「三文オペラ」の劇中歌の一節(フリーダ・カーロの日記#7)
Stamp from the former East Germany depicting Brecht
and a scene from his Life of Galileo
フリーダ・カーロは、日記の中で、ドイツ人劇作家ベルトルト・ブレヒトの戯曲『三文オペラ』にある劇中歌「マック・ザ・ナイフ」の歌詞の一部を、ドイツ語で書き写しています。
『三文オペラ(原題:Die Dreigroschenoper)』は、ざっくりまとめると…
1900年頃のロンドンのスラム街を舞台に、盗賊団のボスで色男のメッキー・メッサーが複数の女性との関係の中で逮捕と逃亡を繰り返し、終いには死刑宣告と思いきや、最後の土壇場で恩赦が下り、さらには貴族にまでなってしまうという超ハッピーエンドのストーリー。資本主義社会やブルジョア道徳を痛烈に風刺した作品とも言われています。
フリーダはブルジョワを嫌い、メキシコの大衆芸術に価値を見出した画家でした。大衆演劇を好んでいたため、お気に入りの作品であったのかもしれません。フリーダの父方の家系がドイツ人であったこともあって、一層愛着が湧く作品であったのかも…。前に少し触れましたが、当時のメキシコは、大衆テントで様々な風刺の寸劇が上映され、有名な喜劇役者が数多く誕生した時代でした。
メキシコの作家カルロス・フエンテスは、『フリーダ・カーロの日記』の初版本のプロローグの中でこう書いています。
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これを読むと、フリーダが大衆芸術に惹かれる理由が分かる気がします。大衆芸術とのつながりは、彼女の幼少期の病や事故に起因するところがあるからだと。
劇中歌の『メッキー・メッサーのモリタート』は、後に『マック・ザ・ナイフ』として、ジャズのスタンダード・ナンバーになりました。
日本では、なんと美空ひばりさんが「匕首(あいくち)マッキー」と題して歌っていました。
『三文オペラ』の書籍は、時代や訳者によってさまざま。読み比べてみると面白いかもしれません。