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OPS分解から打線を読み解く~Part2~

前稿にて、OPSを出塁率と長打率に分解し、打者の特性を分類すると同時に、歴代の強力打線の持つ特徴を探ることで、どのような人員をどのように組み合わせれば、傑出した得点力を持つことが出来るのかを分析しました。

そんな中で打者のタイプやその組み合わせにおいて、強力打線の共通エッセンスとして抽出出来たのが、下記の通りとなります。

タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる(高長打型最低6名)
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる
打線の型
1.パワー+スピード型 
2.中距離打者集合型
3.パワー+出塁型
4.長打圧倒型
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる
3.5番に高長打型を置くのもマスト

これを、現状の12球団の打線に当てはめていくことで、各球団の打線にどのような特徴や課題があるかという当初の課題について、考えてみたいと思います。12球団分一挙に行うと、相当なボリュームとなってしまうため、まずはセリーグ6球団のみを取り扱っていきます。

※各球団のメンバーは日本プロ野球RCAA&PitchingRunまとめblogさんの打線アーカイブを参考にしています。

1.巨人

2年連続リーグMVP男・丸佳浩の補強や坂本勇人を2番に配置する原采配がズバリ的中したことで、ここ数年課題であった得点力が大きく改善され、リーグトップの663得点を記録。見事5年ぶりのリーグ優勝に輝きました。

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タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須→○
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる
(高長打型最低6名)→○
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる→×

まず主力選手のタイプ別打者分類を見ると、①タイプが6名、②タイプが1名、③タイプが5名、④タイプが2名となっています。強力打線の共通エッセンスとなる、1と2は現時点でクリア出来ています。③タイプの中でも重信慎之介が俊足という武器を持っていますが、外野の一角には現状食い込めておらず、3についてはクリア出来ているとは言い難い状況です。ただ3はマストというよりは、あくまでオプション的なものなので、しっかり1と2を押さえられている2019年巨人打線は強力打線の要件を満たしていると言えると思います。

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打線の型
4.長打圧倒型
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト→○
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる→○
3.5番に高長打型を置くのもマスト→×

続いて打線の型・打順構成を見ると、2番に①タイプの坂本を置く、過去の強力打線には無かったパターンの打線の組み方を行っています。ですので、打線の型としては過去10例にはなかった新たな打線の型と言えましょう。とは言っても、2番に豊田泰光/小笠原道大/リグスといった強打者を置く形は昔からありましたが。しかし、全体で見ると、①タイプや②タイプを上位に5名配置し、スピードは然程ないという点から、長打圧倒型と捉えられます。

打順構成については、3番、4番に丸佳浩と岡本和真という①タイプの選手を配置できており、1についてはクリアできています。2については、坂本が2番に入っていることから、過去の打線に見られた器用な打者像からは少々離れますが、打率.312/40本塁打/OPS.971を記録している時点で打線の潤滑性を高めていないはずがないため、ここもクリアとみなしてよいと考えます。最後に3は、主に③タイプの大城卓三が起用されたということで、クリアできていません

以上から2020年に向けての課題としては、
1.5番に①タイプもしくは②タイプの高長打型の選手を置けるか
2.打線全体のスピード感
3.①タイプが3名抜けることへの対策

となりそうです。

まず5番に高長打型を置けるかという点は、シーズン当初1番を打っていた吉川尚輝次第では、前年1番を打つことが多かった②タイプの亀井善行を5番に回せますし、MLB実績十分の新外国人・パーラも中距離打者との触れ込みで、パーラが機能しても埋められるでしょうから、何となく算段は付きそうです。

上位打線のスピード感の薄さも少々気になるところです。決して出塁型を多く打線に多く置いているわけでもないため、坂本・丸・岡本の長打力にスピードを組み合わせていきたいところですが、現時点では主にスタメンに入る選手の中では、丸の12盗塁が最多とスピード感には欠ける印象です。ここも快足を持つ吉川尚が上位打線に入ればある程度解決しそうですので、吉川尚が2020年こそ1年稼働できるかが得点力アップの大きなカギを握りそうです。

最後に、①タイプであった阿部慎之助/ゲレーロ/ビヤヌエバの3名が、一挙に抜けるのは非常に痛いところです。強力打線への条件が①タイプ4名ということを考えると、現時点では3名ともう1名は欲しいところですから、パーラを含む新戦力の台頭が待たれるところです。

