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看護師から八百屋のバイトへと転身

ここでバイトさせてください!
この春、看護師を辞めると決めていた私は、
惚れ込んだ八百屋さんの、大将に直談判した。


今は八百屋でバイトを始めて2ヶ月。
今までとまったく違う世界観に暮らしている。
収入は以前の半分以下だ。
でも、私は毎日が楽しくて仕方ない。


バイトを申し込んだ時、
実はあっさりと断られた。
今は人が足りているからと。

家族経営の個人店なんだから
至極当然の理由だった。

でもどうしてそんなに八百屋で働きたいの?
大将の素朴な疑問に私は
野菜への熱い思いを語った。

「引っ越してくる前は、
採れたての野菜が身近にあって
いつでも簡単に手に入った。
そして食べるのも好きだけれど
私は新鮮な野菜を見ていると
それだけでテンションが上がってくる。

でも引っ越してきてからというもの
そういう場所が見当たらず
私はあちこち、さまよっていた。
そしてついに隣の駅のここにたどり着き、
ここの野菜とここの店が好きになった。

もうやめるけど今までの仕事が
自然とはかけ離れている環境だったから
これからは自然に近い環境にいたい。
ここで活き活きとした野菜に囲まれたら
すごくエネルギーをもらえる気がする!」

そういうことを語りながら
自分の熱さに気恥ずかしくなったけれど、
そこは野菜を愛するもの同士
大将はそうかそうか、と頷いて
最後まで聴いてくれた。


断られたとて、私はそこの野菜が好きだから
それからも八百屋には通っていた。

するとある日、ついに大将から
店舗を拡げることになったからと
バイトの声がかかったのだ。

やったー!
私は文字通り小躍りして
めでたく野菜に囲まれる生活が始まった。


大将は私にこう聞く。
今までの仕事に比べたら簡単なもんでしょ?

この質問への答えはちょっと考えた。
簡単と言えば簡単だ。
覚えることは格段に少ないし単純なのだから。

でも、長く商売している人に対して
ど素人が”簡単です”なんて言ったら失礼極まりない。


それにバイトとは言え、私には初の商売体験だ。
売り上げへの貢献や利益率、
そういう教わらないことも
ちゃんと考えながらやろうと思うと
接客だって袋詰めだって
真剣勝負だ。

だから、
「初めてのことだらけで簡単ではない。」
それが大将への回答だ。


それにしても、
ここは心が温かくなる。

大将はじめお店の関係者。
常連のお客さん。
みんなここの野菜が大好きだという
明るい共通項で繋がっている。

そういうところに身を置いてみて
気がついた。
忖度、妬み、疑う、苦情、法律。
そういうフィルターがここにはない。

そして実は一番大きい変化はこれ。
、、命に関わる判断をしなくていい。

なんとも気が楽になった私は
今日もお客さんと
調理法談義をしたりする。

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