広島ドラフト指名選手分析~Part3~
第三弾となる今回は、4位以降で指名された4選手プラス育成指名選手の計5名について分析していきます。
4位以降の選手は動画で確認できることが限られてくるため、実力面の分析は簡素なものにさせていただきます。
4位:中神拓都 内野手 市岐阜商業
4位指名は、高校通算46本塁打を放ち、MAX147㎞のストレートを武器に投手もこなすという中神拓都を内野手として指名しました。
50m走は5秒9で遠投も115mと身体能力が非常に高く、広島らしい指名と言えましょう。
・選手としての特徴
打撃面では、高校通算46本塁打を放っていますが、大きな打者のタイプとして括ると、どちらかと言うと長距離打者というよりは中距離打者という括りに分類されるように見えます。
上記記事にあるボールの内側を叩くことを強く意識しているという点は、非常に素晴らしい意識で、手首が返って引っ掛けてしまうことを抑止できますし、広角に飛ばすことも可能になります。
打撃に関してはこのような意識の高さがあることからも、結構期待できそうです。
守備面は動きを見れるような動画が見当たらなかったため、割愛させて頂きます。
ただカタログスペックから見ると、十分プロでも遊撃手を張れるようなものは持っているように見えます。
走塁面では、175㎝85㎏と体格的にはあまり足を生かすタイプなように見えませんが、50m走のタイムを見ると5秒9と、プロでも足をウリにしていけそうなタイムを叩き出しています。
岐阜大会でも何個か盗塁を決めているようですし、走塁面での意識が低いということは無さそうなので、鍛え方次第では武器にできるのではないでしょうか。
・編成
高校時代の本職は遊撃手で、指名も内野手でということですが、小園や羽月といった二遊間プロスペクトを獲得したことから、プロでは遊撃手専任というよりは、二塁手や三塁手など様々なポジションで経験を積むことになるのではないでしょうか。
25歳以下の選手で右打ちの内野手は美間がトレードで抜けたことにより青木陸のみでしたが、その青木陸も戦力外通告を受けたことから、右打ちの内野手の補充が急務だったということでしょう。
かつ右の強打者枠というところで、中神の名前が挙がってきたのでしょう。
・総評
まとめると、打者のタイプとしては中距離打者といったところで、それプラス強肩と俊足を生かしてプロでは、遊撃手のみならず二塁手もしくは三塁手へと挑戦することになるでしょう。
将来像としては、二桁本塁打と二桁盗塁を期待できるような走攻守三拍子揃った選手で、遊撃や二塁や三塁も守れるというユーティリティー性も持った選手(西武の外崎に近い選手)というところでしょうか。
5位:田中法彦 投手 菰野高
5位指名では、150㎞越えのストレートを投じることで名高かった田中法彦を指名しました。
身長が173㎝と、高身長の選手を獲得することの多かったこれまでの姿勢から考えると、少し意外な指名となりました。
・投球
上記の通り最速150㎞オーバーのストレートが武器ですが、いわゆるノビのあるタイプで、ただMAXが速いだけでなくアベレージで147㎞を計測するなど、平均的に力強いストレートが放れるのが何よりの魅力です。
変化球のレパートリーとしては、スライダー・カーブ・チェンジアップを持っており、メインで投げ込むボールとしてはスライダーです。
スライダーは変化量が大きく、高校レベルだと空振りが取れる代物ですが、プロレベルだと簡単に見送られそうですので、更なる質の向上が求められます。
投球以外の面でも、高校通算30本塁打と打撃も良く、投手として上手く行かない場合は野手転向というのも一つの選択肢かもしれません。
・編成
173㎝という身長は、現広島投手陣の中でも最も低い身長にあたり、身体的スペックを重視する広島においては、かなり珍しい指名です。
ただ、2年生の時点で最速150㎞を記録するなど、それを補って余りあるだけの能力を持っているとの判断から指名に結びついたのではないでしょうか。
下位指名ですが、中々のポテンシャルは感じるので、とりあえずは先発での育成となるでしょう。
・総評
下位指名の選手ですが、既にアベレージで140㎞後半を記録するなど馬力は十分でかなり期待できる選手です。
後はプロレベルで武器になる変化球を取得できれば、一軍での出番もすぐに訪れるでしょう。
6位:正隨優弥 外野手 亜細亜大
6位指名では、地元広島県かつ大阪桐蔭出身で強打の外野手の正隨優弥が指名されました。
右打ちの強打者で東都大学リーグでは通算9本塁打を放った実績を持っています。
・選手としての特徴
一番の特徴は打撃ですが、スイングは力強く長打力もある点は非常に魅力的です。
3年時までは率もそれなりに残せていたのですが、4年時に不振に陥り、春は打率.053で秋も.208と低打率で終わってしまったのは気がかりです。