2.横浜

筒香嘉智、宮崎敏郎、ソト、ロペスのコア4を軸とした重量打線で、久々の優勝争いを展開。惜しくも2位に終わったものの、確かな成果を見せた一年でした。しかし、チームの軸であった筒香がMLBへ移籍することとなり、2020年は新たな形でのチーム作りが求められてくる一年となりそうです。

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タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須→×
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる
(高長打型最低6名)→×
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる→○

まず主力選手のタイプ別打者分類を見ると、①タイプが2名、②タイプが2名、③タイプが4名、④タイプが3名となっています。1については、①タイプがソトと筒香の2名のみということからクリアとならず2については、高長打型がコア4の4名のみということから、こちらもクリアとはなっていません3については、1番を任され15盗塁と走力も備える神里和毅が当てはまってきます。そのため、クリアしていると言えます。全体的には、横浜スタジアムを本拠地としながら、長打力がキモとなる1と2をクリア出来ていないあたり、パークファクターによる補正込みだと、平均以下の得点力となってしまうのも頷ける結果となっています。

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打線の型
4.長打圧倒型
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト→○
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる→○
3.5番に高長打型を置くのもマスト→○

続いて打線の型・打順構成を見てみると、打順自体が固定的なものではなかったため、なかなか型を当てはめるのが難しいですが、2番に宮崎のみならずソトや筒香が起用されるケースが多く、坂本を配置した前述の巨人と近しいものがあるように見えます。ただ、コア4の長打力頼みという点から考えると、長打圧倒型が最も近しいように感じます。1985年の阪神もこのような形でしたが、圧倒的な成績を収めた4人と比較すると、どうしても見劣りしてしまいますし、それ以外の選手の長打力不足も相まって平均以下の得点力となってしまいました。

打順構成については、3番にはソト、4番には筒香を起用した機会が多かったため、1についてはクリア。2番には前述の通り様々な打者が配置されていますが、宮崎・ソト・筒香とコア4のメンバーであることから、潤滑性を高めていると解釈できることからクリア3については、ロペスがメインで宮崎が起用されるケースも目立ちましたが、両者ともに②タイプということから、こちらもクリアとなります。個々の選手を見ると、長打不足が目立ちましたが、そんな中でも打順構成としては、過去の強力打線に似た悪くない構成が出来ていたと言えるのではないでしょうか。

以上より、2020年に向けての課題は
1.長打力不足
2.打線全体のスピード感不足

となるでしょう。

まず長打力不足という点は、横浜スタジアムというヒッターズパークを本拠地としながらと考えると重症でしょう。加えて貴重な①タイプの筒香がMLB移籍を果たすことは決定済みで、2020年は更に厳しい状況となることが予想されます。MLBでシーズン17本塁打の実績も持つ新外国人・オースティンの活躍や、伊藤裕季也や細川成也の台頭。また、梶谷隆幸・桑原将志といった一軍で二桁本塁打を放った経験のある選手の復活があれば、解消に向かうかもといったところでしょうか。なんにせよ、希望的観測が強くなってしまうというのが現状でしょう。

巨人と同様に、打線全体のスピード感のなさも大きな課題です。1番に座ることの多い神里は確かにスピードはありますが、そこから続くコア4はいずれも盗塁0と全くスピード感はありません。それ以外の打者もスピードを持った選手は少なく、これに加えて長打も不足しているわけですから、得点は伸びるわけはないでしょう。ただ、ここも筒香が抜けたところに、梶谷や桑原が入ってスピード感を出していければ、配球の絞りやすさも生まれて得点力は伸びる可能性すらあると思います。単純に筒香の穴を埋めるのは難易度が高いため、2020年の横浜が得点力を維持or伸ばすためには打線全体のスピード感が重要となってくるのではないでしょうか。

3.阪神

ドラフト1位ルーキー・近本光司の大活躍など、新戦力の台頭こそあったものの、打線の核となるべき糸井嘉男の長打力低下や故障離脱、福留孝介の打撃成績低下もあって、得点力としては前年を下回る538得点に終わってしまいました。チーム成績は6位から3位へとジャンプアップしましたが、得点力の面は課題として残ったままです。

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タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須→×
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる
(高長打型最低6名)→×
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる→○

