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春先の中崎翔太はやっぱり不安?
2015年以降広島のクローザーに君臨する中崎翔太ですが、ファンの間でよく言われるのは「春先の中崎は不安である」ということです。
なぜそのようなことが言われるかというと、2014年に血行障害の手術を行って以降、気温の上がらない春先はどうしてもボールの走りが悪くなり、イマイチ腰を据えてその投球を見れないといったところにその理由があります。
ただ、実際のところ、印象だけが先行しており、春先の成績はどうなのかについてはあまりエビデンスとして持ち込まれていないように思いますので、血行障害の手術後、春先の中崎の投球はそれ以外と比較し、どのような変化があるのかについて様々な数値を用いながら分析していきたいと思います。
まず、2015年~2018年の3/4月の成績とシーズントータルの成績を比較したものが表①となります。
単純に防御率の面から見ても、4シーズンのトータルが1.99に対し、3~4月の方が3.00と1点近く上昇していることから、あまり得意とはしていないことが分かります。
また、WHIPやP/IPを見ても、3/4月は4シーズントータルに比べて大幅に悪化しており、防御率3.00との数字が示している通り、失点こそ然程多くないものの、走者は出しつつ1イニングを抑えるのに労力を使いながらも、何とか及第点の成績は残していることが分かります。
イメージ通り、あまり春先を得意としていないことが分かったところで、その要因については、春先はまだ気温が上がってこず血行障害の症状が出やすい環境下にあることから、球の走りが悪くなっているという点が挙げられているように思います。
では、実際に球速の変遷を見ると、どのようになっているのかについてまとめたものが表②となります。
春先は、どの投手にもそのような傾向は当然あるとは思いますが、中崎もやはりシーズントータルの平均球速と比べて、遅くなっていることが分かります。
2016年~2017年はその傾向が顕著で、最大で3㎞ほど平均で球速差が出ている球種も散見されます*。
※2017年は調整遅れで無理矢理開幕に間に合わせた+途中で故障離脱したためあまり参考にならないデータですが
基本的には、どの球種も春先の方が球速は出ていませんが、2018年に関してはスライダーが、シーズントータルでは132.2㎞だったのが3~4月で132.7㎞とシーズン以上にスピードが出ています。
そもそもですが、中崎は2017年に腰を痛めて戦線離脱してから、以前からはスタイルを変えた投球を披露しており、スライダーを高速化させ*、かつそのスライダーへの依存度を高めるスタイルへと転換しています。
※表②の2016シーズンのSLvと2017シーズンのSLv参照
その傾向が2018年も続いており、球速の出づらい春先においても、球速をキープできています。
そのためか断定はできませんが、15試合に登板しながらも10Sを挙げ、GB%は60.5%という高い割合*を記録し、長打を食らうリスクを減らすことに成功しています。
※2018シーズントータルは51%
以上から、球速という観点から見ると、やはり球の走りは悪いとは言えますが、近年の投球スタイルの変化により、スライダーを軸に春先を乗り切る術も覚え始めているといったことが言えるのではないでしょうか。
ですから、中崎自身も恐らくこの時期の自分のボールは走らないと自覚し、様々に取り組んでいるのでしょう。
ここからは話題が一変しまして、春先とはまた季節が変わりますが、個人的に気になる点が、中崎のスライダーの球速低下です。
2018年の終盤戦に入り、スライダーの球速の顕著な低下が見られ始め、日本シリーズでは、もはやスライダーというよりもスラーブの軌道を描くボールとなっていました。
9/10月の球速を一覧にまとめたものが表③ですが、いずれの球速もシーズントータルより遅いですが、スライダーは中でも低下の幅が大きく、リリーフ失敗も目立ち始めたレギュラーシーズンの9/10月で129.2㎞まで低下しています。
その後、休養が功を奏したのか、CSファイナルでは本来の球速まで戻っていますが、日本シリーズでは127.5㎞とシーズントータルから見て5㎞近く低下しています。
日本シリーズでの柳田にサヨナラホームランを打たれたボールはその典型なのですが、ボールの軌道が膨らみの大きな軌道を描いており、一発浴びやすいような非常に危険度の高いボールとなってしまっています。
シーズン終盤の比較的重要度の低い試合であればお試しなのかとも思えますが、非常に重要度の高い試合でこのようなボールを放るということは意図的ではなく自然とそうなってしまっていたというのが正確な所でしょう。
スライダーの投球割合はストレートのそれを上回るほどの依存度を見せており、かつストレート系のボールの威力も低下している*ことから、フォークやチェンジアップなどの落ちる系のボールの取得など、また何かスタイルチェンジを見せなければ、このままだと2019年は中崎にとって苦しいシーズンとなってしまうかもしれません。
※PitchValueの観点から見ると、2017年→2018年でストレートが5.3→0.6、ツーシームが5.7→0.9へと低下