6. 「御注文のお品は
お揃いではないですか、足りないものはなんでしょうか」。
デザートになりたい。コース料理の最後を飾るデザート。
とあるフレンチシェフは言った。「デザートが、メインディッシュよりも目立ってどうする。メインディッシュよりもデザートで客のリアクションがいいだなんてことは許せない」。
なんという価値観。例えば、自分の本の裏表紙の裏の素材や色などを一切気にしないという小説家も、きっとたくさんいるのだろう。例えば例えば、どれだけ素敵な映画でも、気を抜いたところがあれば、それがましてやエンドロールであれば、それだけのものにしかなれないのに。
デザートは、歌劇の終わりの真っ赤な緞帳であり、特別な食事からあたたかい眠りへ、もしくは夢のような真夜中への同伴者だ。
デザートを欠くことのなきよう、寂しい夜が怖いならば。
(母と同じパティシエになることを夢みた10歳の女の子へ。わたしはいまでもデザートに憧れ、デザートになりたいまま。)