メヒアは広島打線の救世主となれるか?
二転三転したプロ野球の開幕日が6/19に設定され、本来の開幕日であった3/20から遅れること3か月。ようやく2020年シーズンがスタートすることとなりそうです。
2年ぶりのリーグ制覇を目指す広島も、その歩みを進めていくこととなりますが、その道には多くの課題が山積している状態です。
3月までの実戦で露呈した脆弱なリリーフ陣は勿論のこと、バティスタを欠いて長打力不足が懸念される打線もその課題の一つです。
會澤翼と菊池涼介の残留はあったものの、昨年からプラスαの補強はピレラのみで、そのピレラも決して長距離砲でないとなると、この課題に対して打つ手がない状態です。
そんな中、現有戦力で最もこの穴を埋められる存在となると、日本で5年目のシーズンを迎えるメヒアとなるでしょう。
ファームでは三冠王を獲得するなど実績は十分で、昨年は一軍でも7本塁打を記録しました。
しかし、この春はキャンプ期間中に二軍降格となるなど、思うような結果は残せておらず、外国人枠の絡みのあり一軍と二軍の当落線上にいるような立ち位置です。
そんなメヒアが、果たして広島の課題である長打力不足を埋められる存在と成り得るのかについて、以下にて様々な角度から検証していきます。
1.ファーム成績から
まず2017年に支配下登録されて以降、圧倒的な打撃成績を収め続けるファームの成績から、メヒアが一軍に適応できるのかを検証していきます。
その検証方法としては、過去に二軍で圧倒的な打撃成績を収めた選手たちが、その後どのような成績推移を描いたのかを明らかにし、一軍に適応できる選手の特徴を洗い出したところで、メヒアの成績の特徴を比較するという手法で行います。
まず圧倒的な打撃成績を収めた選手についてですが、規定打席到達+簡易OPS+*150以上とします。
そしてそれに該当した選手が以下の38例となります。
※OPS+‥リーグ平均OPSを100とし、そこからの数値の上下で平均からのOPS傑出を測るもの。本来はパークファクターも考慮するが、今回は考慮せずに算出したので、簡易OPS+と記している。
これらの選手を以下の2つの観点から、その後の成績を探っていきます。
①2年連続簡易OPS+150超え選手のその後
②メヒアと似たアプローチの選手のその後
①2年連続簡易OPS+150超え選手のその後
2017年~2018年のメヒアがまさにこれに当てはまりますが、同様に2年連続で簡易OPS+が150を超える打者は、2005年~2006年竹原直隆、2014年~2015年猪本健太郎、2014年~2015年山川穂高の3名が当てはまります。
その後3年の一軍成績をwRC+*とwRAA*から追ってみると、竹原は2007年は平均以上の打撃成績を残していますがその後は尻すぼみに終わっています。
猪本はそもそも出場機会を得られず、故障もあって2017年シーズンをもって引退することとなりました。
山川は2016年以降徐々に出場機会を増やしながら圧倒的な打力を発揮し、2018年にはMVPを獲得するまでに成長しました。
※wRC+‥打撃での得点貢献を平均100として比較したもの。ここでは簡易OPS+をより細分化して評価した指標と考えてもらえればよい。
wRAA‥平均的な打者と比べてどれだけ得点を増やしたかを示す指標。
ここから一定の法則は読み取れませんが、少なくとも二軍レベルのボールを確実に捕まえられるようになった後は、すぐに一軍で一定の打席数を積ませる必要があるのかもしれません。
2年連続簡易OPS+150以上の選手以外でも飛躍を遂げた選手は、簡易OPS+150以上を記録してから3年以内、打席数では450打席以内の経験で規定到達を果たし、一定の打撃成績を残しています。
ですので、簡易OPS+150以上を記録してからは、すぐに一軍でも一定の結果を残したいところです。
②メヒアと似たアプローチの選手のその後
続いてアプローチ面から、メヒアと似た選手が一軍ではどのような成績を残したのかを確認していきます。
簡易OPS+150以上超えの選手を、横軸にK%(三振率)、縦軸にBB%(四球率)を取り、2005年~2019年の二軍平均の部分に線を区切って散布図に落とし込んでみました。(2019年メヒアは規定未達ですが、参考で載せています)
多くの選手が属するK%が低くBB%が高いエリアは、一軍でも好成績を残した選手が多くおり、一つの目安となりそうな部分です。
メヒアはこのエリアにいずれの年も属していないため、アプローチ的にはあまり好ましくない形になっています。
しかし、岡田貴弘(T-岡田)、中田翔、村上宗隆といったスラッガータイプの打者はK%が高いエリアに属していることから、年々K%が増加しながらも長打力を増しているメヒアにとっては、ここに混ざれるどうかといったところでしょう。
この3者は、T-岡田が翌年に本塁打王を獲得、中田が2年後に4番に定着、村上が翌年に36本塁打を記録していることから、簡易OPS+150以上を記録して2年ほどが勝負と言えると思います。
アプローチは違えど、同じスラッガータイプの山川も2年後には日本代表に選ばれるレベルに成長していることから、その傾向は更に強いと言えましょう。
以上より、メヒアは規定到達して簡易OPS+150以上を記録して既に2年が経過していることから、スラッガータイプとして一軍で活躍するには、今季もしくは打席数的には既に昨年199打席経験していることから残り250打席ほどがリミットと言えそうです。
