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COLORS

こひびとは約束どほり埋めてきた紅い花だけ咲いてゐる野に

ひとりきり珈琲をのむために湯を沸かすよ青いほのほ点して

夢の中のくらい道のりいつまでも黄色い蝶が(ついてこないで)

むごいほどかがやく緑さいいしよから生まれなければよかつたなんて

聴きなさい 誰も知らない森にある深い緑の群青色を

風は吹く行つてしまつた人たちの白い言葉を伝へるために

黒鍵にふれる指先あのひとの耳をなぞつた日を思ひ出す

あなたとの薔薇色だつた毎日の壊れやすくて、こはしましたよ

ほんたうに失ふときだ失つたことの痛みを忘れるときが

だから、さう、覚えておかう茶色い目、すこしゆがんだうすいくちびる

紫の手袋をして会つたのは秋深き日のある橋のうへ

愁ひなどないふりをして分けあつたアプリコットのアイスクリーム

もう居ないあなたの声はつめたくて月長石の色をしてゐる

異国語で色の名前を言ふやうに呼んでみたけど届かなかつた

あれは何あれは虹です葬つたわたしの恋のはかない墓標


※第19回髙瀨賞(2020年)応募作品


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