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優先順位の話

全国を巡る出張財政出前講座で「今日聞きたいことは何ですか」と会場に問いかけると必ず出てくるのが「優先順位」の話。
予算要求が通るものと通らないものの違いを知りたい、どのような優先順位付けが行われているのか知りたい、誰が順位付けをしているのか知りたい、などなど、アイツのところには予算がたくさんついて、自分のところにはつかないというのが気に食わない方がたくさんおられるようです。

はっきり言いましょう。
財政課は、少なくとも予算編成の過程では、施策事業の優先順位付けを行うことはありません!

・・・どよめきが聞こえます(笑)
「何言ってるのかよくわからない」というツッコミも聞こえます(^_^メ)
しかし、本当です。私は係長5年、課長4年、計9回福岡市の当初予算編成を行いましたが、その中で施策や事業の優先順位をつけて予算計上の可否や金額の多寡を判断したことはありません。

では、財政課は予算査定の中で何を判断しているのでしょうか。
また、結果的に予算がついたりつかなかったりしているのは、優先順位付けの結果ではないのでしょうか。
優先順位付けの結果だとしたら、いつ誰がどこで判断しているのでしょうか。

まず、財政課の査定の話をします。
予算編成が始まると、各部各課からあれもしたいこれもしたいとたくさんの予算要求調書が上がってきます。
この中から、予算をつける、つけないの判断をしていくのが「査定」なのですが、私が9年間の予算編成で常にやってきたことは「個別撃破」。

たくさんの予算要求を並べて見比べ、優先順位をつけるという作業ではなく、一つ一つの事業の目的、内容、目指す成果、費用などを吟味し、必要性や緊急性、行政関与の妥当性、手法の実現可能性、費用対効果などを詰めていき、この事業に予算を計上すべきか、するとしたらどの部分の金額をどの程度認めるか、ということを考え、金額を決めていきます。
そこには他の施策事業との優劣を比較し、優先順位付けをしていくというプロセスはありません。
予算がつくものとつかないものの差は、その事業同士の優先順位の高低ではなく、あくまでもそれぞれの予算要求の内容が予算を計上するにふさわしいかどうか個別具体に判断した結果でしかないということなのです。

そうはいっても、自治体全体で見れば、より力を入れようとしている分野、より市民が求めている施策事業にたくさん予算がつき、優先的にしっかり取り組むようになっていなければおかしいですよね。
では、自治体が取り組む施策や事業の優先順位はいつどこで決めているのでしょうか。

それは第一にはマスタープラン、総合計画、基本計画です。
今後5年、10年、15年先の未来を見据え、自分たちのまちがどうありたいか、そのために何を重点的に取り組んでいかなければいけないか、を市民、議会、行政、有識者など様々な人の声を聴き、みんなで考え、みんなで決めたまちの将来像。この実現こそが自治体にとって最も優先すべきことであり、その実現に向けた具体的な取り組みには優先的に財源を配分する必要があります。

第二に、首長が選挙で掲げた公約です。
これもマスタープランに似たところがありますが、マスタープランに掲げていなくても、首長が選挙で掲げ、その実現を期待して票を投じた公約については、マスタープランと同様に優先的に実現を図っていく必要があります。

第三に、各年度の予算編成にあたって、通常は首長から出される依命通達「予算編成方針」です。
これは、マスタープランや首長の公約も含め、その年度の予算編成において限られた財源を真に必要な施策事業に割り当てていくための、いわば実施方針ですが、災害対応や国の施策に連動した緊急かつ重要な取り組みなど、突発的に優先順位を高める必要がある施策事業についても、優先的に予算を配分することが定められ、通知されることになります。

各現場でやりたい施策事業が、自治体全体でどういう優先順位付けになっているのかは、各年度の予算編成方針を見ればわかるはずです。
そこには、マスタープランに掲げた重点的な取り組み、首長の公約など、優先的に取り組むべきものが列記され、その実現に向け優先順位が高いものへの財源の重点配分や、その財源を確保するための既存事業の見直しなどが予算編成の具体的な手法としてすでに示されているはずなのです。

財政課は、予算編成の中で、具体的には予算要求調書を受け取ってから個々の施策事業の優先順位付けはしません。
予算編成が始まる前に、すでに優先順位付けは終わっているのです。
そういう意味で、予算がつく、つかないの最終結果は、予算編成方針の通達以前にどこかで議論されあらかじめ定められた優先順位づけに左右されていると言えるでしょう。
では、各年度に示される予算編成方針とは誰がどうやって定めているのか。
自分のやりたいことの優先順位を上げるにはどうすればいいのか。
以降は次稿でお示ししたいと思います。

★「自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?」について
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