センターラインは生え抜きで担うべきである
チームの野手構成の中でとても重要な部分となってくるのが、所謂センターラインと呼ばれる部分ではないでしょうか。(センターラインとは、捕手・遊撃手・二塁手・中堅手を結んだラインのことです)
センターラインにあたるポジションというのは、打球に絡む機会の多いポジションであり、守備の要にあたるポジションですので、このポジションがぐらつくと当然チームに与える影響も大きくなります。
また、上記のようにセンターラインは守備の要ということもあり、守備力を最優先に求められがちです。
ですので打力が二の次とされやすく、センターラインをそれなりのレベルで守れつつ打力も持ち合わせていると、他球団と比べ相対的優位な状況を作りやすく、チームの勝利に結びつきやすいという事情もあります。
具体例を出すと、2014~2018の広島なんてのはその典型でしょう。
捕手には打力に秀でる會沢翼がいて、遊撃手には田中広輔、二塁手には菊池涼介、中堅手には丸佳浩という布陣ですから、ここで他球団と比べ大きな利得を作っていることが分かります。
上記表①②が過去5年の両リーグのセンターラインのWARを合計したものです。
前述の印象通り、広島は2015年以外は常に合計のWARはリーグトップを記録しており、この部分が他球団と比較した際に、相対的な強みとなっていることが分かります。
特に中堅手(丸)については、2014年以降毎年リーグナンバーワンを記録しており、来季以降はこの穴をどう埋めていくかという点は、広島にとって大きな課題となることは間違いないでしょう。
パリーグでは、西武の強さが目につきます。
2016年時点でも、ソフトバンクや日本ハムを上回るレベルのパフォーマンスを披露していましたが、2017年から源田壮亮が遊撃手に入り、2018年には森が正捕手として定着したことから、より強みを増し、このセンターラインのレベルの高さが今季ソフトバンクの牙城を崩す一因となったことがうかがえます。
この両チームは投手力よりも野手力がウリのチームですが、その中でもこのセンターラインで相対的優位な状態を作っていることが、近年の強さや今季の優勝に結びついたのではないでしょうか。
以上のように、センターラインで他球団に差を付けることが、勝利へと結びついていくことが分かりましたが、センターラインにおいて優秀な選手を供給するのは容易なことではありません。
他球団の選手と差を付けられるような選手を育成していくには、ドラフトの上位指名でそれなりのポテンシャルを持つ選手を獲得していかなければならないでしょう。
また、センターラインを務める選手は、まず第一に守備力を求められていくため、加齢とともにセンターラインのポジションからコーナーポジションへとポジションが移っていくことはよくある話です。
そこで私が思ったのが、センターラインを外部獲得選手で担っていくことは難しいのではないかということです。
選手をドラフト以外の方法で獲得するとなると、外国人として獲得するか、FA宣言した選手を獲得するか、といった手法が主になってくるはずです。
まず、外国人として獲得する点については、捕手と二遊間に関しては、言語の壁があるでしょうし、長期的なチーム作りというところを意識すると、NPBに来る外国人は30歳前後が多いため、長期的にセンターラインを担わせるのは難しいように思います。
また、FA宣言した選手を獲得するにしても、FA権を獲得する頃には該当選手は肉体的なピークを迎える年齢になっており、そこから数年間センターラインを担ってもらおうにも、全盛期と同等の貢献を期待するのは難しいように思います。
ただ、スポット的に穴埋めするには、FA宣言した選手を獲得するのはアリでしょうし、その選手が他ポジションに移行するまでの期間を若手有望株の育成に充てるというやり方も考えられます。
しかし、特に現代野球においては、走攻守の全てが揃ったアスリート性がより重視されていく時代のため、若い選手の価値がどんどん上がっていく傾向にあるという点から、よりアスリート性の求められるセンターラインのポジションは若さが求められてくるようにも思います。