まず主力選手のタイプ別打者分類を見ると、①タイプが2名、②タイプが1名、③タイプが4名、④タイプが4名となっています。1については、①タイプがマルテと中谷将大の2名のみということから、クリアとはならず2については、マルテと中谷に大山悠輔が僅か1名加わるのみで、高長打型が非常に少ない布陣となっています。3については、近本というセリーグ盗塁王にも輝いた快足の持ち主が上位打線を打ち、打線を活性化させていることから、この点はクリア出来ていると言えましょう。甲子園を本拠地としている点を差し引いても、長打不足は顕著なものがあり、新外国人選手のボーアやサンズが機能するかしないかで、2020年の得点力がどうなるかが決まってきそうです。

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打線の型
該当なし
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト→×
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる→○
3.5番に高長打型を置くのもマスト→×

続いて打線の型・打順構成を見てみると、高出塁型の選手は多いため、打線の型としてはパワー+出塁型に当てはまりそうですが、先ほど確認したように高長打型が非常に少ない構成となっているため、この型には当てはまりません。よって、2019年の阪神は打線の型に該当なしと言えそうです。

打順構成については、メインで3番と4番を務めたのが④タイプの糸井と②タイプの大山であることから、1はクリアとはなっていません2については、2番には糸原健斗や近本が多く起用されています。糸原は俊足とは言えないながらも、出塁能力の高さがあり、近本は俊足と小技という武器を持っています。ということから、クリアしていると捉えられるでしょう。3については、福留や糸原といった④タイプが5番を務めることが多かったことから、クリアできていません選手の駒不足もあってか、なかなか強力打線仕様の打順構成は上手くいっていないことが分かります。

以上より、2020年に向けての課題は
1.3番、4番に①タイプを置けるか
2.高出塁型を生かす配置が出来るか

となってくるでしょう。

まず3番、4番に①タイプを置けるかという点は、強力打線の大前提となっているため、早急に解決したい課題です。シーズン終盤に4番を務めたマルテは①タイプのため、ひとまず一枠は埋まりますが、現状ではもう一枠が埋まりません。そこで期待をかけるべきは、新外国人選手のボーアでありサンズでしょう。特にボーアはMLBレベルで通算IsoD.084/IsoP.207とハイレベルな成績を残しており、しっかり打線の核として機能すれば、自ずと得点力も伸びてくるはずです。

現時点での阪神打線の特徴として挙げられるのは、高出塁型の多さです。スタメンクラスに糸原、糸井、福留と④タイプが3名おり、加えて④タイプではないですが1番、2番には持って来いの俊足巧打タイプである近本の存在もあることから、テーブルセッタータイプは現時点で揃っていると言っても良いでしょう。ですので、現時点では得点力に乏しいですが、高長打型が入れば化ける可能性のある打線です。と言った点からも、数少ない高長打型の大山を2Bとして起用してでも高長打型を打線内にキープすべきではないでしょうか。

4.広島

リーグ4連覇を狙った2019年でしたが、丸佳浩の抜けた穴に、田中広輔、松山竜平の不振が重なり、高い優位性を持っていた得点力は大幅に低下。強みを失ったチームは、なすすべなく4位とBクラスに転落する結果となってしまいました。チームの退団が噂された選手は皆残留したものの、上積み要素は不振に終わった選手たちの復活がメインで、2020年に対して少々不安を感じずにはいられません。

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タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須→×
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる
(高長打型最低6名)→○
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる→×

まず主力選手のタイプ別打者分類を見ると、①タイプが3名、②タイプが3名、③タイプが5名、④タイプが1名となっています。1については、鈴木誠也、バティスタ、會澤翼の3名となっておりクリアならず2については、西川龍馬、菊池涼介、メヒアが当てはまり6名に達することでクリア3については、③タイプで特に該当者がいないため、クリアとはなっていません。散布図を見ると、低出塁型が多く、高長打型も平均より少し上くらいということで、③タイプのゾーンに選手が固まっています。ここから①タイプや②タイプに化ける選手が出てくれば、得点力は伸びてくるのではないでしょうか。

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打線の型
4.長打圧倒型
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト→○
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる→○
3.5番に高長打型を置くのもマスト→×

続いて打線の型・打順構成を見てみると、5番に③タイプの松山が座っている以外では、②タイプがテーブルセッターを務めるあたり2000年巨人と似たような構成となっています。ということから、2019年の広島打線の型としては、2000年巨人のような長打圧倒型と取れそうです。

