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映画から感じ取る死と向き合う感情…
映画通とか映画好き、映画ファンとはとても掛け離れた人生を送った私でも、思い出したように映画館に足を運んだ記憶がある。
この数年はもっぱらテレビや動画配信サービスで古い映画を視聴することがほとんどだ。
しかし今から四半世紀くらい前は概ねDVDを買って映画を見ていた。
何でもない日常の幸せを教えてくれた韓国映画
最近部屋の模様替えをしながら片付けをしていて数本のDVDを見つけた。
昔買った映画のDVDだ。
その中には思い出に残っている映画もあるが、どんなストーリーだったか全く思い出せないものもあった。
思い出せないということは地味でインパクトのないストーリーだったのだろうとそのまま収納の奥に仕舞い込んでいた。
そのうちの1本で手が止まった。
最後の人生を考えさせられる映画
アクションやSF、ミステリーといったジャンルと違い、緊張する場面の全くないまったりとした日常をモチーフにした映画といった印象だ。
ラブストーリーなのだからそれも分からなくはないが、そうかといって胸がときめくわけでもない映画だ。
しかし気付いた時、そのDVDを手に取ったままストーリーの記憶を呼び起こそうとしていた。
その頃よく見ていた韓国映画だった。
最初に見た韓国映画との出会いが印象深かったこともあり、このDVDもその連鎖で買ったように記憶している。
それが「八月のクリスマス」という映画だ。
病で死の宣告を受けたであろう中年に差し掛かったおじさんが、人生最後の半年間に経験する純愛というのがこの映画の本筋だ。
だがこのストーリーを思い出しながら考えさせられたのは、愛ではなく死を受け入れるということについてだ。
最後の人生を送っている私にも共通したテーマであることには違いない。
ラブストーリーというには重く深いテーマが見え隠れする映画だった。
平凡な日常の中に見つけた最後の幸せ
映画は何でもない中年おじさんの日常を映し出している。
韓国映画ではあるが日本に置き換えてもありがちな日常だ。
その映像はどことなく懐かしくもあり安心感すら抱かされるもので、自分に置き換えたとしても自然に感じる内容だ。
死と向き合い、最後の人生と向き合いながら大切な人を思いやる感情は、年齢を超えたテーマでもある。
それに加え最後の人生を精一杯楽しもうとする平凡な男性の感情にも共感できる。
60代後半になった私にも考える切っ掛けを与えてくれそうな映画だ。
日常の中の幸せや平凡な人生といったテーマが、この映画を通して美しいストーリーに仕立ててくれる気にもなってくる。
「そんなストーリの中に自分もいるんだ」という気にさせてくれる映画だ。
この映画のおすすめポイント
この映画の主役は韓国映画ではお馴染みのハン・ソッキュだ。
韓国ドラマでよく見るような、誰が見てもハンサムで男前といったイメージの俳優ではない。
どこにでもいそうな人のよさそうなおじさんだ。
しかしそこが韓国ドラマにはない韓国映画の良さでもある。
自然に映画の中に入り込めるのもそのせいかもしれない。
私より少し若いが同年代というのもこの俳優に安心感を持てる要因だろう。
そのハン・ソッキュが最もハマるキャストこそこの手の映画だと思えるほどだ。
確かこの映画が上映された翌年にハン・ソッキュ主演でヒットした「シュリ」が上演されたが、もしこの映画が日本で作られていたならおそらくこのキャスティングはないだろうと思えるほどだ。
シュリの場合はそのギャップがひとつの売りだったのだろう。
これはあくまで映画通でもない私の見方ではあるが、平凡な一般人として違和感のない役柄はハン・ソッキュを置いて他にないと言えるほどだ。
おそらくそのくらい演技力が高いのだろう。
ストーリーの中では、自分が死んだ後も困らないよう老いていく父親のための気遣いが印象的だ。
自分の死期が迫っていることを若いヒロインに伝えない心境や、本来なら発展するであろう恋心を自制しなければならない思いやりなども興味深い。
しかしその一方で、最後の人生を精一杯楽しんで生きようとする中年男性の生き様も今の自分に置き換えることができるものだ。
誰にでもどこにでもありそうな日常を描いた映画で、死を前にした限られた人生の中で平然を装いながら時を過ごすことに理由もなく感銘を受けた気がする映画だ。
今日は雪が積もっていて外に出ることも憚れるからこの後、今書いたように素直な感情でもう一度この映画を見直してみようと思う。
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