地域活性化に関する概念の整理:まちづくり、街づくり、観光振興などの違い
ミミクリデザインのプロジェクトでは、人材育成や事業開発の案件であっても、間接的に「地域活性化」に関わることが少なくありません。
しかし地域を"活性化する"といっても、多様なアプローチが考えられ、関連するキーワードも「まちづくり」「都市開発」「観光振興」などさまざまです。
そこで、地域活性化に関するさまざまな論文や書籍のレビューを通して、これらの概念の相違や関係性について整理を行いました。
地域活性化とは何か
地域活性化・まちづくり・都市開発・観光まちづくりのうち、もっとも多くを包含した概念が「地域活性化」であると考えています。
地域活性化には大きく「社会的活性化」と「経済的活性化」という2つの目的があり、「まちづくり」「観光」「地域(都市)開発」「街づくり」「観光街づくり」などは社会的活性化を志すものなのか?経済的活性化を志すものなのか?という点で、スタンスが微妙に異なってきます。
経済的活性化とは、文字通り経済的にその地域(あるいはその地域の住民/その地域で生業を行う人)が潤うことを指しています。
社会的活性化とは、その地域に住む住民が地域活動に参加するようになったり、地域でのつながりがうまれたりと、経済的指標ではない形で地域が豊かになることを指しています。
その前提のもとで、ほかの用語についても見てみると
まちづくりとは何か
まちづくりは、その言葉が生まれた背景として、1960年頃の、国土開発計画や経済成長に伴う公害・住環境問題等に対するアンチテーゼとして、各地で用いられるようになった概念です。1960年代頃までに、こうしたいくつもの流れが存在し、1970年代初頭に「まちづくり」という1つの概念のもとで束ねられたと考えられています(佐藤, 2004)。
そういった背景もあり、社会的活性化を志す活動を指すことが多く、住民が主体であることを前提としています。上記で書いたような特性上、地域の内側に眼差しを向けることが多い概念です。
観光振興とは何か
一方で観光振興は、経済的活性化の志向が強い概念です。地域資源を掘り起こし、発信していくために地域の内側にも目をむける必要はありますが、主眼としては、その地域にどうやって外から人を呼び込むのかという点を考えることにあり、地域の外側に積極的に眼差しをむける必要のある概念です。
主体についても、観光業に携わる業者が主体となることが多いと思います。
観光まちづくりとは何か
そして近年になって、「観光まちづくり」という言葉もよく使われるようになりました。(図には記載していませんが、まちづくりと観光振興の重なる部分に位置づけられます)
この言葉は、「まちづくり」と「観光振興」との間にあるような概念で、「地域全体が主体となって、自然、文化歴史、産業、人材など、地域のあらゆる資源を生かすことによって、交流を振興し、活力あるまちを実現させるための活動」などと定義されます。
社会的活性化を志向するまちづくりと、経済的活性化を志向する観光とが一緒になって、まさに観光を通じた地域活性化(双方の活性化の包括概念)のようになっているところが特徴です。
言葉が新しいこともあり、比較的人によってイメージする姿が異なりますが、このあたりの言葉の意味付けの違いについての背景はこの論文などに詳しく書かれています。
地域(都市)開発/街づくりとはなにか
最後は「街づくり」です。「街づくり」はよく「まちづくり」とも対比的に語られることがある言葉で、地域のハード側面やインフラ側面の整備を指す言葉として使われます。地域開発(あるいは都市開発)とも近しい概念と捉えていいのではと思っています。
大規模にお金が動き、主体が開発に関わる業者や行政となるパターンが多いため、社会的活性化の志向が薄く、経済的活性化の志向が強く見えますが、施設設計に住民の意見を取り入れたり、その施設を通じて地域での新たなコラボレーションが生まれたりと、社会的活性化の側面も持っています。
と、ここまで地域をよりよくするという目的のもとで使われる概念をいくつか整理してみました。
とはいえ、実際こうした地域に根ざす、あるいは地域とも連動した活動をしてみると、その実践にはいくつもの目的や志向が混ざっていると思います。
関連するプロジェクト事例
例えば、ミミクリデザインで携わっている渋谷スクランブルスクエア15階の共創施設QWSについても、渋谷の一等地に「問う」ための施設をつくる、という点では[地域(都市)開発/街づくり]のようにも思えますが、渋谷という土地の特性なども加味して建てられた施設という点では[観光まちづくり]の側面も有しています。
そのほかにも、ミミクリデザインで担当した地域の案件で、地域活性化・まちづくり・都市開発・観光まちづくりなど織り交ぜてプロジェクトを行なっています。
よろしければいくつか事例掲載しておりますのでぜひご覧ください〜。
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