挫折をして強くなる③
ハッピーもアンハッピーも全部ひっくるめて生きていこう、森川耶美です。
②のつづきを書いていきます。
さて、母は彼との同棲に大反対でしたが、反対を押し切って彼とシェアハウスの1ルームで生活を始めます。
わたしはあの時、母をとても悲しませました。
母は、『アカデミーを途中で辞めていきなり就職して男と暮らし始めるだなんて、なんて自分勝手で親不孝なんだ』と泣きながら叫んでいました。
今でも覚えてる。
あのときは分からなかったんです、母からの愛が。
わたしはほぼ、駆け落ちという形で彼と暮らし始めました。
彼はとても不思議な人でした。
朝起きたら家の窓をガーッと開けて山々におはようと挨拶をし、突然夜中に飛び起きて『今日流星群だってよ!』とベランダに椅子と毛布を30分くらいかけてセッティングしたりする、こどものような大人でした。
そんな奇想天外で自由な人と過ごしていくと、悩んでいるのがバカバカしく思えてきました。
1人で毎日ベソかいていた日々に比べ、はるかに精神的に楽になっていきます。
仕事の方も、仕事を好きになる努力はせずとも、だんだんと慣れていく日々。
顧客もついて、お客様とお話しする時間を楽しむ余裕も出てきました。
たまに失敗もするけれど、なんとなくこなして過ぎる毎日に身を委ねる日々。
シェアハウスには愉快な仲間もたくさん住んでいて、夜中までずっと笑い合える環境。
時があっという間に過ぎていきます。
楽しい毎日。
けれど、"慣れ"が心に隙間をつくり、時折どうしようもない"未来への不安"が襲ってくるようになりました。
自己肯定がかなり低い時期を乗り越え、他者から"愛される"ということで生活面での承認欲求が満たされていった私は、気づかないうちに『自己実現欲求』が芽生えはじめていたのです。
今の日常に対して、モヤモヤや不安が付き纏うようになりました。
SNSでの同期の活躍を見ると、羨ましくて羨ましくて堪らなくなります。
ただ"社会人はすぐに辞められないんだから"
"とりあえず3年は続けないと"
と、自分と世間体を理由にして、その想いを殺してしまいます。
まだわたしは表現の世界に戻りません。
本当は、やりたいくせに。
"戻りかたがわからない"と決め付けて。
やり方なんていくらでも探せるのに、人と比べても仕方ないのに。
踏み出すタイミングは自分で決断しなければいけないのに。
抜け殻のわたしに魂が宿る感覚。期待されることの喜び。
そんな想いがグルグルする中、社会人になってはじめての夏が訪れます。
『卒業した短大のミュージカルの練習に行かない?』と、友達に誘われ、本当に久しぶりに短大へ足を運びました。
久しぶりの風景、空気、ワクワクしてきます。
保育科の短大ですが、音大が付属されている大学なのでカリキュラムにミュージカルを専攻できるのです。
わたしはそのミュージカルで主人公を演じていました。
稽古場に着くと、『先輩の代のDVDみました』と駆け寄ってきてくれる後輩。
汗を流しながら必死に自分と向き合っている若者の姿を目の当たりにしました。
『森川、いまも舞台やってるんだろ?』と当たり前のように聞いてきてくれる先生。
ドクドクと血液が体に巡っていきました。
表現をしていた自分を知っている人に囲まれることが久しぶりで、表現者としての未来を期待されている嬉しさに包まれました。
森川耶美の過去を知っている人が応援してくれる。
森川耶美の今を見てくれている人がいる。
森川耶美の成長を見たい人がいる。
久しぶりに"過去のコミュニティ"と触れ合うことで、森川耶美の抜け殻に魂が戻った感覚でした。
そんな中、母からも手紙が届きます。なんていう運命の巡り合わせでしょう。
『昔のゆみちゃんは、輝いていました。戻ってきなさい。まだやり直せるよ。』
母からの手紙に、またボロボロと泣きました。
わたしもう一度やりたい。歌いたい。演じたい。
職場の上司に相談して月末退職が決まり、トントンと話は進んでいきます。
辞めてどうするかはまだ決めてないのに退職届けです。まずは環境を変えなければ、の一心です。
本当に直感で動く人間ですよね。笑
そうして私が次のステップへ進んでいこうとする中、突然彼がこの世からいなくなってしまうのです。
"いってらっしゃい、行ってきます。"
のやりとりが最後で、二度と会えぬ人となりました。
今日はここまで、続きはまたね。