打順構成については、3番にバティスタ、4番に鈴木という形が出来上がっていたことから、1についてはクリア2についても、菊池というスピードがあり、小技のきく打者が2番に座っていることから、クリアと言えます。3については、松山だけでなく②タイプの西川も5番を打つ時期はありましたが、西川が長打を量産し始めたのが1番定着後ということを鑑みると、3はクリアしていないと捉えられそうです。

以上より、2020年に向けての課題は
1.①タイプの打者の充実
2.5番に①タイプもしくは②タイプの打者を置けるか
3.③タイプから何人の打者を抜けさせられるか

となってくるでしょう。

まず①タイプの打者の充実については、2019年に基準の4名に満たなかったにも関わらず、その中の一人であるバティスタとの契約がまだ不透明な状況です。新戦力としてはピレラを獲得しましたが、早打ちで長打をウリとするタイプでもないことから、①タイプとなれるかは微妙なところで、今のところ候補は見当たりませんが、現有戦力から鈴木や會澤に次ぐ①タイプの台頭が待たれます

2については、2019年は通年を通して5番に①タイプや②タイプが座ることは少なく、とりわけNPB最強打者である鈴木の後ろには、常に松山や長野久義といった③タイプの選手が座っており、鈴木の出塁を生かせないあたりも得点力が伸び悩む要因となりました。2020年は鈴木を4番に戻すことを佐々岡監督は明言しているため、5番に座るであろう松山や長野が本来の打棒を取り戻し、①タイプや②タイプとなれれば得点力は自ずと上がってくるはずです。

3については、前述の通り③タイプのゾーン付近に多くの選手が固まっています。②タイプの選手もいることにはいますが、長打力は然程高くなく、このような形では当然ながら得点力は伸びてきません。バティスタがラインナップに入ってくるか分からない中で、松山や長野が①タイプや②タイプに復活、西川の更なる長打力アップ、バットを寝かせる新打法・野間峻祥の覚醒等の要素が得点力を伸ばすためには必要でしょう。そうすることで、3年前のようなパワー+スピード型の強力打線の復活も期待できるのではないでしょうか。

5.中日

与田剛新政権となった2019年は、同じ5位という順位ながら、借金15であった前年から借金5まで減らし、シーズン最終盤までCS争いを繰り広げるなど、可能性を感じさせたシーズンでした。ただ、ナゴヤドームを本拠地としていることもありますが、長打力不足は相変わらずで、この辺りが解消に向かえばAクラスもより現実的なものに見えてくるように思います。

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タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須→×
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる
(高長打型最低6名)→×
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる→○

まず主力選手のタイプ別打者分類を見ると、①タイプが0名、②タイプが5名、③タイプが6名、④タイプが0名となっています。1については、①タイプは0名ということでクリアならず2についても、②タイプが5名いるものの最低ラインの6名には満たず3については、大島洋平という高打率+スピードを持った選手を抱えているため、クリアとなります。また、散布図を見ると分かる通り、高出塁型がいない歪な分布となっています。これではせっかくの長打も得点に結びつきにくい状態となってしまうため、改善は必須でしょう。

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打線の型
該当なし
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト→×
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる→×
3.5番に高長打型を置くのもマスト→×

続いて打線の型・打順構成を見てみると、②タイプが3名、③タイプが5名という打線の組み合わせでは、過去の例に倣った型を見出すことは困難なため、打線の型としては該当なしとなります。

打順構成については、①タイプが一人もいないため、1についてはクリアならず2については、主に2番に入った京田陽太が17盗塁とスピードこそ見せたものの、打率.249/OPS.615とそもそも上位を打つ打者として不適格という成績ということからこちらもクリアならず3については、5番を主に務めたのが③タイプの高橋周平であることから、クリアとなっていません。そもそもの駒不足が影響して、打順構成も不適切なものとなってしまったのではと推測されます。

以上より、2020年に向けての課題は
1.①タイプの打者を打線に配置する
2.生粋のテーブルセッター・大島を適切な打順に配置する
3.高出塁型を増やす

となってくるでしょう。

1については、そもそも①タイプの選手がチームに存在すらしないというのは、大きな問題です。このような状況では、得点力は伸びるはずもないため、早急に①タイプの選手を、3番や4番に配置していきたいところです。現有戦力で可能性のあるのは、平田良介、ビシエド、福田永将となってきそうです。この辺りの選手が、出塁能力と長打力を両立できれば、得点力の改善が見込めそうです。

