産科医療の専門家がクリニックで出産した結果【前編】~どうやって選ぼうか~
私は無痛分娩に携わる麻酔科医です。
1年以上の不妊治療を経て、妊娠することができました。
不妊治療は私なりに苦しいものだったので、
妊娠経過中不安は大きかったのですが、
今月無事出産に至りました。
妊娠期間中も、巷では産科医療の安全性、
特に、いかに産科医療の専門家が日々神経を使っているかについて
議論が繰り広げられていました。
そんな中、私は産科医療にかかわる専門家でありながら
クリニックでの出産を選択しました。
医療従事者の中には、お産は命がけだ、
だから知識を持った人なら機能の充実した病院を選ぶべきだ
という意見を持つ人が少なくありません。
現に私も「クリニックでお産をする」というと
「大丈夫ですか?」と心配されたり渋い顔をされたりすることがありました。
この記事では、お産をする病院をどのように選んだのか、
これからどこでお産を使用かと迷っている方にも参考にしてもらえるよう、
私の選択に際した思考回路を紹介します。
私自身もお産に携わる身として非常に学びになりました。
分娩施設は機能により分類される
そもそも分娩施設には、
周産期医療センター
地域周産期医療センター
地域の医療施設
などがあり、受け入れ可能な人数や妊娠週数、
ICU・NICUの設備など機能により
認定されて分類されます。
地域ごとにそれぞれが連携をとりながら産科医療体制を支えます。
全ての人が高次機能病院で産もうと考えた場合、
本当にリスクの高い人が高次機能病院で産めないという
事態が発生する可能性もあります。
地域ごとにうまくバランスをとりながら
体制を支えるべきですが、出生数が減少している現在、
お産を取り扱う施設の減少もあり、
かつてのバランスが崩れつつあるのが現状でしょう。
まずはリスクを整理する
母体(お母さん)のリスクとして
年齢
初産婦か経産婦か、経産婦なら前回のお産のトラブル
心疾患があるかどうか
お腹の手術歴
子宮筋腫や高血圧、糖尿病の有無
不妊治療の有無
肥満かどうか
などを整理しておきます。
母体のリスクは児のリスクに直結する場合もあります。
高血圧や心疾患がある場合には児のリスクが上がる可能性も高いため、
小児科医が常駐していたりNICUがあったりする病院を選択するほうがよいでしょう。
私の場合、以下のようなリスクがあげられます。
母体のリスク
・高齢出産
・不妊治療
胎児のリスク
・高齢出産
・NIPT(新型出生前診断)未施行のため合併症不明
※NIPT:妊娠中、妊婦の血液を採取し、赤ちゃんに染色体疾患があるかどうかを調べる検査。
ただし、これらが正しく判断できなくても、基本的には受診した分娩施設でリスクを適切に判断し、より高度な機能を持った施設(高次施設)を紹介してもらえる場合がほとんどです。
ただ、リスクが低いからといって高次施設からクリニックを紹介されることはありません。
リスクを整理したうえで、無痛分娩の希望があるかどうか、や
自分の中でなにを優先事項とするかを明らかにしておきます。
分娩施設は3つに絞られた
アクセスやゆかりのあった施設の中から、候補を3つの施設に絞り込みました。
私としては前回も無痛分娩だったため、無痛分娩を受けられることと
安全であることを優先事項としました。
まだまだ長くなりそうなので、
前編はこのへんで。