適応的課題に対するトリレンマ構造での記述の可能性について

月1の投稿を推奨するnoteのお知らせ機能に突き動かされて、生煮えなアイディアの話をしたいと思います。

コンサルティングの仕事に取り組むようになった四半世紀近く前に、漠然と考えていたこととして「最適化」は問題として難しいから「最大化/最小化」に変換して対処するというアプローチがどうやら世の中のスタンダードらしい、ということでした。より一般化するのであれば、計測/計算が可能な代理指標を設定してその値を手がかりに改善を模索するというやり方と言えるかもしれません。

その後、このような手法の限界と関連しそうな概念として、ハイフェッツによる「技術的問題」と「適応的課題」の分類と、マンデル=フレミングのトリレンマで知られる「トリレンマ」を知りました。これらの結びつきはまったく自明でも自然なものでもないですし、私の中でもまだ全然整理が出来ているものでもないのですが、この数年頭のどこかに引っかかり続けています。

簡単に用語の説明だけさせていただくと、「技術的問題(Technical Problems)」は明確に定義できる、既存の知識やスキルで対応可能な、解決可能な問題です。機械の修理などですね。対して「適応的課題(Adaptive Challenges)」は問題の定義自体が不明確で、解決策が未知であり、対応するには関係者の価値観や行動の変化が必要なものです。解決はもしかすると不可能で、解消の方向を目指さざるを得ないものと言えるかもしれません。組織文化の変革だとか、気候変動対策などの非常に困難な問題がこれにあたります。

また、トリレンマ(Trilemma)は文字通りジレンマ(Dilemma)を拡張したもので、3つの選択肢を同時に実現できない、という状況を表すものです。マンデル=フレミングのトリレンマは、国際金融の分野で、金融政策の独立性、自由な資本移動、為替レートの安全性の3つすべてを同時に求めることはできない、というものです。三体問題と同じく、ジレンマよりもバランスを取ること自体が難しくなっています。ジレンマであれば、スピードと安定性、コストと品質、など難しいながらも適当なバランスを求めるというのは一応の解を出せない問題ではない様に思えますし、組織的にその判断を委譲することにもそれほどの違和感はありません。しかし、トリレンマになるとその問いに答えることの難易度は一目瞭然です。わかりやすい最適バランスというものが存在するのかどうかもわかりません。

問題解決の世界においては、その問題に取り組んでいる当事者以外にはなかなかその困難さが伝わらない、というケースがあります。そのミッションを与えている上位者は技術的問題だと認識しているが、実際には適応的課題だったりするわけです。もちろん、当事者の方が勘違いをしていることもあります。上司は実は納期に関しては譲歩しても良いと考えているが、部下にそのまま伝えてしまうと期日まで先延ばしになってしまうと考えてそのことをあえて伏せている。すると限られた予算と必達の納期と最重要視されるべき(と本人が考えている)品質のうちのどれ一つとして譲歩できなくなってしまいどの選択肢も採択できなくなって詰む、なんてことはどこにでも転がっていそうな話です。

それが技術的問題なのか適応的課題なのか、という点について意見が食い違った時、それをトリレンマ構造で記述し、困難さを一目瞭然にすることで、適応的課題であることを示せるのではないか、と思うのです。まだ、なんとなくそういうことができるのではないか、と思っているだけの段階なのですが……

(IT畑の人間としては「問題」の方が「課題」よりも軽めの位置にあるのがちょっと居心地悪いんですよね。この用語)

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