広島ドラフト指名選手分析~Part1~
昨日ドラフト会議が行われ、広島は7選手を指名しました。
その7名の選手について、実力面・編成面から、その選手の将来像や指名の意図を分析していきます。
まず第一弾として、本稿では1位指名を受けた小園海斗について分析していきます。
1位:小園海斗 内野手 報徳学園
オリックス・DeNA・ソフトバンクと4球団競合する中、見事に当たりくじを引き当て、交渉権を獲得しました。
今年のドラフト候補の中では、同じく競合した根尾や藤原と並び称されるような選手で、遊撃手もしくは二塁手として、将来のチームのコアを担う選手としてかなり期待できるでしょう。
・打撃
高校時代の甲子園・国際大会での成績が上記表①です。
高校では1年時からずっと1番打者を務めていたようですが、いわゆるアヘ単と呼ばれるような、全く長打が期待できない打者ではなく、高校通算で38本塁打を記録しており、甲子園でも本塁打を放ったり、1試合で二塁打3本放つなど、長距離打者とまでは言えませんが中距離打者としての素質を感じます。
また昨年と今年、U-18日本代表に選出されており、両大会において打率.300オーバーの好成績を残し、かつ今年の大学日本代表との壮行試合では、西武にドラフト1位指名された松本航から本塁打を放つなど、木製バットへの対応も問題ありません。
後はプロのスピードに慣れるだけというところでしょうから、2年目くらいには一軍を意識できるレベルまで持っていけるのではないでしょうか。
細かいところに目を付けていくと、右投手に対してアウトコースのストレートへの対応力はかなり高く、甲子園でもアジア選手権でも、140キロ中盤くらいのボールに力負けせずに左中間からレフト方向へ強い打球を弾き返すことができています。
ではインコースはどうなのかという点ですが、大学日本代表との壮行試合で松本航から打った本塁打がインローの147キロのストレートを捉えたもので、比較的距離の取りやすいインローに関してはきっちりと捉えることができています。
これがもう少しハイボールになると対応できるのか、という点には少し疑問符が付くところです。
ただ、癖が少ないシンプルな打撃フォームで、ストレートへの対応力も高く、素人目から見てそこまで弄るところは無さそうなように見えます。
また、ボールの下を叩くことを意識しているのか、意外とフライ性の打球が多く、この手の打者にしては無理矢理ゴロを打ちにいってないところも好感が持てます。
体格も178㎝とそこまで小さいわけでもないため、ウエイトトレーニングなどで体を作れば、20本塁打を意識できるくらいのパワーを付けることができるかもしれません。
・守備
外野の芝生の切れ目の部分に守備の位置取りを行うなど、守備に関しては意識の高さや自信が見え隠れします。
実際にプレーを見ると、その深い位置取りのためか追い付ける打球の範囲はかなり広いですし、高校レベルでは出色ものです。
ただ、スローイングが毎度毎度全力すぎてプロだと1シーズン持ちそうにない点と、常に正面に入ってボールを捌こうとしている点は今後の改善点でしょうか。
前者はプロとして1シーズンを戦う中で抜くことも覚えていくでしょうから、自然と改善はされそうですが、後者は染みついたものもありますし、簡単に改善とはいかないでしょう。
このあたりは、菊池という絶好のお手本が近くにいるので、菊池の守備を参考に正面に入ることにとらわれない、アウトを取ることを最優先とする守備を身に着けてもらいたいです。
また、アジア選手権では4失策を喫するなど安定感の面でもまだまだといったところでしょうか。
菊池を見ると分かるように、守備範囲を後天的に広げるのは難しいですが、確実性というのは数をこなしていけば後天的に身に着けることが可能ですので、最初は失策も多いでしょうが、後々に名手と呼ばれるポジションに収まる可能性も十分に秘めています。
確かに可能性は感じますが、上記のような改善点もあるため、最初は高校生とプロのスピード感の違いなどもありますし、少々苦労することになるでしょう。
当面は遊撃手として育成していくでしょうが、思ったより送球の強さがないため、将来的には二塁手に転向もあり得そうです。
・走塁
50m走5秒8の俊足を持ち、その足もプロレベルで売りにできそうな代物です。
今年の甲子園で二塁打を打った際の到達タイムは、7.53秒でNPBの前半戦の全選手の二塁到達タイムの中に入れても7位にランクインするなど現時点でプロの中でもトップレベルのスピードを持っていると言えましょう。
また、ただ速いだけでなく、隙をついた走塁を見せるなど、走塁への意欲も高く、いかにも広島が好みそうなプレースタイルです。
・編成面
現在広島の二遊間には、田中と菊池という絶対的なレギュラーがポジションを保持しているという状況です。
その両名も来年で30歳というところで、世代交代を考えるとそろそろ後釜が欲しいところですが、現状の広島の若手内野陣で将来的に二遊間のレギュラーを担えそうな人材は、今季途中でトレードでソフトバンクから加わった曽根くらいしかいないというのが実情です。
二遊間の選手の打力や守備力を含めた総合力の高さが、現在のチームの強さの一翼を担っていることは間違いありませんから、その強みを維持するためにも将来的にレギュラーを担えそうなプロスペクトを獲得する必要があるわけです。
上記の事情と、今年のドラフト候補で高校生遊撃手のプロスペクトが多くいるという事情から小園の指名に至ったものと思われます。
・総評
将来的には菊池のような、積極的打法が持ち味のスピード感のある中距離打者で守備も売りにしていけるような選手が理想像となるでしょう。
また編成的にも「タナキク」の今後の劣化と若手の台頭までの時間を考えると、この辺りでプロスペクトを獲得するのがベストなように感じますし、既定路線ではありますが、ポイントを押さえた非常に良い指名だったように思います。
小園を獲得できただけでも、今年のドラフトは現時点でかなり満足度の高いものと言えるのではないでしょうか。
次回は、2位の島内颯太郎と3位の林晃汰について分析していきます。