打撃フォームは、グリップを低いところから引き上げながら大きく左肩をベース板方向に入れていく、という動きの大きいフォームですので、プロ入り後は手直しが必要でしょう。
走塁については、2年時までで10盗塁を記録していましたが、3年時以降は打撃に全振りしてしまったからか0盗塁に終わってしまったのは少々残念です。
ただそれだけの走力はあるということなので、プロ入り後は走塁面にも磨きをかけることを忘れないでほしいですね。
守備に関してはサンプルがないので何とも言えません。
・編成
正直右の外野手は、鈴木誠也を筆頭に下水流やバティスタや高橋大樹や永井など数は足りていますが、それでも獲得されたということは、潜在能力に惚れ込んでかつ、現有戦力のケツを叩いて実力の底上げ要員としての指名という可能性が推測されます。
また、高校野球界を席巻し、プロで活躍する選手も多く輩出する大阪桐蔭出身ということで、そこのルート開拓という意味合いを込めての指名でもあるでしょう。
ですから、即戦力として期待するというよりは、潜在能力の開花と周囲の選手への相乗効果を期待しつつも、超名門校である大阪桐蔭とのパイプ作りという面からの指名であると推測されます。
・総評
戦力としての期待値は下水流くらいというように感じますが、大阪桐蔭ルートを開拓できたという意味では、実力以上の価値を産む可能性があるとも言えるのではないでしょうか。
ただ選手としても、大阪桐蔭・亜細亜大という名門で揉まれてきた選手ですので、メンタリティー的な部分で秀でている部分もあるでしょうから、強い広島の脇を支える選手という意味ではいい選手なように思います。
7位:羽月隆太郎 内野手 神村学園
支配下登録枠の最後の指名は、足と守備力が持ち味の羽月隆太郎が指名されました。
昨年の夏の甲子園で活躍したことから、微かながら私の記憶にも残っている選手です。
・選手としての特徴
まず一番の特徴はその快足で、50m走は5秒7というタイムを誇り、一塁到達タイムも3秒9とプロでも上位レベルの足を持っています。
強肩を生かした遊撃守備も守備範囲も広いので、守備走塁面はかなり期待できそうです。
また、非常に小柄な選手で、打撃は非力な選手なのかと思いきや、癖のない打撃フォームでかつ、金属バットとはいえスタンドインできるくらいのパワーも持ち合わせており、守備走塁は勿論のこと打撃も全く期待できないことはなさそうです。
・編成
25歳以下で二遊間を守れる選手が、西川と桒原と曽根のみで、西川は三塁をメインとして一塁にも挑戦してますし、桒原が外野に本格的にコンバートされるというところで、二遊間のプロスペクト拡充のための指名でしょう。
とりあえずの期待値としては4年後~5年後に現在の曽根くらいの立ち位置を確立することでしょうか。
・総評
守備走塁のレベルは高いため、2軍でも小園や中神らとともに1年目からそれなりに出番があるのかもしれません。
将来像としては、打撃の良くなった上本崇司というところでしょうか。
打撃にも魅力を感じる部分はあるので、体格と身体能力に恵まれないながらも.300オーバーの打率を残した西川の打撃を参考に、守備走塁のみならず打撃も伸ばしていってほしいですね。
育成1位:大盛穂 外野手 静岡産業大
育成選手として、右投げ左打ちの俊足巧打の外野手である大盛穂を指名しました。
全く聞いたことのない選手でしたが、大学時代は1番打者を務め、首位打者やベストナインを獲得するなど着実な実績を挙げています。
・選手としての特徴
映像が上記リンクの動画しかないため、中々どのような選手なのか把握するのが難しいですが、大学時代の成績から見るにまさに俊足巧打というタイプの選手のように見えます。
動画を見る限りだと、打撃に関しては筋はそこまで悪くないですが、体もまだまだ細く全体的に力強さが足りないかなという印象です。
育成指名ということで時間もあまりありませんから、1年目からしっかり体に肉付けをしつつ、技術レベルも高めていく必要がありそうです。
守備走塁に関しては何とも言えませんが、50m走6秒0の俊足と大学4年時のリーグ戦で計11盗塁を決めていることから、足はこの選手のウリであると言えましょう。
・編成
天谷の引退や赤松も年齢を重ねており、俊足巧打系の外野手が不足していることから指名に至ったのではないでしょうか。
またこの枠は、内野手からの転向組で賄いやすく、市場にも多く見られる枠であることから、あまり支配下枠を割きたくないとの意図から指名に至ったのではないかと推測します。
・総評
気になるのは広島がドラフトで獲得した育成出身の野手で、一軍出場経験のある選手が中谷翼のみであるという点です。
どの球団もそうでしょうが、こと広島においては育成選手のチャンスは少ないため、そこをきっちりモノにできるかどうかがポイントでしょう。
期待値としては、外野の守備走塁要員として、昨年の野間のようなポジションに収まることでしょうか。