ですので、今季結果が残せるかが、メヒアが今後NPBで生き残っていけるかの瀬戸際となるでしょう。
2.一軍成績から
続いて一軍成績からも、今後長打力を発揮できる可能性があるのか検証していきます。
昨年199打席に立ったメヒアの打撃成績から見えてくる特徴としては、以下の二点となります。
①打球に角度が付かない
②逆方向へのフライが多い
以前詳細は下記noteに記したのですが、全体的に強い打球を打てているにも関わらず、打球割合ではゴロの方が多いといった打球角度の付かなさや、フライの半分が逆方向への打球で、強い打球が打てず打撃成績が伸び悩む形となっていました。
このメヒアと同じような打撃の特徴を持った選手は、どのような成績推移を描いたのかを確認することで、ファーム成績から確認したようにメヒアが今後活躍できるのかの指針としたいと思います。
2014年~2018年のデータから、150打席以上に立ち、全体のHard%が40%以上、GB/FB=1.0以上、逆方向へのフライ割合が45%以上、フライのHard%が全体のHard%以下という条件に絞り、同じような特徴を持つ打者を抜粋したのが上記の7例です。
近藤健介、宮崎敏郎、栗山巧、秋山翔吾、西川遥輝とアベレージタイプの打者が並んでいるあたり、どうもメヒアのタイプとは適合しないことが考えられます。
しかし、そんな中でも宮崎と秋山は、ここから本塁打数を10本以上伸ばすことに成功しています。その要因とは何だったのでしょうか?
同じ右打者で2018年には28本塁打を放った宮崎は、逆方向へのフライ割合が43.3%と大きく変化なく、フライのHard%を49.7%まで増加させており、本塁打を増加させています。
ですので、強いフライの打球の割合さえ増やせれば、当然ながら本塁打数も伸びてくるはずです。
打席の左右は違えど、秋山は2017年から3年連続で20本塁打以上を記録しています。
その要因としては、フライのHard%に大きな変化はないものの、GB/FBが2016年の1.44から、2017年以降は1.09→1.18→1.10と推移していることから、フライ性の打球を増やしたことが挙げられます。
ですので、単純にフライを増やすことも本塁打数増に繋がってくると言えそうです。
以上より、単純にフライ性の打球を増やすことと、その中でも本塁打に繋がるような強いフライを打ち上げることが、一軍レベルでは重要となってきそうです。
3.フォームから
最後に数値の面からは距離を置き、打撃フォームを簡単に分析することで、一軍でも力を発揮できるだけのものがあるのかを確認していきます。
まず2018年と2019年の打撃フォームを簡単に比較してみると、最初の構えの位置からバットがより身体に近づいた形になっているのが一目瞭然で分かると思います。
これにより構え遅れることが減り、より一軍レベルのボールにも対応することが可能となりました。
しかし、昨年の打席を見るとアウトコースのストレートや緩い変化球は捌けるものの、インコースの速いストレートには苦労するなど、ドアスイングの傾向は拭いきれず、まだまだ改善の余地はありそうだと言えそうです。
そんな中この開幕延期期間の間に、グリップの位置を下げ、バットを捕手方向に寝かせるフォームに挑戦しているようです。
これによりボールの軌道にバットを入れやすくなり、ミートできる確率は上がりそうですが、一方で構え遅れやヘッドの加速距離が短くなり強い打球が飛ばせなくなる懸念もあります。
丸佳浩のように早めにグリップの位置を戻して構え遅れを防ぎ、ソトのように若干捕手寄りにバットを傾けてスイングする形が取れれば、率も上がりながら長打も増え、この打撃フォームが上手くフィットするかもしれません。
練習では快打を飛ばしているようなので、あとは実戦でどれだけ対応できるかでしょう。
4.まとめ
・二軍成績から
過去メヒアと同様に簡易OPS+150以上を記録した打者で一軍で活躍した打者は、そこから3年もしくは450打席以内に一軍で結果を残しているため、今季450打席に到達する見込みのあるメヒアは、正念場のシーズンとなる。
・一軍成績から
全体的に強い打球は打てているものの、フライ性の打球が少なくその中でも逆方向へ弱いフライが多いため、本塁打を増やすにはフライ性の打球や強いフライを増やすことが必要。
・フォームから
年々進化し、昨年はバットを身体に近づけたシンプルな形になったが、まだドアスイングの傾向は否めず。
今季挑戦中のグリップの位置を下げてヘッドを捕手側に寝かせるフォームで、構え遅れせずミート力が上がれば、覚醒の目もある
以上が本稿のまとめとなります。
タイトルの救世主となれるか?という点についてのアンサーは、既に一軍でもそのHard%の高さから持ち前のパワーの片鱗を見せており、フォーム改造がハマればその可能性は十分にあると言えそうです。
NPBでスラッガーとして活躍するには、今季が正念場と言えそうですが、盟友でライバルでもあったバティスタがまさかの契約解除となり生まれたこのチャンスをしっかり掴み切ってもらいたいところです。
データ参照:1.02-Essence of Baseball(https://1point02.jp/op/index.aspx)
NPB.jp 日本野球機構(http://npb.jp/)