は何も考えずに彼氏と仲良く付き合うことができただろう。

でも、私は諦めきれなかった。そしてまた、彼も私を諦められていないんだろう。
だからずっと私たちは連絡を取り合っていて、お土産はかならず交換して、週に一回会って、たまにお泊まりするんでしょう。毎年の2人でのお誕生日会なんて、異性の10歳差の友達にするものなの?

彼にしっかりと振られたのは2回目の秋。
先輩2人を合わせて4人で彼の家に泊まったのは、ある日の夜だ。私は好きな彼とシングルベッドで寝た。それは初めて振られてからちょうど1年ぶりの家への訪問だった。先輩2人は床で寝ている。私はベッドの上で静かに頭を撫でられていた。次の日の朝は彼は早めに出て行き、私はシャワーを借り、彼の服を借りて家を出た。
その日、私は酔っ払ってその部屋に帰ってくる。昨晩共に寝たそのベッドに帰ってきて、隣にはもちろん彼がいる。勢いでひたすらに好きを伝えて、しっかりと振られた。はず。酔っ払っていてよく覚えていないのが、一つのミス。でも、何回も「ごめん。俺が悪い。」と謝られたのは覚えている。そして、背中を向け合って寝た。次の日、私はどうやって帰ったのか…そんなこと、悲しすぎたのか、何一つ覚えていない。

2回振られて終わってくれたらよかった。もう、そこから連絡すら取らない関係になることができたならどれだけ幸せだったか。
終わったはずの2回目の秋、早くもその1週間後には連絡が再開していた。例年のお誕生日会は約束だけしたがそのまま流れてしまったし、その年にそれ以降に2人で会った記憶は無いが、連絡だけは取り合っていた。

年が明ける。1ヶ月おきに泊まりに行く。キスはしない、添い寝とまでもいかない、ただ2人で寝るだけ。そんな日が半年、何度か訪れた。このあたりは「ただの友達というイメージなんだろうな」と思っていた。いちゃつきもしなかったから。でもよく考えてみれば、寝ぼけた彼に抱きつかれたり、マッサージしてあげていたり、先に家を出る時には布団をかけ直してくれていたりした。3月に1人目の彼氏と別れたことを報告した時の彼の笑顔を私はまだ忘れていない。だから「彼はきっといろいろと我慢していただけだ」、今となってはそう考えてしまう。いや、当時にも少し期待していた自分もいたのだろう。自分は物事を良い方面に捉えてしまう、悪い癖だ。

3回目の秋には初めてデートをする。がっつりデートとまでは言えないが。そして、終電を逃す。彼の家にタクシーで帰る。
その日は、初めて振られたあの日からの1年が嘘だったかのように、いちゃつき、キスをして、身体を重ねた。
まさかそんな日になるとは。その日の夜まで私は思ってもいなかった。そこから、数日、彼の家に泊まることになる。身体を重ねる日もあれば、前戯で終わる日もあり、添い寝で終わる日もあった。
「私のこと好きなの?」と聞いたら、「お互い相手がいるでしょ?」と返される。それは今でも変わらない。

しかし、そう簡単に物事は続かないものだった。その年はすぐに終わり、冬を超え、その次の夏までは数えるくらいしか家には行っていない。行っても、別で寝た日もあった。しても、添い寝。1度だけキスをした気もするが。でも、ほとんどの週に1回は私は彼と遊んでいた、記憶がある。

そして、今、4回目の秋が訪れた。私は22歳になった。
もちろん毎年の如く、なぜかこのシーズンになると、彼との距離が近づく。2人で終電から遊び、始発には乗らず、散歩をし、朝のサラリーマンと逆行して、混みすぎている通勤電車に乗って彼の家に帰った。
彼の家に行った私は、今までと変わらず彼と抱き合って寝てしまう。
私は自分の欲を最大限に抑えた。つもりだった。だって、3年前には自らが攻めすぎて振られていることを私は知っているのだから。
でも、そんな気持ちは知らずに、彼は私を強く抱きしめている。

「心臓爆発しちゃう。」

そう呟いて外方を向いた私を追って抱きしめてくる彼。そして、それにまんまと応えてしまう私。数えきれないくらいキスをした。いつも彼が起きる時間にセットされている目覚まし時計を止めて、強く抱きしめあった。

彼の腕の中は心地がいい。それは、誰の腕の中よりも。

「夜まで居ていいよ。」
そう彼は言って、私をベッドに寝かせて布団をかけて仕事に向かった。

私は夜まで彼の帰りを待ち、夕食を共にした。
そして、その日も彼の腕の中で眠ったのだった。

優しくされる度に彼に期待して、期待通りにならなければ失望。失望しないために期待しないようにするも、してしまうのが現実。少し近づいては、遠く離れてしまう。

「私は彼の何なのか。」
セックスだけをしている訳ではない、だからセフレではない。
週に一回遊ぶ仲?
ただの仲の良い後輩で済ませられる関係性でもないだろう。
仲の良い異性の友人にしては、連絡を取りすぎている気がする。

彼はそこらへんのクズと同じようには見えない。
それは自分より年を取っていることに期待しているからなのか、セックスをせずとも遊んでくれるからなのか。はたまた隣で寝ていてもセックスしない日々が続いていたからなのか。

私が彼に真意を問うことはいつまで経ってもできないのだ。

彼が私に連絡をする時どういう気持ちなのか。
会う前は何を思っているのか。
一緒に帰る時はどう思ってるの?私が素直に帰ってしまった時に見せるあの悲しそうな表情の答えはなに?
隣で寝る時に見せるあの表情。私の身体を触っている時のあの表情。微笑みながら私の目を見てキスしてくる、他のどの友人も知らないあの表情はなんなのさ。
「好きなんでしょ?」

彼の心の中を見ることができたらどれだけよかっただろう。
簡単に「好き」って彼の心底から聞けたらどれだけ幸せなのだろう。

4年も君に狂わされるとは思ってなかったよ。
君のものになりたいよ。なりたくてしょうがないのに。

「ねえ、早く教えてよ。私は貴方にとって何なのか。」

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