古代エジプト王の執念、恐るべし
9月17日
ピラミッドって、神秘的なイメージがありまして。
昔、NHKでやってた「シルクロード」の感じ。人家集落から遠く離れ、悠久の時に想いを馳せる。バックに流れるのは哀愁を帯びた喜多郎のシンセサイザー、みたいな。
来てみたら、違った。
道路を走ってると、いきなり砂漠地帯が現れるのだよ。そこがいわば、ピラミッドエリア。
カイロの中心地から、バスで15分ぐらい。なんというか、日常的なのよね。
「あ、富士山見えるで」みたいな感じで、ひょこひょこ現れる。
なんの知識もないまま、ただ「ピラミッド見てみたーい。キャッキャ♪」てな感じでカイロまでやってきた。やっぱり実際に来て、見て、感じるのって面白いなー。
日本人がピラミッドと言われて思い浮かべるのは、ギザの3大ピラミッドというやつ。真ん中のカウラー王のピラミッドにはセットでスフィンクスもついてくる。
こんな感じね。
あるいはこんな感じとか。
あとはせいぜい、最古のピラミッドでもあるサッカラの階段ピラミッドぐらいなのでは?
多くの日本人は、この4台以外のピラミッドのことは知らないし、写真も見たことないんじゃないかなあ(私はそうでした)。
だが、ですよ。
エジプトには93台だか97台だかのピラミッドがあるそうなんですよ。
ぜーんぶ、古代エジプトの王様のお墓。大小あるらしいけど、エジプトの北の方に固まっているんだって。当時の最大都市は、北部のメンフィス。王様たちは、そのあたりでお墓を作ったわけだ。
カイロ郊外の街・ギザで見つかった3大ピラミッドは保存状態が良かったこともあって、世界的に有名になったらしい。
サッカラは、古代の埋葬地だった土地で、カイロからバスで30分ぐらい。
この2カ所でピラミッドを見て、ピラミッド制覇したつもりでいたら、全然違うのね。出雲大社と伊勢神宮見て「神社制覇!」と言ってるような感じかな。
ピラミッドについては、「意外とちゃちだよ」なんて声も聞いていた。
それは、やけにカジュアルにアクセスできちゃうことに加えて、激しく観光化されていることが大きいのかもしれない。
エリアに一歩足を踏み入れると、そこら中にモノ売りがいて、断っても断ってもついてくる。ラクダに乗ってる人の写真を撮ると、お金を請求される。
あっちにもこっちにも、観光客がぞーろぞろ。
墓所なんだから、もう少し静謐な空気であってもいいんじゃなかろうかと思うんだけど、エジプトの人にとっては貴重な観光資源でしかないという。
日本人が富士山にそこはかとなく敬虔な気持ちを抱くような感じはないの?と尋ねたら、ガイドさん一緒ポカンとしてから大笑いしてました。
「ないない! 単なる観光資源! わはは!」だってさ。
だけど実際に来て、見て、その大きさにはやっぱり度肝を抜かれた。こんなものを4000年も前に、人力で作ったのですぞ。
王様たちがなぜこぞってピラミッドを作ったかといえば、ここでミイラになって安置されれば、死しても再び蘇ると信じていたから。ピラミッドを作るには20年ぐらいかかるそうで、王様たちは我が身の復活を期して生前からピラミッドを作らせたんだと。
そうして何年もかけて自分の墓を作り、死んだらミイラにしてもらって、多くの財宝とともに安置してもらう。
その生や権力や財力への執着、恐るべしじゃない?
なんだか、得体の知れないエネルギーを感じて、私は感動してしまいましたよ。
この、人間の底知れない欲と執念にふれられただけで、遥々カイロまで来た甲斐があったというもんだ。