高橋大樹はレギュラーの座を掴めるか?
2020年ここまでの広島野手陣の中でも、際立つ活躍を見せているのが2012年にドラフト1位で指名された高橋大樹ではないでしょうか。
2月のキャンプ時から、成長した打撃力でアピールを続け、ここまでの対外試合では鈴木誠也の6本塁打に次ぐ4本塁打を既に放つなど、レギュラー不在のLFにおいては最もレギュラーに近い打撃成績を収めていることは誰の目にも疑いようがありません。
そんな覚醒の時を迎えつつある高橋大樹について、ここまで残してきた成績や打撃フォームから、レギュラーに値するだけのものを発揮できるのかについて、検証していこうと思います。
1.2019年までの成績から特徴を探る
まずは2019年までの成績を確認していきながら、その特徴を探っていきます。
Ⅰ二軍成績から
まず過去3年の二軍成績を確認してみると、盗塁数から決してスピードをウリにする選手ではないですが、打低のウエスタンで2018年には二桁本塁打を記録するなど、リーグ平均と比べてどれだけ高いかを示すOPS+は常に平均を超え、昨年は少ない打数ながら148という非常に高い数値を記録しています。
ここ3年は毎年OPS、OPS+ともに向上させ続け、既に一軍で活躍する準備は整っていると言えましょう。
続いて外野守備についてですが、この3年間のポジション別守備得点を見て見ると、CF守備得点は年度によって波がありますが、両翼の守備得点は常にプラスを記録していることから、二軍レベルではありますが、両翼は平均以上のレベルで十分に守れると判断できると思います。
Ⅱ一軍成績から
直近3年(2017年は一軍出場なし)の一軍成績も同時に確認していきます。
打席数が少ないため、サンプル不足感は否めませんが、wRC+は平均以上の値をマークしており、一軍でもその打撃は通用していることが窺い知れます。
打球傾向やPlate Disciplineデータも併せて見ておくと、打球傾向としてはフライボールヒッターの傾向を示しており、空振りは多いながらも積極的にスイングを仕掛ける荒っぽいアプローチが特徴的です。
松田宣浩、大田泰示、ロペスらがこのようなアプローチを示していることから、長距離砲仕様のアプローチとなっていると言えましょう。
また昨年放ったプロ入り初本塁打は、今永昇太の148㎞のストレートを捉えるなど、ストレートに強さを見せており、ストレートに強さを見せる打者の少ない広島にとっては、貴重な存在です。
こちらもサンプル不足ではありますが、一応守備成績も確認しておくと、少ないイニングではありながらUZRは基本的にプラスを記録しており、二軍で発揮していた守備力を一軍でも発揮できていると言えそうです。
フェンス際の打球を果敢にキャッチするなど、球際に強さを見せており、ウリになるほどの高い守備力ではありませんが、水準以上に守れる選手であるとは認識できるかと思います。
以上より、二軍成績から既に一軍で活躍する準備は整っており、一軍でも水準以上の打撃成績を記録していることが分かるかと思います。
打者のタイプとしてはフライの多いタイプで、ストレートへの強さや、空振りを恐れず積極的にスイングしていく長距離砲のようなアプローチが特徴的な打者です。
守備面では二軍、一軍ともに水準以上の守備成績を示していることから、破綻はないと見てよさそうです。
2.2020年ここまでの成績から見る覚醒具合
そんな高橋ですが、ここまでの対外試合では上記のように既に4本塁打を放つなど、好調をキープしています。
その要因は何なのかを以下にて分析していきます。
まずここまでの対外試合の打撃成績を確認してみると、48打席に立ちOPS1.036と申し分のない活躍を見せています。
またK%は10.2%と、前年の一軍成績から大幅に三振を減らし、一方でBB%は12.2%と逆に向上しているあたりから、打撃アプローチにも進化が見て取れます。
打球傾向やPlate Disciplineデータに変化はないか確認してみると、フライボールヒッターで、かつ積極的にスイングを仕掛けるアプローチに特に変化はないため、上記のようにK%とBB%が良化しているのは、打つべきボールの見極めとより早いカウントで勝負できているためと言えそうです。
加えて、長距離砲仕様のアプローチが継続しており、その結果として4本塁打と長打を連発していることから、一軍レベルの投球に慣れてきてその実力を十二分に発揮できるようになってきたのではないでしょうか。
4本塁打を放った映像を見てみると、ロドリゲスの152㎞をナゴヤドームのスタンドに放り込むなどストレートへの強さを見せながら、中田賢一の緩い変化球はグッと溜めてスタンドに放り込むなど、緩急には強そうな印象です。また、真ん中から外寄りやインローのボールを捉えているあたり、ボールと距離が取れるゾーンに強さを見せるタイプの打者と言えそうです。
以上より、2019年以前からデータ的には何かが大きく変わったわけでもなく、一軍レベルのボールを多く見ることで自然と適応してきたと考えられます。
ですので、打席数さえ与えれば自然と一定以上の結果は残してくれるのではないでしょうか?
