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学び合う仲間たち

御市の財政健全化の取り組みについて
教えていただきたいことがあります
つきましては私どもの町の財政課長に
就任いただけますでしょうか
#ジブリで学ぶ自治体財政
 
また地方公務員のなり手が減っているという話です。
いよいよ人口減少が公務員業界そのものの存続を危うくしていることが顕在化してきました。

人口減少社会が進展する中で、民間企業との、あるいは自治体間の人材確保の闘いに勝者はいません。
地方公務員の仕事の魅力そのものをきちんと伝え、意気に感じてもらうことで志望者を増やすといっても、待遇や働きやすさで人材獲得を競い合ったとしても、少子化で受験者の母数が減る中では限界があり、最後は人材を確保できる範囲内での業務縮小に舵を切らなければならないと私は考えています。

 先日の投稿では、人口減少社会の行きつく先として描かれる、縮小した未来に応じた業務範囲、サービスレベルへの縮小を念頭に、私たちが当たり前のようにやっている業務を見直していくことを提唱していましたが、その前に私たちにはやるべきことがあります。
それは私たち公務員一人ひとりの、そして組織としての能力開発です。
私たちはもっともっと自分の持っている能力を伸ばし、それを組織的に発揮させることができるのではないでしょうか。
今は眠っている職員の能力開発と発揮によって業務の省力化、効率化を図り、人口減少による人材不足に直面する危機を少しでも先延ばしすることができるのではないでしょうか。
 
1700もの地方自治体が法令に定められた同一業務をエリアごとに分担している我が業界では、自治体の大きさは異なりますが、市民窓口、税務、福祉、教育、まちづくりなど、分野ごとに同じ業務に携わる組織、職員が全国にいて、互いに情報交換しながら研鑽しあい、それぞれのエリアでの業務の均質化や向上を図っています。
公務として自治体同士の情報交換の場が設けられている場合もありますが、最近よく目にするのは公務員同士のプライベートな関係性として、互いの情報を出し合い、尋ね合い、高め合う勉強会、自主研究グループの手合いです。
首都圏や東北、九州など、地域単位で地方公務員を中心とした街づくりに携わる人材の交流・研鑽の場が設けられていますが、そこでの出会いや学びが参加者それぞれの自己啓発の場となるだけでなく、そこで得た気づきや学び、あるいはネットワークを持ち帰り日々の業務に生かすということも盛んに行われています。
私も、かつて福岡市の財政を預かる立場だった経験を活かして自治体財政の何たるかを語り、よりよい財政運営の手法について同業者で研鑽しあうための「出張財政出前講座」をここ10年の間全国各地に出講しています。
 
最近では、オンラインでのネットワーキングも盛んになりました。
各地域、分野での活動がネットなどで共有できる時代になったことで、それぞれの分野での先駆者や先進事例を見つけやすくなり、また共通の悩みを持つ同業者での勉強会などのグループをつくりやすくなりました。
こうして全国に張り巡らされた情報網を駆使し、多くの公務員が距離や時間を超えて他の自治体での先進事例やノウハウを共有しています。
共通の課題を一緒に考え、得られた知見をそれぞれの現場に生かすことで、個々の自治体で行う調査検討や議論をより効率的に進め、多面的に深めることができる関係性を活かし、最近ではDXや窓口改革などの分野でそうした公務員同士の公私を問わぬ連携が公的な役割を帯び始めています。
公務であろうとプライベートであろうと、全国で同じ業務を行っている公務員同士がそれぞれの知識経験を集合知として共有することが進めば、私たちの公務ははるかに良質で生産性の高いものになる、その可能性を常々感じています。
 
そんな中、先日参加したオンラインイベントで目からうろこが落ちました。
そのイベントでは、先進地への行政視察にまつわるよもやま話を題材として「こんな視察は嫌だ」「こんな視察はうまくいく」といった視点で視察に行く場合の心がけや視察を受け入れる際の工夫などを共有したのですが、窓口改革の分野での先駆的な取り組みで視察希望が殺到しているある自治体では、複数の団体の視察日程をひとつにまとめ、共通の課題を抱える団体同士のネットワーキングの場をその視察日程の中に盛り込んで提供しているというのです。
これならば当該市の先駆的なノウハウの移転が効率的に行われるだけでなく、その課題に取り組もうとする意欲的な自治体の担当者同士が出会い、共に学び、その成果を同時期にそれぞれ持ち帰って生かそうとする、その過程での横連携が可能になり、互いを意識した切磋琢磨により課題解決手法のレベルが上がり、さらにそうしたネットワークが維持拡大されることでその分野の改革の集合知化が進み、イノベーションがさらに進むことが期待できます。
公務での行政視察ではあまり聞いたことがないタイプの視察受入れスタイルをこの市が採ることにより、視察参加者にとっては知見の取得だけではなく他団体との情報網まで入手できる、一石二鳥の取り組みだと驚き感心した次第です。
 
人材不足時代を見据えた職員、組織の能力開発といえば何やら難しそうに聞こえますが、要は互いの「学び合い」「教え合い」です。
営利追求を目的に他を出し抜くために自社のノウハウを隠し通さなければならない民間企業とは異なり、一つの先進的なノウハウをみんなで共有し、学び合い、磨き合い、高め合っていくことが当たり前の行政組織だからこそできる、自治体業界全体での人材育成、能力開発。
私たちはこの「学び合い」の価値、効用にもっと目を向け、自治体組織として活用する道を探らなければならないと思います。
そのためには先ほどご紹介したような情報共有機会としての行政視察の活性化と活用促進も当然ですが、講師招聘によるノウハウ移転にももっと目を向けるべきでしょう。
現役の公務員が他の自治体の研修講師として招かれ先進事例のノウハウ移転を行う例も数多くありますが、出講する講師の側は公務として位置づけられず、休暇をとって個人のプライベートな取り組みとしておこなわれており、視察の受け入れ対応であれば同じノウハウ移転でも公務として扱われることと比べると不整合な感じもします。
また職員に蓄積したノウハウの多くはその職場から異動した後には活用する機会が極めて少なく、私のように異動後もかつての職場で培った知見を出講等でノウハウ移転するような事例はまだまだ数が少ないように思います。
 
勉強会や情報交換会といったフラットなものから、視察や講師招聘といったノウハウの移転を目的とした機会創出まで、「学び合い」には様々な手法がありますが私たちはうまく活用できているでしょうか。
私たち自身に眠る経験という資産は、眠らせればやがて消えゆく思い出話にしかなりませんが、集合知として追体験することで歴史の蓄積となり、個人の学習時間短縮だけでなく、新たな価値創造に至るイノベーションの土壌ともなりうる貴重な資源として生かすことが可能です。
これから先に各自治体が抱える人材難のなかで自治体職員同士での学び合い、教え合いの価値が認識され、自治体職員それぞれの中に眠る宝を発掘し活用しやすくする仕組みや制度と、そこで活躍することを喜べる風土、そしてその活動を支えるインセンティブが整うことに期待したいと思います。
 
★2018年12月『自治体の“台所”事情“財政が厳しい”ってどういうこと?』という本を書きました。
https://shop.gyosei.jp/products/detail/9885
 
★2021年6月『「対話」で変える公務員の仕事~自治体職員の「対話力」が未来を拓く』という本を書きました。
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/
 
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