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半分こ
『名犬ジョリィ』を知っているだろうか?
私が子どもの頃の懐かしいアニメだ。
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セバスチャンのともだち
詳しい内容は忘れてしまったが、よく見ていて、アニメの歌も一緒に歌っていた。
娘がお腹にいる時、散歩の際にはなぜかジョリィの歌をよく歌った。
ぽんぽこのお腹をスリスリさすりながら。
ビスケットいちまい あったら あったら
ジョリィとボクとで 半分こ
ちょっぴりかなしく なったら なったら
なみだもふたりで 半分こ
「ジョリィ」のところは娘の仮名を。
「ボクと」のところは「ふたり」に替えて。
ちなみに娘の仮名はパパの名前から取って「トシコちゃん」
生まれてからは全然違う名前になるのだが。
思い返すと、妊婦時代の散歩はほぼ私とお腹の娘だけ。
パパと手を繋いで散歩なんて、そういやなかったなぁ。少し憧れていたけれど。
お腹がかなり大きくなってからは里帰りをしていたから、それこそ一人、いや二人で散歩した。
つかれてさびしく なったら なったら
にもつもふたりで 半分こ
なにかいいこと あしたはおこる
ワクワクするのも 半分こ
やさしいはるかぜ ふいたら ふいたら 希望も 半分こ
線路沿いの細道を歩く時も、病院の検診に向かう時も、この歌を口ずさんだ。全部は覚えてなかったから、同じところを繰り返し繰り返し歌った。
果たして娘は無事に生まれ、いや私はちょっと死にかけたが、まぁ無事に生まれてすくすく大きくなり、何かあると娘は必ず私に半分くれた。自分の物を分けてくれた。
「お母さんハイ」と。
聞こえてたのかなぁ。
ちゃんと歌、聞いてたのかなぁ。
いつも不思議に思った。
たぶんほんとに聞こえてたんじゃないかなぁ。
とても嬉しいことだったのだが、ひとつ大きな失敗をした。
「ふたりで半分こ」
……
パパを入れるの忘れてた。
だからパパは娘から半分こされていなかった。
ごめんパパ。
*
明日、娘が一年ぶりに帰省する。
急激に親離れが進み、もう嬉しいことや楽しいこと、しんどいことも言ってくれなくなった。
さっぱりわからなくなった。
いつでも半分こするよ?
今度はパパも入れて3つに分けよう。
寒い時には毛布を。
春風が吹いたら、希望もわけあう家族でいたい。
それが願い。
もう一度家族を作り直したい。
参照↓