おとぎ話「宝石国の王子さま」②

宝石国の王子さま⓵の続きです

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王子さまはお勉強が終わった後、こっそりとお城を抜け出して、近くにある森へ行きました

王子さまは、こっそり用意していたリュックからある一枚の地図をとりだし、眺めています

「この大きな木の近くに、魔法使いの家があるはず・・・」

その地図には昔から存在しているといわれている、魔法使いの家が記されていました

王子さまは自分の誕生日に、なんとか魔法の力をかりて他人の顔がわかるようになりたいと思ったのです

「あら、こんなところで何をしてるの?」

突然はなしかけられた王子さまは驚いて振り向くと

そこには女の子が立っていました

王子さまの目には、女の子の顔を認識することができませんが

声の感じから、自分と同じぐらいの年齢におもえました

「あ、じつは、ここらへんに魔法使いの家があるから来たんだけど、見つけられなくて困っていたんだ」

「ああ、あのおばあさんの家ならわたし知っているから、案内してあげるね」

「え?ほんとうかい?ありがとう!!」

王子さまは女の子に、魔法使いの家まで連れていってもらうことにしました

女の子は、王子さまのことを深く詮索することなく、親切に案内してくれます

そして、王子さまのことを聞かないかわりに、とても楽しそうに今日あった良い事をはなします

「この前、怪我していたことりさんの体調がとっても良くなったの」

「起きて窓の外をのぞいたら、綺麗な花が咲いていたの」

「お母さまがわたしにってかわいいハンカチをつくってくれたの」

女の子のはなしは王子さまが聞いていてとても心地の良いものでした

「さあ、ここを真っすぐ行ったらつくわよ!ほら、あそこにうっすら赤い屋根の家がみえるでしょう?あれが魔法使いのおばあさんの家だよ!」

女の子が指をさす方向に、たしかに赤い屋根の小さな家が見えます

「ほんとうだ、ありがとう、助かったよ!!」

王子さまは女の子にお礼をいいました

女の子は少し照れ臭そうにどういたしましてと言いました

最後に、王子さまはずっと疑問に思っていたことを女の子に聞きました

「ねえ、君はどうして僕のころを何も聞かずに、ここまで親切に案内してくれたの?」

その問いに、女の子は一瞬考える素振りをしてこう答えました

「どうして案内したのって?だって困っていそうだったから。それに、魔法使いのおばあさんに会いたいってことは、何か内緒で叶えたいことがあるんでしょう?人が内緒にしたいことは無理やり聞いたらいけないってお母様に教わったから」

「僕が、もし悪いやつで、これから魔法使いに悪い事しようとしていたらどうするつもりだったの?」

王子さまはそう言ってから、すこし意地悪なことをいったかなと後悔しました

そんな王子さまを女の子はじっと見つめ、にっこり笑いました

「そんなことないわ!!だってあなたとっても綺麗な目をしているもの。あなたの目は宝石なんかよりずっときれいで素敵だわ」

王子さまはそういわれてとてもビックリしました

なぜなら王子さまは、周りの人の顔を認識できない自分の目がとても嫌いだったからです

「そんな・・・ぼくの目は全然すてきじゃないよ。だって僕の目は君の顔をしっかりとらえる事ができないんだもの」

王子さまは、はじめて自分の目のことを女の子に打ち明けました

「・・・あなたはわたしの顔がまったくわからないの?」

女の子は首をかしげます

「うん、君が女の子っていうのはわかるし、顔の一部とかは認識できるんだけど・・・君がどんな顔をしているのかなぜかわからないんだ、だから、どうにかして魔法使いになんとかしてもらおうと思って、ここまで来たんだ。もし・・・それでもダメだったらまた君に会っても僕は声をかけられないかもしれない」

王子さまは、ここまで案内してくれた女の子の顔がわからないことに、とても申し訳ない気持ちになっていました

それを聞いた女の子は王子さまに、初めて質問をしました

「・・・あなたの名前はなんていうの?」

「ルイスだよ」

女の子は王子さまの名前を聞いた途端、王子さまの手をぎゅっと握り言いました

「わたしはローズ!!ルイス、大丈夫!たとえ私の顔がわからなくても、私はルイスの顔がわかるから!!今度会った時は、わたしからまた声をかけるわ!!だからそんな悲しい顔をしないで!!ちゃんとローズって名乗るから大丈夫よ!!またお話ししましょう!!」

「ありがとう・・・君はとっても優しい人だね」

王子さまは、何か思いついたような顔をして、自分が身に着けていた赤いルビーのペンダントをローズにわたしました

「これを、きみにあげよう。これをつけていたら僕は、君が誰だかぜったいわかる」

「え、こんな豪華な物もらえないわ」

ローズはなかなか首をたてにふりません

「いいんだよ、ぼくより、君にこれをつけていてほしいんだ、どうかお願い、これをつけて僕に会いに来てほしい」

王子さまは、ローズの手の中にペンダントを握らせると、走り出しました

「え!!まって!!」

あわててローズが王子さまを呼び止めますが、王子さまはもう魔法使いの家の中にはいってしまいました

「・・・・・かわった人、でも、きっといい人だわ」

ローズはペンダントを首にかけ、来た道をかえって行きました


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今日はここまでにします

明日続きを公開します。

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