2については、③タイプで高打率+俊足とテーブルセッターとして高い適性を示す大島を、2019年は3番で起用することが多くなっていました。走者を返すことが要求される打順で、長打を期待できない選手を配置しては得点力が伸びてこないのは必然と言わざるを得ません。シーズン終盤には1番へと配置転換されましたが、2020年は開幕から一貫して1番もしくは2番に置き続けたいところです。

3については、散布図で見て明白なように、高出塁型が一人も打線にいない、異常事態となっています。高出塁型に近しい数値を記録した平田や福田がそこに近づくのはもちろんのこと、テーブルセッタータイプで数名いると心強いでしょう。育成枠でシエラを獲得したのみで、大きな補強は行われていないため、現有戦力からいかに高出塁型の打者を見出していくかもポイントとなってきそうです。

6.ヤクルト

2018年も非常に破壊力のある打線でしたが、2019年は村上宗隆の台頭、終盤には廣岡大志の本格化など、更に若手の突き上げがあり、リーグ2位の得点を記録するなど破壊力のある打線をキープしました。ただ、このオフは4番・バレンティンが退団する事態となっており、また新たな形の打線を形成することになりそうです。

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タイプ別打者分類
1.主要打者のうち①タイプ4名は必須→○
2.高出塁型より高長打型を集めた方が得点に繋がる
(高長打型最低6名)→○
3.一芸を持った③タイプは貴重な打線のピースとなりうる→×

まず主力選手のタイプ別打者分類を見ると、①タイプが5名、②タイプが1名、③タイプが3名、④タイプが2名となっています。1については、5名の①タイプの選手がいることからクリア2についても、①タイプの5名に加えて②タイプの西浦直亨を加えた6名が高長打型でいるためクリア3については、③タイプの選手はいずれも然したる特徴のない成績のため、クリアとはなっていません。総じてみると、①タイプの選手がスタメンクラスで5名いるのは巨人とヤクルトくらいで、得点数を見ても、強力な打線を形成出来ていると言えましょう。

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打線の型
4.長打圧倒型
打順構成
1.3番、4番に①タイプを置くのはマスト→○
2.2番には高打率+俊足+小技と器用な打者を置けると、打線の潤滑力が上がる→○
3.5番に高長打型を置くのもマスト→×

続いて打線の型・打順構成を見てみると、巨人や横浜と同様の2番に強打者に配置する形となっています。実に3チームがこの形を採用しているあたり、2番に①タイプの選手を配置する形は、現在のNPBのトレンドとなっていることが分かります。加えて、スピードのある選手は然程多くないものの、山田哲人、バレンティン、村上の長打で圧倒していく形は、長打圧倒型の打線の形と捉えられそうです。

打順構成については、山田とバレンティンの強力コンビを3番、4番に据えているため、1についてはクリア2についても、青木宣親という稀代のバットマンを配置できていることからクリア3については、5番に③タイプの雄平が起用されることが多く、長打力に欠けたことからクリアとはなっていません。もし雄平が打率.312/OPS.804の2018年レベルの成績であれば、巨人以上の破壊力を見せた打撃陣となっていたのかもしれません。

以上より、2020年に向けての課題は
1.4番・バレンティンの後釜
2.5番に①タイプもしくは②タイプの選手を配置する
3.1番の強化

となってくるでしょう。

2020年の課題というと、何と言ってもバレンティンの穴というところになるでしょう。常に4番を打ち、30本塁打100打点は計算できる存在だったため、穴埋めは容易ではありません。目立った補強も守備型のSSであるエスコバーのみですので、既に①タイプの村上や廣岡の更なる成長に期待するくらいしか、現状では穴埋めの手段はなさそうです。

2については、雄平が主に起用された5番の長打力のなさも、大きな課題です。これまではバレンティンの打棒に、5番の長打力不足が覆い隠されていた部分もあるでしょうが、2020年に関してはそうはいきません。候補として、MLBではテーブルセッタータイプながら、マイナーではまずまずの長打力を見せているエスコバーがハマってくるようだと、前年比でそこまで得点力は落ちないかもしれません。ですので、エスコバーが日本に適応出来るかどうかがカギとなってくるでしょう。

3について、2019年に主に1番を打った太田賢吾は、③タイプに該当しながら、スピードをウリにするわけでもないため、1番を打つ選手としては不適格感が否めません。その後ろには強力な選手が続いていくため、ここにスピードのある選手を配置することが出来れば、相乗効果で得点力も増してくるように思います。二軍では抜けた成績を残す塩見泰隆あたりが、1番に定着するようだと面白いかもしれません。

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