死にたい人をこの世に留めた責任をどこまで果たすのか。

たまに「死にたい」と言う人と出会うことがある。それは不意に言われることもあるし、長い付き合いのある人から言われることもある。

「生きるのが辛い」という気持ちが全く分からないわけではないので、死にたいことが良いとか悪いとかは特に思わない。
それは、その人がこれまで生きていて思うこと。ただ、それだけのことだからだ。僕が何かを判断するようなことじゃない。

ただ、「死にたいんだ」と言われると「そうか、死んだらいいよ」とは言えない自分がいる。

自分にも死にたくてたまらない時期はある。頭がおかしくなりそうな、どうしようもない混乱状態のときは落ち着いて話をすることも難しい。

なのに、死んでいくことを止めたいと思う。

実際に、相手が死なないように頑張ってみたこともあった。その中には、話を聞いてほしいだけだった人も、家に帰ったら死ぬつもりだった人もいるだろう。

「死にたい」と言われたとき、僕は話を聞いたり、「死んでほしくない」という気持ちを伝えるくらいしかできない。

結局は本人がどうするか、何を選んで切り捨てて生きていくかによるから、相手の人生は決められない。
僕が何時間も話を聞いても、死ぬときは死ぬのだ。

しかし、僕の努力によって、とりあえず生きることにする人もいる。「僕は死んでほしくない」という個人的な気持ちによって、踏みとどまれる人がいるのだ。
そういう人たちに対して、僕はどこまで何をするべきなのか迷っている。

僕の体力や精神的な元気にも限りがある。してあげられることにも限界があるのだ。

とは言え、僕が引きとめたから生きているという事実がある。だから、僕にはある程度の責任があると思う。

「きみが死なないでと言うから頑張っている」と言われると、確かにそうだなと思える。
しかし、僕にもできることに限界がある。生活していかなければならないし、その人とだけ付き合っているわけではない。

でもやっぱり、頑張って生きている理由として、僕という存在がある。

相手が満足してくれたら、それで良いのかもしれないけれど、そのラインがどこにあるかは分からない。
「死にたい気持ち」と付き合っていくのは簡単な話じゃない。いつ、どんな理由で、また死にたくなるかも分からない。

僕にできることと、相手が求めること。そこに大きなズレが無ければ、そこまで問題にはならないかもしれない。

「僕はどうするのがいいんだろう」

ずっと考えているけれど、答えは出ない。試行錯誤しながらできることをする。駄目になるときもあるだろうけど、トライアンドエラーを繰り返すしかない。

他人の人生がどこで終わろうと、僕の人生は変わらない。けれど、死なないでくれと思う。
「責任」なんて言葉にしてる時点で、死なないでという気持ちは嘘なのかもしれない。自分でもまだ、よく分からない部分が多い。

「死なないで」と言った責任は、どこまで果たすものなのか。相手はどこまで責任を負ってくれと思うのだろうか。
僕のできることには限りがある。

いろんなことを考えながら、今日も人と向き合うことだけ辞めないように頑張っている。

やっぱり、明確な答えはない。