第9回 即時型アレルギーと遅延型アレルギー(後編)
2024年2月27日
健康と美容、栄養、ウェルエイジングを専門としている内科美容皮膚科医 中島由美です。
前回は即時型アレルギーについて、今回は遅延型アレルギーについてお話しします。
即時型アレルギーはIgE抗体が関与し、原因となる食物を食べてから蕁麻疹などの症状が出るまでの時間が短いので原因を特定しやすいアレルギーです。
一方、遅延型アレルギーは、IgG抗体が関与し、数時間から数日後に症状が出現する食物アレルギーで即時型アレルギーとは全く異なるアレルギーです。
慢性疲労、慢性湿疹、肩こり、頭痛、めまい、うつなど多彩な症状を引き起こすのが特徴です。
慢性疲労や慢性湿疹など長期間症状で悩んでいる方には必ずお勧めするのが遅延型アレルギー検査です。(自由診療です)
遅延型フードアレルギーの原因でよく見られるのは、牛乳、小麦、卵白です。
診療をしていますとこの3つはほとんどの方に反応があり、また異常値上限の数値をはるかに超えていることも多く、体に合わないのに普段からよく摂取しているため数値が高いことが予測されます。ナッツや米など予想外の食品が反応していることもあり、自分では気づかずに反応がでる食品を食べ続けて体の不調を感じている方もいます。
関連する症状は以下のものがありますが、遅延型フードアレルギーがあるかもしれません。
・慢性疲労症候群
・朝が起きにくい
・アトピー性皮膚炎
・過敏性腸症候群
・肌荒れ、湿疹
・腹痛、下痢、便秘
・集中力低下、気分の落ち込み
・不妊
・むくみ
・体重増加
・冷え性
・肩こり
・めまい、しびれ
・頭痛
・不眠
・筋肉、関節の痛み
・喘息
正常な腸粘膜は細胞同士がっちり隙間なく並んでいますので、口腔内から入ってきた異物や抗原物質(アレルゲン)は腸の外に出ることなく便と一緒に排出されます。ところが、腸内環境が乱れると腸管粘膜の細胞と細胞の間に隙間ができ、その隙間から十分に分解されていない物質が腸管の外に漏れてしまします。このような状態を「腸管漏出症候群(リーキーガット)」と言います。リーキーガットの状態では、腸管外に漏れ出た物質に身体が異常事態と判断してアレルギー反応を起こします。これが「遅延型フードアレルギー」の原因です。
遅延型フードアレルギー検査をして多項目にわたり反応している時は、逆にリーキーガットの状態を疑い腸の炎症を取る治療を一緒にする場合もあります。
遅延型フードアレルギー検査で高度に反応してる食品は、半年ほどキッパリ食べるのをやめると身体が軽く楽になる感じを覚えます。半年後もなるべく高度に反応した食品は摂取しないように気をつけていきます。中程度反応している食品は4日に1回なら摂取してもこれ以上悪くないと言われています。反応が低度の食品は問題なく摂取しても良いとされます。
いつも肌の荒れる患者さんに遅延型アレルギー検査を行い、多項目にわたり反応していたことがありました。中でも高反応だった小麦、牛乳、卵を避ける生活を3ヶ月行ってもらったところ(最初は半信半疑)、顔の吹き出物は減り、全身倦怠感や不眠も解消しました。小麦を少し食べるとすぐに反応して肌が荒れることもご自身で体験、理解されていきました。現在この方は、腸の炎症を取る治療も行い、ご自分の身体と皮膚をコントロールできるようになりました。
遅延型アレルギー検査や、腸の炎症を取る治療は限られた医療機関でしか行えません。
ネットで検索してぜひご自分の体調を整え、心地よいウェルエイジングな生活を送って頂きたいと思います。