という点から、センターラインに関しては、自チームでしっかり育成できるチームが、長期間に渡って強いチームを維持できるのではないかと考えます。
では、実際に優勝しているチームや、黄金期を築いたチームのセンターラインを担った選手は生え抜きが多いのかという点について簡単に検証していきます。
表③が平成30年間の両リーグ優勝チームのセンターラインを担った選手をまとめたものになります。
セリーグから見ていくと、1990年代に黄金期を築いたヤクルトは、捕手は古田敦也、二塁手は初期は固定されませんでしたが1995年から土橋勝征に固定され、遊撃手は池山隆寛から宮本慎也へ移行し、中堅手は飯田哲也や真中満が務めていますが、全員生え抜き選手で構成されています。
2004〜2011までの落合政権時の中日では、捕手は横浜からFAで移籍してきた谷繁元信が担い、二遊間は「アライバ」コンビという生え抜きであり落合中日の象徴的存在が固定され、中堅手はアレックスや英智や大島洋平といった、外野手にしては守備的な選手が担うことが多く、落合中日の守備力を重視するような姿勢がうかがえます。
2度のリーグ3連覇を果たした2007〜2014の原巨人を見ると、捕手と遊撃手は阿部慎之助と坂本勇人という球界屈指の生え抜きコンビが務め上げ、二塁手と中堅手は毎年のように人材が変わり、2007〜2009は移籍選手でパッチワーク的に埋め合わせていますが、2012〜2014は基本的には松本哲也や寺内崇幸といった生え抜き選手で担わせています。
パリーグを見ると、1990年代初頭の西武黄金期は、捕手は伊東勤、二塁手は辻発彦、遊撃手は田辺徳雄、中堅手は秋山幸二と生え抜き選手でビシッと固定されており、生え抜き選手でのセンターライン固定という面で見れば、理想的なチームに仕上がっています。
実際、リーグ5連覇を果たしていますし、このようなセンターラインの組み方が一つのチーム作りの完成形であることは疑いようはないでしょう。
この傾向は未だに続いており、その後の優勝したケースを見ても、センターライン4ポジションは2008年以外は全て生え抜き選手で埋められていることが分かります。
これは1980年代後半から1990年代前半まで圧倒的な強さを誇った森西武のチーム作りを未だに踏襲しているのでしょうか。
その他では、ダイエー・ソフトバンクを見てみると、1999年〜2000年代初頭の強力打線を擁して3度の優勝を飾った時期には、城島健司というMVPクラスの捕手を擁し、近年(2014~)は柳田悠岐というこちらもMVPクラスの中堅手を擁すなど、基本的には生え抜きでセンターラインは固まっていますが、他球団への優位性は一人の突出した存在で保たれていることが分かります。
以上の例を見ていくと、長期的に強いチームを築くことに成功したチームは、移籍してきた選手や外国人に一時的に担わせるケースはあるものの、基本的には生え抜き選手でセンターラインを賄うことに成功していますし、その中でもMVPクラスの強力な選手(古田、阿部、坂本、城島、柳田等)を擁して他球団と比較して優位に立っていることが分かります。
少し細かく見ると、捕手に関しては一度モノになると選手寿命が長いため、生え抜きに拘らなくとも、谷繁や矢野のようにFA等で他球団から獲得するのも全然アリなことが分かります。
二遊間に関しては、他球団から獲得したケースや外国人で担うケースは少なく、自球団でキッチリ育成していく必要があるでしょう。
中堅手に関しては、基本的には生え抜き選手が担っているケースが多いですが、外国人が担っているケースもそれなりに見られることから、中々外野手が出てこない場合は外国人を獲得してみるのも一手なように感じます。
まとめると、
基本的には生え抜き選手を育成して担わせる形が最も良いが、パッチワーク的にトレードで獲得した選手や外国人に担わせるのも手である。
捕手:選手寿命が比較的長いことから、必ずしも生え抜きに拘らなくても良い
二遊間:若手有望株を発掘し、じっくり育成していく他はない
中堅手:基本は生え抜き選手が担うべきだが、一時的に外国人の獲得等で補うのもアリ
といったところでしょうか。