佐々岡コーチの運用手腕
昨年まで3連覇を成し遂げたチームの中でも、投手運用については常に疑問の声が上がっており、2015年から4年間一軍投手コーチを務めた畝龍実コーチの運用手腕は決して良いとは言えないものでした。
そんな中、今季からは昨年まで二軍投手コーチを務めていた佐々岡真司が、新たに一軍投手コーチへ就任し、運用面を担当することとなりました。
二軍投手コーチ時代の佐々岡は、プロ入り時は原石状態であった薮田和樹を覚醒に導くなど、制球に難のあるパワーピッチャーを何人も一軍へ送り出し、その育成手腕は広島の獲得投手の方針とも一致し、一定の成果を収めました。
そして、満を持しての一軍投手コーチ就任となりましたが、今季ここまでの僅か10数試合ではありますが、既にその運用手腕には疑問符を付けざるを得ないような動きが何度も見られています。
その運用について振り返るとともに、投手コーチについて必要な資質や重要な視点について考えていこうと思います。
1.ここまでの投手運用の疑問点
①島内颯太郎の唐突な勝ちパターン抜擢
開幕4戦目の対中日戦にて、4-3と1点リードを奪っている7回にマウンドに上がったのが島内でした。
確かにOP戦全登板無失点と結果を残していたものの、初登板となった開幕2戦目の対巨人戦では制球を乱し3四球を与え1失点と、結果を残すことが出来ませんでした。
OP戦とは雰囲気や打者の本気度もまるで異なる中で、かつプロ入り初登板で上手く滑り出すことのできなかったルーキー投手を、勝ちパターンの一角のような扱いで接戦リード時に投入するのはいかがなものなのでしょうか。
余程の投手でない限りは、勝敗に関わらない場面から起用していき、徐々に登板場面の強度を上げていくべきではないかと思いますが…
案の定、2アウトまではこぎ着けるも得点圏に走者を残して降板し、後を受けたフランスアの炎上もあり、島内にとっては後味の悪い登板となってしまいました。
②レグナルトの立ち位置
OP戦で投手陣の中で最もサプライズな存在となったのが、このK・レグナルトでした。
安定して140㎞終盤を記録するフォーシームとスライダーやハンマーカーブを武器とし、5イニングで11奪三振を記録するなど、シーズンでもフランスアとの左のパワーアームコンビとして、チームの弱点であるリリーフ戦力の底上げを期待された存在でした。
しかし、シーズンに入ると、OP戦ほどの支配力を見せられていないという面もありますが、起用法はAチームとBチームどっちつかずのような起用が続き、イマイチ起用法が定まっていないような状態です。
OP戦では、勝ちパターンを想定したような起用法がなされていただけに、尚更謎が深まりますが…
中崎やフランスアの疲労度が心配される中、レグナルトの序列をもっと上げても良いのではないでしょうか。
③アドゥワ誠のリリーフ起用
昨年は高卒二年目ながら、リリーフとして53試合に登板し、チームのリーグ優勝に大きく貢献したアドゥワ誠ですが、今季は二軍にて先発調整を行っていました。
二軍では完投勝利も記録するなど、先発として確かな実績を残し、苦境に立つ投手陣の光となるべく一軍へと昇格してきたのはまだ理解できるのですが、その起用法がリリーフであることは疑念を抱かざるを得ません。
元々先発向きの投手であり、今季からは本格的に先発投手としての育成が行われようとしている中、一軍ではリリーフ起用というミスマッチ具合は、育成方針がブレブレであるとあらゆる方向に示しているようなものでしょう。
目先の結果に囚われ過ぎて、長期的な視点で考えられなくなってきている証の起用法ではないでしょうか。
2.佐々岡コーチの特徴
まだ開幕して僅か10数試合ですが、ここまでの印象だと長期的な視点に薄くその場しのぎ感が拭えず、レグナルトの立ち位置からしてもどのような基準で投手を評価しているかも正直謎です。
現時点では一軍投手コーチとしての能力に関しては疑問符の拭えない中ではありますが、そもそも投手コーチ全体に言える特徴としては、現役時の自分の実体験を基に考えることが往々にしてあるように感じます。
暗黒時代において先発・中継ぎ・抑えのフルポジションの経験があり、シーズン中の配置転換を何度も経験したにも関わらず大きな故障の無かった佐々岡は、この体験を基にすることになるでしょう。
それぞれの役割の難しさは心得ているはずですが、自身が大きな故障歴なく酷使にも耐え抜いているため、そこが基準となってしまっている可能性は十分にあります。
佐々岡と同じく100勝100Sを達成し、起用法も様々ながら40歳過ぎまで現役を続けた大野豊も、一軍投手コーチとして運用の手腕に長けていたとは言い難く、酷使の中で生き残った鉄人のような投手だった人物は運用には優れていないのかもしれません。
そもそも二軍投手コーチと一軍投手コーチでは求められるものは全くの別物であり、二軍では育成、一軍では運用を求められてきます。
ですから、二軍投手コーチとして優秀だとしても、一軍投手コーチとしては優秀とは限らないことは、肝に銘じて置くべきではないでしょうか。