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続・優先順位の話

財政課は、予算編成の中で、具体的には予算要求調書を受け取って以降は個々の施策事業の優先順位付けはしません。
予算編成が始まる前に示される「予算編成方針」を定めるなかで、すでに優先順位付けは終わっているのです、と前回書きました。

予算編成方針って皆さん読んだことありますかね。
福岡市では予算だけでなく、組織機構整備すなわち人的資源配分の方針も合わせ「市政取組方針」として毎年10月頃に示されています。
国でも各省庁が予算編成を始める前に総理大臣が「骨太の方針」って示しますよね。
次年度、特に重点的に取り組んでいく施策分野を省庁横断的に示す、あれの自治体版みたいな感じだと思ってもらえれば結構です。

通常、予算編成方針では、次年度の予算編成や機構整備に向け、マスタープランや首長の公約に掲げられた各施策の進捗状況を把握するとともに、社会経済状況や国の施策等の変化によって新たに取り組むべき緊急性や重要性が増している課題や事業分野に関して、自治体として取り組む優先順位を上げて予算や人的資源を充てていくことを方針として掲げており、その策定にあたっては福岡市ではマスタープランを担当する企画部門において中心的な作業を行っています。

この間、財政課は企画部門の作業に並行して、次年度の予算編成の前提となる収入や主な支出の見通しを元に新規事業や重点分野などにどのくらいの財源を充てることができるかを試算しますが、新たな施策に必要な財源を確保するには既存の施策事業の見直しを行って財源をねん出する必要があり、このため予算編成において既存事業の予算要求に上限を設けることがあります。(これを「シーリング」と言います。詳しくは別稿でいずれお話することになりますが今日は紙面の都合で端折りますね。すいません。)

予算編成方針を策定するうえでは、福岡市の場合このシーリングの幅を決め、新規・重点事業にどのくらい予算をかけることができるかの見通しを立てるのが財政課の仕事、そこで確保した財源を重点投資する分野を決めるのが企画部門ということになります。
ということで、施策事業の優先順位を決めているのは企画部門です。
もし、自分の所属でやりたいことの優先順位に不満があるのであれば、企画部門に怒鳴り込んでいってください(笑)

という冗談は抜きにして、現場の皆さんは、企画部門とは十分に対話を重ねましょう。
自治体の長期構想、基本計画を所管し、施策を組織横断的に調整して自治体運営の舵取りをするのが企画部門の仕事ですが、個々の施策事業の現状や課題をすべてつぶさに把握できているわけでもないので、現場で起こっている現状や生の声を時々届けてあげると彼らも判断しやすいと思います。

一方、現場にいる職員の多くが自分の担当業務以外の施策事業を知る機会がなく、また自治体が置かれた外部環境の変化についても情報を持ちません。
自分の業務しか知らなければ、企画部門が何を比較し、どう全体を見渡して優先順位を決めたのかはわかりませんので、企画部門が決めた予算編成方針に掲げられた優先順位付けに納得し、自治体全体の方向性の中で自分の持ち場を守っていくことができるようになるには、企画部門と現場との情報の「共有」、自治体の置かれている環境やポテンシャルへの危機感、期待感の「共感」、そして企画や財政部門と現場とがそれぞれの持ち場で分担と連携を果たす「共働」が必要なのだと強く思います。
予算編成における優先順位付けについて、疑問や不満が出てくるということは、この部分でのコミュニケーションをもっと密にしていくことが求められていると思います。

ところで、マスタープランや公約に掲げられていなくても、企画部門に頼らなくても、自分のやりたいことの優先順位を上げる方法があるのをご存知ですか?
それは意外に簡単です。
今、自分の職場が担当している既存施策と新しく取り組みたいこととのバーターであれば、自分の職場の裁量で優先順位を上げることができます。
新しい取り組みのほうが今やっている取り組みよりも優先順位が高いのであれば、新しいことをやる財源を生み出すために今やっていることを見直し、その財源を振り向けてみてはいかがでしょうか。

自分個人で難しければ係単位で、係単位でダメなら課単位、部単位で。
その分話し合う相手は増えますが、企画部門で全市的な見地から重要だと位置づけてもらうよりもかなり簡単ですし、自分の抱えている現場の現状を普段から職場で共有できていれば、「それ、大事だよね」と言ってもらえる可能性はずっと高いのではないでしょうか。

同じ分野の業務を担当している課単位、部単位だからこそ、自分たちの抱えている課題や目標を常に共有しやすく、同じ価値観でより大切なものを選び取っていくことができる。
私が本の中で提唱している「自律経営」は、この考え方をベースにしています。
「自律経営」や「枠予算」の話は、またいずれ時間を取ってお話させていただきますね。

★「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」について
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