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率先垂範ではなく

マイナンバーカード交付申請
臨時窓口作ったけど誰も来ないの
手続きも簡単で待ち時間もないし
カード作ればいろいろ便利なのに
コマーシャルがまだ足りないのかな
#ジブリで学ぶ自治体財政

お恥ずかしい話ですが先日ついにマイナンバーカードの交付を申請しました。
スマホでわずか1分程度の操作(というほどのものでもない)で申請は終了。
2週間ほどでハガキが届き,あとは受け取るだけとのこと。
区役所は混むんだろうと半休取得を覚悟しましたが,事前予約可能な受け取り窓口が準備されており,昼休みの間で受け取ることができそうです。
こんなに簡単な手続きなのになぜ今の今まで未申請だったのかとさえ思います。
今回交付を受けようと思ったのはコロナ禍での外出や旅行,イベント参加の際にワクチン接種証明を持ち歩きたかったからで,マイナンバーカードの交付を受けていれば接種証明をスマホに搭載できるアプリがあるとのことだったので,今回夫婦そろって交付を受けたというわけですが,これまでも確定申告に便利だとかマイナポイントが付与されるとかいろんなインセンティブがあったのに交付申請に至らなかったのは,実は住基カードで一度苦い経験をしたからです。

住基カードについては,市の職員として国や自治体が推奨しているものはきちんと交付を受けなければ,と思いかなり率先して交付を受けました。
当時はカードを持つメリットがほとんどなく,自分が享受できる唯一のメリット(と私が認識していた)だった確定申告のオンライン申請は,わざわざカードリーダーを購入(代金分として5000円が税額控除)して自宅PCから手続きに臨んだものの自分自身のICTリテラシーの乏しさと当時のオンライン申請窓口の使いづらさから初年度に窓口手続きの数倍の時間と労力がかかってしまったため2年目以降利用せずそのまま失効してしまったという苦い過去があります。
このため,マイナンバーカードもまた同じ目にあわされるのではないか,もっと簡単に交付が受けられ,もっと確実にメリットを享受できるようになるまで待とう,と思ってしまったのです。

今回行った交付申請手続きは想像に比べ格段の手軽さで,これまでの関係者の努力の積み重ねを感じました。
活用の機会はまだそう多くはありませんが,少なくとも自分たちが必要としているワクチン接種証明に活用できるというだけでも今までよりは進歩です。
カードを使った確定申告はまだしていませんが,周囲の方の話だと相当楽だという話なので,これも技術的進歩があったと理解しています。
また,このコロナ禍で新たに需要が生じている,窓口接触を避けるオンライン申請の機会も今後増えるでしょうし,デジタル庁の音頭取りで行政が保有する各種データの連携を使った新たなサービス提供など,マイナンバーの活用そのものも増えていくでしょう。
カード交付を受けることとなった自分としてはもっと日常生活で活用できる場面が増えてほしいと思いますし,行政実務に携わる者としてはマイナンバーが活用されることによる業務の省力化やサービスの高付加価値化が進んでほしいと思います。

国や地方自治体では職員に対してマイナンバーカードの取得を推奨しています。
国,自治体が国民,市民に対して取得するよう推奨しているのだから,そこで働く公務員として率先垂範すべきということなのですが,今回改めてこの「一般市民の模範となるための取得推奨」について少し疑問を感じました。
たぶんどこの自治体でも職員のカード取得率を調査し,未取得者に対して働きかけが行われていると思いますが,「公務員だから」という理由で取得させても,その姿を模範として一般市民が追従するでしょうか。
カードを取得した本人が「便利だ」「手続きが楽だ」といった実質的な理由を見出し,そのことを発信しなければ公務員以外の取得率向上には寄与しません。
職員向けにカード取得をアナウンスするのであれば,同じ公務員同士だから率直な意見を伺いやすいという距離感を利用し「なぜ取得しないのか」を聴取してその障壁を取り除くとか,すでに取得した職員に,取得に至った最終的な動機付けや手続き,利便性への満足度を聴取し,未取得者への推奨に活用するなど,公務員を対象としてテストマーケティングを行い,そこで得た情報を活用して一般市民向けにサービスの改良を進めるほうが効果的なのではないでしょうか。

ひとりの公務員としても,模範を示す「率先垂範」ではなく,先に試してみて評価を述べるテストモニターの役割を果たすことができます。
公務員はその職務を通じて一定程度の行政リテラシーを培っており,行政の行う施策事業の企画された意図を広報資料や報道から読み取って理解する能力を持っています。
また,エンドユーザーとして手続きの簡便さ(あるいは煩雑さ)やサービスの品質について評価できる立場も兼ね備えており,行政サービスの評価者として率直な意見を聴きやすい立ち位置にいます。
公務員が読んでわからない広報資料が一般市民にわかるわけがない。
公務員ですら面倒な手続きを一般市民が苦痛に思わないわけがない。
公務員がその意義を感じないサービスを一般市民が好んで利用するわけがないのです。
自分の担当する仕事を市民に説明する資料や説明方法を顧みてわかりにくい点がないか,違うフロアの職場の職員にチェックしてもらう。
自分が受けた行政サービスに疑問点や不備な部分があれば担当課に伝え,改善に役立ててもらう。
公務員は,行政サービスの提供において覆面調査員として互いにモニタリングを行い,その良し悪しを伝えあうことで,それぞれのサービスをよりよく磨き上げていくことができる存在であり,そのことを互いに意識し合うべきなのだと改めて思った次第です。

私が何度もここで述べている「行政運営リテラシー」も同じこと。
財政や法令,行政組織,議会など,国や地方自治体の組織運営の基本となるルールやその実態も,そこで働く職員がわかっていないのに一般市民がわかるはずがない。
まずは公務員同士で互いの仕事に興味を持ち,理解しあおうと心がけること。
その過程で,わかりにくいこと,使いにくいものがあれば,一般市民に代わって担当に伝えること。
そうするだけで,それぞれの業務に対する市民理解が進みやすくなり,それぞれの仕事がやりやすくなるはずです。
市民にとってわかりにくい「財政」というテーマも同じことですよね。

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https://note.com/yumifumi69/n/ndcb55df1912a
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
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★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
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