ただここまでの起用を見ると、OP戦以降の21試合でスタメンは4試合とスタメンの機会が少なく、控えが前提のような起用となっており、首脳陣の期待は手薄な右の代打として、ここぞという時に使いたいという意図があるのかもしれません。
3.打撃フォーム変遷
最後に高校時代からの打撃フォーム変遷から、現状とその成長具合を確認していきます。
2012年が高校時代のフォームになりますが、足を上げた際に大きく左肩を内側に入れるフォームで、大きく反動を付けてボールを飛ばすフォームでした。
このフォームだと変化球や外の見極めに苦労するケースが多く、プロで活躍するには要修正のものでした。
プロ入り後、2014年に一軍初出場を果たしたフォームは、さすがに高校時代のものからは修正されており、左肩の入りが抑えられたフォームとなっています。
その他の変化点としては、高校時代以上に大きく足を上げており、やはり体を大きく使ってボールを飛ばそうという意識が窺えます。
その後雌伏の時を経て、久々に一軍出場を果たした2018年には、また一段とフォームが変化しており、グリップの位置が非常に高い位置にあり、足上げも小さいものになっています。
プロレベルの投手に対応していく上で、反動を付けて飛ばす一か八かのような形ではなく、よりコンパクトに様々なボールに柔軟に対応していく形へと志向が変わったのでしょう。
2014年は二軍で11本塁打を放ちながら、打率は.213に終わりましたが、この2018年はほぼ同数の10本塁打を放ち、打率も.272と大きく上昇していることから、その様子がよく分かるかと思います。
プロ入り初本塁打を放った2019年には、前年と比べて最初から多少グリップの位置を下げ、そこからトップに入るまでは一度グリップを落としてまた上げるという、軽いヒッチを入れながらのフォームへとマイナーチェンジを行っています。
2020年はよりグリップを下げ、耳の横あたりに置いたところから、スムーズにトップまでバットを入れてスイングを行う、非常にシンプルな形となっています。
より予備動作が削られて進化したフォームになっていると言えるのではないでしょうか。
以上のように、当初の大きく体を使って反動で飛ばそうとするフォームから、そこまで反動を使わなくともボールを飛ばせることに気付いたのか、予備動作を省いたシンプルなフォームに変更したことで、一軍レベルのボールへと対応可能な形へと進化していったことが分かります。
4.まとめ
・2019年までの成績
既に二軍レベルは卒業し、一軍レベルでも平均以上の打力を発揮しつつある。
空振りを恐れず積極的にスイングを仕掛け、フライボールヒッターであることから長打を連発できる資質はありそう。
守備も両翼は毎年平均以上の守備成績を残しており、守備難の心配もない。
・2020年ここまでの成績
より一軍レベルのボールに対応し、長打が増えながら三振が減り四球が増えるという好傾向を見せている。
150km超えのストレートを苦にせず、緩いボールも待って捉えられる緩急にも強い形となっている。
・打撃フォーム変遷
高校時代からプロ入り当初にかけては反動を付けて飛ばすフォームだったが、徐々に予備動作を削ってシンプルなフォームへと変化。
これによって一軍のハイレベルなボールへも対応可能に。
時間こそかかってしまいましたが、徐々にプロ仕様のフォームを身に付け、それプラス一軍での経験を増やしつつあることで、一軍で活躍するだけの土壌はすでに出来上がりつつあると言えます。
これだけ活躍しても中々出場機会は増えませんが、腐らず頑張ってほしいですし、首脳陣もそれに応えた起用を行ってくれることを願います。
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