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「AI vs.教科書が読めない子どもたち」を読んで

「AI vs.教科書が読めない子どもたち 著:新井紀子」を読んでみた。

AIの事が延々と書いてあって、正直、読むだけで疲れる。将来、AIに仕事を奪われるという事が書かれている。

AIは万能ではないが、人間もそこまで賢くはないという結論に辿り着いているように思う。

一章ずつ感想を書いてみる。

第一章 MARCHに合格――AIはライバル
AIの言葉の定義でいうと、現在はまだAIが出来ていないという事が書かれている。
AIの和訳は『人工知能』であり、人工知能というからには『人間と同等』か『人間と同等レベルの知能』をもつことになるが、そんなものは出来ていないからだ。

という説明と、現代の『AI』は『AI技術』の事をそう言っているだけということだ。

最初は、言葉の定義を細かく説明している。
そこからAIの歴史、この本のメインの話『東ロボくん』の話が出てくる。

AIの概要が分かる。
AIにできる事はAIへと仕事が置き換わっていくという未来予想も書かれていた。

が、ついこの間見たテレビでは最貧困層では手製の麻薬製造機を作っているというのがあった。
資本主義の世の中でAIが使えるのは、裕福層なのである。『仕事がなくなると困る』ではなくて、仕事がなくなると劣悪で違法な労働しかできなくなるというのが現実ではないだろうかと思ってしまった。

介護や家事といった女性の仕事は置き換わることがないというのも書いてあったような気がするが、女性にとってはそちらの仕事の方がもっと手軽になってほしいものである。

第二章 桜散る――シンギュラリティはSF

東大合格を目指した東ロボ君は、東大には合格できないという事が書かれている。
理由は一章で書いてある通り、コンピューターができる事は四則演算だからだ。
一章よりも詳しく現代のAIが出来ることと出来ないことが書いてある。

この辺りでちょっとおなか一杯になってきて、めげそうになった。
話が同じことの繰り返しなのと、難しいので頭をついていかせるのが大変。

英語翻訳は難しい。英語だけに限らず、ほかの言語も同じだが。
とにかく翻訳するには文章の前後の入れ替えの違いや、独特の言い回しetc、入力するべき情報が多すぎるせいだという。しかし、今はネットの普及で一般の人が修正情報を入れてくれることで補正されていると(悪意ある補正についても書いてあったので、万能ではない)

なるほどなと思って読んだ。確かに20年前よりは翻訳の質が上がっている気がする。英語が苦手な私がそう感じるほどには、昔の翻訳は酷かったからだ。

特に言語翻訳は一番使える機能だから、開発がいろいろとされているらしい。
少し前に韓国の小説を自動翻訳で読もうとしたら、ネットの自動翻訳があまりにも使えなくて日本語の文章がおかしかった。その作品は人の手でも日本語に翻訳されていたので、読み比べるとますます自動翻訳のおかしさが際立っていた。

翻訳の難しさは『特定のジャンルでしか通用しない』という事だと本にも書いてあった。小説には小説独特の言い回しがあるので、海外作品の翻訳本のレビューを見ていると時々『この文章の翻訳は違う』という指摘が書いてある。

つまり、小説を読むには言語獲得だけではなくて小説独特の言い回しも理解しなくてはいけないということだ。

英文翻訳のあれこれは読んでいて面白かった。

第三章 教科書が読めない――全国読解力調査 
AIに出来なくて、人間にできる事はあるが、その能力を今の教育で伸ばせていない。
という事が書いてある。

二章が東ロボ君への問題だったものが、三章になると子供たちにテストを受けさせて『読解力』を測ったという話になっている。

テストの問題がいくつか載っていた。大半は解けたのだが、いくつかは深く考えすぎて転んだ。
試験らしい嫌らしい問題が紛れているなと思った。

試験の問題文は独特だと思う。『正しい日本語』ではあるが、『わかりやすい日本語』ではない。なので、試験に受かるための最低条件が『試験の問題文の独特さに慣れる事』だと思う。問題文で転んで私は自動車免許の学科試験を落としたことすらある。
というのを思い出しながら読んだ。

難易度が高い係り受けの問題例としてこれが載っていた。
『アミラーゼという酵素はグルコースが繋がってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

セルロースは( )と形が違う
1.デンプン 2.アミラーゼ 3.グルコース 4.酵素』

問題文を抜いているが、上記の文を読んでカッコに入る言葉の数字を選べという問題。
私はグルコースかと思ったが、答えは1のデンプンという事だった。

これそもそも『セルロースが何か』が分かりにくい。そして、上の文章の『形が違うセルロース』とあるのでその直前の『同じグルコースからできている』という文章が下にかかっているのかと思ってしまう。

答えを見ても、デンプンがどうセルロースにかかるといわれても、何度も読み直した。

グルコースが繋がってできているデンプンをアミラーゼは分解する。
セルロースをアミラーゼは分解できない。
セルロースはグルコースからできている。

ここまでは理解できる。

が、『形が違う』という部分はセルロースにかかるのではなくて、さらに前の『デンプン』にかかるらしい。

難問すぎる。文章が長くてわかりにくい上に、よくわからない単語の連続で意味を読み取るまで行けない。

でもこれ、知識がある人にとってはこれだけの長文にしても意味がくみ取れるという現象が起きるんだよなとも思う。こうなると『文章を読んでいる』のか、『知識を基に文章を読む』のかわからなくなる気がする。

と思えるような事例が中高生向けのテストでもあって……読解力って結局なんなんだ?と思う。

第四章 最悪のシナリオ
仕事が消えていくよという脅しのような話から、ほぼ日の事例を出してきて人間にだけ生み出せる『ストーリーでモノを売る』という話になっている。

つまり、発想力で新しい仕事を生み出していけと。
それは、今までにも存在している『起業家』というものだと思います。

でもここで、日本は『出る杭を打ちまくる』民族だという事を踏まえると、そもそもの土壌が『打たれても伸びようとする人間しか伸びない』ので期待値は低い気がする。

もしここに教育の話が出てくるなら、必要な教育は読解力などではなくて『発想力』と『応援力』ではなかろうかと思う。

結びは、『新しいジャンルの知識を得るためにも読解力が必要』となっていた。

AIの仕組みがそれなりに理解できたのは楽しかった。
AIの話というよりも、言語の話がほとんどだったような気もする。国語を学びなおす意味でも、興味深い本だった。

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