マガジンのカバー画像

とても短いお話

55
超短編小説。気が向いたら書きます。
運営しているクリエイター

#不眠症

渦巻く夜

その夜も、どうにもなかなか眠りに付くことが出来ず、暗い布団の中で、左手の親指の指紋をぐるぐると目で追っていた。

これは長年不眠症で苦しんだ私が編み出した、自己流の睡眠導入の方法である。眠れぬ夜の指紋の渦巻きは、決まって螺旋構造をしていて、それを辿ることで、深く深く潜るように夢の底にゆっくりと導かれる。その道は力強い一本道で、私は迷うことなくひたすらぐるぐると進む。ただし、考え事などにより一度道を

もっとみる