衝動を抑えて、集中する方法。自分と向き合う方法。
ぼくたちの脳、神経系は、この世界を生き延びるために瞬時に状況を把握し、判断できるようになった。『ファスト&スロー』では、この反応的な思考を「システム1」の思考と呼び、我々の思考がいかに素晴らしいか、そして、いかに間違いを犯しやすいか、について解説している。
ぼくたちの脳は、怠け者な理性的な脳(システム2)よりも、反応的な脳(システム1)が優位なのだ。
この本が、すごくおもしろい。思考のクセがわかる。自分がそんなに賢くないということもわかる。影響されやすいことも、直感を信じすぎるということにも、この本を読むと改めて気がつく。「私は理性的な人間です。論理的ですよ」という顔をしていたぼくとしてはとても恥ずかしくなった。
『仕事に追われない仕事術』では、時間管理の方法を"衝動の脳"と"理性の脳"で解説する。ぼくたちは、”衝動の脳”に浮かぶ思いや判断で行動をしてしまう。だから、仕事が整理できず、先延ばしにしてしまい、集中することができない。この本では、"衝動の脳"を抑え、仕事を整理し、仕事に集中するための、「仕組み」と「方法」を解説する。
「ラベリング」という方法は、衝動的な思いに名前をつけることで、その衝動を相対化し、選ぶ、選ばないと選択できるようにする方法だ。まず、しなければいけない仕事をするときに、その宣言をする。「いまからメールを返信します」と。その宣言をしたとき、衝動的に浮かんでくる思いを言葉にする。「コーヒーが飲みたい」「先輩の仕事思い出した」「友だちにレスポンスしていない」「あの人に電話しないと」「あれをチェックしなきゃ」。そうやって言葉にして衝動に「ラベル」を張り、認識することで、その衝動を抑えることができる。
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ラベリングの方法は、普段のぼくの反応的な思考を理解することにも役に立つことに気がついた。
たとえば、「自分の考えが通らなくて不機嫌で頑なになる」くん。仕事でも、友達と話しているときに、不意に現れる。自分を否定しているわけではないのに、自分自身を否定されている気持ちになる。
それに、「自分はこれだけ考えているんだぞ」くんとか、「それ知ってますよ」くんとか、大したことないにも関わらず、慢心な自分も立ち上がる。
名前を付けてみると、浮かんでくるのは、「どうしてそういう思いを抱くか」という問いだった。考えていくと、「不安で怖くて、ぶるぶる震えてる」くんがいることに気がついた。
「そこにいる意味や必要性」を感じたい自分がいる。失いたくない自分がいる。意味や必要性をなくしたくない自分は、先鋭的になっている。意見を聞いてもらえないことや、納得してもらえないと「勝手に感じる」だけで、心を壁をつくる。エヴァンゲリオン的にはATフィールドだ。壁をつくり、話を聞く態勢ではなくなってくる。自分の意見を正当化し、相手の意見の問題点ばかりに目を向ける。相手はこちらを否定するものだと敵対し、自分の意見をより通そうとする。
ぼくの反応的な脳は、ネガティブな感情を抱き、安易にその場を理解しようとし、壁をつくり「自分の存在の意味がなくなること」を防ごうとしているのかもしれない。不安で、弱虫な自分が、そこにいるのだ。
ラベリングしてみると、自分の思考のクセに気がついた。そしてその思考のクセは、ぼくがやりたいと思っているものとは、別のことだ。もっとお互いを理解し、話して、一緒に考える。そういうことをしたい。陣取り合戦でも、命を取り合う戦いでもない。
反応的な自分はきっと消えずに、ずっと付き合っていくことになるだろう。これがぼくだし、ぼくのクセだし、らしさでもある。だから、あらわれたときには、まずはその思いに、名前で呼んであげる。共感してあげる。でも、「いまは、みんなですすめるときだよ」とか「この企画はみんなでつくるものだよ」と、ひとこと言ってあげる。そうすると、反応的なぼくはきっと理解して、おさまるだろう。
もしかしたら、はじめに場の設定として、ここではこうしたいだとか、一緒に考えようだとか、目的はここだよね、と共有することも大事かもしれない。ここでは、「自分の存在の意味がなくなること」はない大丈夫なところだと自分自身に思わせるということだ。
ここまで考えていくと、ぼくにとって、心理的な安全と安心はどうしたら得られるのか、ということが理解できてくる。
ぼくの反応的な脳は、不安といつも付き合っている。その不安を見つけてあげて、そいつの存在も認めてあげよう。そして、そいつと一緒に考えよう。
なんだか、自分のことが少し理解できたみたいで、心が晴れやかだ。
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ツイッターもしています。本の感想やその日に気づいたことをけっこう"衝動的"に投稿しています。(がんばれ理性の脳)
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