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『ふるあめりかに袖はぬらさじ』を観に行ってきました
ちび子が日本にいる時は日本でしかできない経験をさせるようにしています。
なので、私は歌舞伎のつもりで出かけたらなんと新派のお芝居。女性もたくさん出てきます。ああ、この歳にてこの程度の素養。お恥ずかしい。
しかも台詞が中心のこのお芝居、ちび子にいろいろ聞かれました。
「おいらんってその町のNo1のProstitute?」
「芸者と花魁の違いは?」
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「お園さん(芸者)と亀遊さん(花魁)はどっちが社会的地位は高いの?」「トージングチ(唐人口)ってなに?」
「日本人口と唐人口は社会的になんで違いがあるの?」
「なんで、日本人口と唐人口は互換性がないの?」
・・・。
なんとか、私なりに答えましたが、未だに自信がないのは遊郭においては芸者さんと花魁さんではどっちが社会的に偉いんでしょうか?芸を売る方?身体を売る方のトップ?
ペルーの黒船来航の時代なので、元号が沢山出てきます。
「安政〇〇年とか文久〇〇年って言っていたのは元号で、昭和とか平成とか令和と同じ意味。この安政の時代からママの家系のお墓があったよね。新潟(祖父の出身地)でみたでしょう?」
「ふうん・・」
(あんまり興味なし)
自分のルーツにも興味を持って欲しかったんだが、それにしても、多くの血や文化や国での経験が混じっているちび子だから、日本の開国時の混乱や未知への人や物への怖さ、それでも英語を覚えて新天地に密航する若者、残されて見送る女性・・なんかは自分の事を反映させながらも、楽しんだようでした。
それにしても、玉三郎さんって、立ち姿・存在感・舞姿等はどんな瞬間でも芸術作品みたいに思っていたのですが、役者さんなんですね。赤姫だけではなく、そつのない年増の芸者役のあの台詞回しにはびっくり。あの彫刻の様な方がこんなことまでできるんだ・・・。
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私は昔から、好きっていうよりも、女形の壮絶美に魅かれていて、それこそ小学生位の時に連れて来てもらった歌右衛門さんの政岡なんていまでも強烈な印象が残っているし、玉三郎さんも書かれたものやインタビューを見つけたら必ず読みます。で読む度に感じるんだけれども、当たり前だけど、世に溢れているタレントさんや俳優さんなんかと全然違って、歌舞伎界の方々は本当によく鍛錬されていると感じます。舞台・踊り・楽器だけではなく、よく勉強されていてその深い知識に基づいた独自の世界をお持ち。特に人間国宝格のこの方々、歌右衛門さんもそうだったし、玉三郎さんも。
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その玉三郎さんがご自身のサイトにこの作品について書かれているのでそれを引用しておきます。
~~
男が海外で勉強して英語も使う、そして女は「亀遊」として特別に象徴的な女性ということにされておりますが、日本に取り残されてゆくのです。この若い恋人同士がすれ違って行くというのも、根本的な世の中の男女の関係とも言えるのではないかと思うのです。
そこに、この「お園」と言う吉原から横浜まで流れてきた人生経験豊富で、口八丁手八丁で生きていきながら、この若い2人の恋人を見守り、しかもお客様を上手くこなし、時代を乗り切って生きつつ、真実を胸に秘めて生きているというところが有吉佐和子先生の人生そのものだったような気がするのです。
有吉先生は、強がっていながらも、実は繊細で沢山の愛情を持った目で人々を見ていたというように私は思えてなりません。
~~
うんん・・。
今でも異国情緒溢れる横浜、行くたびにどこか切なさを感じさせるのはきっと多くの人のこの様な人生劇がずっと繰り広げられてきたからなんだろうな。
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そういう繊細さを見事に文章に落とした有吉佐和子さん、それを舞台に蘇らせた玉三郎さん、それを皆胸の中の自分の半生に照らし合わせて受け止める観客一人一人。
玉三郎さん級が演じるとなると、もうその作品は観る側も巻き込んで、その一瞬一瞬に受取手側の中に独特の世界を作り上げていくんだなあ・・。これが人間国宝の芸術。
昔、歌右衛門さんでも感じだけれども、あと何回こんな素晴らしい経験が出来るのだろう?と考えると、歌舞伎のチケットって本当に安いものです。
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