くまモンに学ぶ仕事の流儀(13)転んでもタダでは起きない
第4章 震災のあと
その2 転んでもタダでは起きない
実は、震災があった時、私はくまモンの復活を信じていただけでなく、これを機に、熊本県はさらなる快進撃を見せるだろうと予想していました。
全国から熊本への関心が集まることに加え、蒲島知事を中心とした県庁の結束力やデザイン思考が機能すれば、まさに「ピンチをチャンスに」するだろう、と思ったのです。
その予測はどうやら当たっていました。
震災後は、復興支援として各地で応援フェアが行われたり、熊本県産品が積極的に採用されたのはもちろんですが、特に目覚しかったのは、やはりくまモンの動きでした。
全国各地の都道府県、団体などが熊本を支援してくれたことに対して「ありがとうだモン」とお礼行脚を開始。
半年間で46都道府県を訪問するとともに、例えばJリーグとは全53チームとコラボグッズを展開、他にも、私が遭遇しただけでも相撲、ラグビー、落語などのイベントに登場しました。
行く先々で、くまモンが来るならばと知事や会長自らが登場し、その地域を代表するゆるキャラも同席したので、当然メディアも取り上げます。
その都度「お礼として熊本名産の●●をプレゼント」などと報道されるのでどこまでも抜け目がない。
最終的には日本外国特派員協会での記者会見まで開いてしまいました。
なかでも驚いたのは、(少々マニアックですが)落語3団体とのコラボです。
落語の団体は、主に「落語協会」「落語芸術協会」「上方落語協会」と3つあり、所属する噺家同士は交流があるものの、基本的な運営はそれぞれが行います。
ところが、今回はじめてこの3団体が合同でコラボグッズを販売しました。
古い体質の残る伝統芸能の垣根さえも超えてしまったことに関心を超えて、畏怖すら感じました。
ここまでくると、誰もが自分の地元や趣味のジャンルなど、どこかしらでくまモンに遭遇することになります。
実際に、周りでも急速にくまモンの話題を聞くことが増えましたし、明らかに好感度もあがった感触があります。
▶︎本日のポイント
ありふれた表現ですが、震災から現在に至る流れは、「ピンチをチャンスに」「転んでもただでは起きない」という精神でしょうか。
もちろん、それまで地道な活動と、築き上げた土台があってのことですが、全国から視線が集まるこのタイミングに、いかに熊本に注目してもらい、平時にはできないことを実現するか。
その発想は、なによりも被災した人たちを元気にします。
振り返れば誕生から10年弱。
最初は誰も知らない存在だったところから、調子がでてきた矢先の震災。
気を取り直して地道に活動し続け、絶好調を迎えていたところでまたも震災。
それでも力強く立ち上がり、より一層の快進撃を突き進むくまモン...。
その折々に、なるほど!と思うような仕事の流儀が隠されていました。
現在、2度目の震災を経て、その提案力、コミュニケーション力、フットワークはますます磨きがかかっています。
これからなにをしでかしてくれるのか、楽しみでも恐ろしくもありますが、また学べることがたくさんあるだろう、ということを私は期待しながら見守っていきたいです。